『福家警部補の追及』
【※ネタバラシはありません】
『福家警部補の追及』
著者:大倉崇裕
出版社:東京創元社
発行年:2015年4月24日
--------------------------------------------------------
私が一番好きな出版社は東京創元社ですが、この福家警部補シリーズを読もうと思ったのは、恥ずかしながらドラマがきっかけでした。永作博美さん演ずる福家警部補(2009年、NHK)も、檀れいさん演ずる福家警部補(2014年、フジテレビ)も、どちらも良かったなあ……と思い出しました。特に檀れいさんが、毎週、一撃の一言を最後に放つのですが、そのシーンがすごいインパクトあって好きでした。(どういうセリフだったかは、さすがに覚えていませんが……。)あと、本書のような倒叙形式の本格ミステリを読むと、「刑事コロンボ」シリーズをまだ一つも見ていないことに対していつも後ろめたさを感じます。
そんなこんなで、本書はシリーズ第四作目。「未完の頂上(ピーク)」と「幸福(しあわせ)の代償」の二編が収録されています。
「未完の頂上(ピーク)」は、〈未踏峰への夢を息子に託す狩義之は、登山の後援をやめるという会社重役を殺害、勝手知ったる山で偽装工作を図る〉というストーリーです。大倉さんは山にお詳しいので、渾身の一作だったのではないかと勝手に思いました。倒叙形式のミステリを読むのが久しぶりだったので、犯人の一挙手一投足をいつも以上に集中して読み進めました。どのポイントで福家警部補が、犯行の綻びをつついてくるのか……。自分にとって意外な着眼点もあって面白かったです。それと同時進行で父と子の話も出てきて、読みごたえ抜群でした。
次に、「幸福(しあわせ)の代償」は、〈動物をこよなく愛する佐々千尋は、悪徳ブリーダーとして名を馳せる血の繋がらない弟をどうしても許せなかった〉というストーリーです。福家警部補に思わぬ弱点があり驚きました。他のシリーズの人物も出てきて、少しお祭り感があって良かったです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?