漫才【タバコ】

漫才【タバコ買いに行け】

「どーもー、よろしくお願いします」


「こないださ、女にさ、ちょー、お前、タバコこうてきてくれっていうたんよ」


「いきなりなんや、お前。女ってお前の女かいな」


「当たり前や。俺の女やから、“女”なんて言い方できるんや」


「常識あるんですよ、彼(相方を指差す)、こう見えて」


「俺の女と先輩の嫁以外は、女性って言うとるわ」


「先輩の嫁はやめとけ。一番あかんから。女言うたら。
ほんで、なんなんや」


「タバコ、お前こうてこいやって言うたんよ。そしたら、俺の女、タバコこうてきたんはええけどさ。勝手にプレイと勘違いして、ハダカで自分で首輪つけて、そのまんまタバコこうてきたんや」

「ヤバすぎるやろ、そいつ」

「ヤバすぎるやろ。普段から、俺はさ、タバコを純粋に買ってきて欲しいだけのときも……あるのさ…」

「なんの間なん、今の?あるのさ、やないねん」

「でも、俺の女アホやからプレイとしてなのかそうでないのかわからへんねん。何回言っても」

「そんなことないやろ。プレイかどうかわかるやろ、言うたら」

「ちょー、ほなタバコを純粋に買ってきてほしい時の言い方教えてくれや。俺、今から女やるからよ」

「一応その前に言っておくけど、基本的には自分で買いに行けよ。

まぁ、ええわ。やるわ。

あのさ。ちょー、タバコこうてきてくれや」

「タバコ?わ、わ、わかりました。

(服を脱ぎ出す)」

「待って待って待って!早いわ!予想より。

あの、プレイじゃないねん。タバコを純粋に買ってくるだけでええねん」

「(首輪をつけるジェスチャー)」

「あ、聞いて?ねえ?プレイじゃないねん!

ねえ、聞いて?

プレイじゃないねん

ねえ、聞いて?」

「ワン!ワン!

今夜はどの都道府県までタバコを買いに行けばよろしいでしょうか?ご主人様?

ワンワン!」

「調教がえぐい!

待って!お前に戻れ!いったん」

「お前さ、自分の彼女さんに、プレイ仕込み過ぎやから。もっと大切にしたれよ」

「そんなことないよ。俺は、ちゃんと向こうの親にも挨拶してるぐらい、ちゃんと将来のことを見据えてるねん」

「ホンマか。それを聞いて安心した」

「オヤジさんが、えらい俺に気を遣ってくれはって、『うちのムスメなんかでいいのかね』を連続で5回言うてたわ」

「オヤジもヤバイ奴やな」

「『うちのムスメのような、基本、ハダカで首輪をつけてるような女でいいのかね』」

「あ、出会う前からなん?お前と」

「せやで」

「ごめん!てっきり、お前が仕込んだんかと思ってた」

「違う違う。世界一愛してるから」

「キュンやな、おい」

「ハダカで首輪なんてつけなくてええねんと。前の悪い男のことはもう忘れて、タバコ買いに行けと」

「ええ彼氏やな」

「ハダカで首輪なんてつけなくてええねんと。

前の悪い男のことは忘れろ。俺だけを見ろと。

普通の服装でええから、俺の代わりに朝からパチンコ並べと」

「ええ彼氏やな」

「ハダカで首輪なんてつけなくてええねんと。
前の悪い男のことは忘れろと。

普通の服装でええから。治験のバイト行ってこい、と」

「ええ彼氏やな」

「ハダカで首輪なんてつけなくてええねんと。

前の悪い男のことは忘れろと。

クリスマスとか、誕生日とか、特別な日だけ、ハダカにするし、首輪もつけるけど、それ以外は、そんなことせんでええ!

週に一回は、運動をしても良い日をお前に作るし、と」

「クズやろ、お前!!どんな付き合い方しとんねん!

基本的にタバコは自分で買いに行け!パチンコは自分で並べ!!

特別な日もするな!!前の彼氏のこと思い出すには、充分やろ!年に二回もそんなんやらされたら!

「ええやんけ。俺の女やぞ」

「あと、なんやねん。週に一度の運動をしてもいい日をプレゼントて!囚人やないか、そんな生活!お前、ほんまに彼女のこと、愛してるんか?」

「愛してるし、愛し合ってるわ!今日も会場に来てくれてるし」

「いや、来てたら、わかるわ!!首輪つけてる奴おるんやから!もうええわ!」


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