『犯罪は予測できる』

『犯罪は予測できる』

著者:小宮信夫

出版社:新潮社(新潮新書)

発行年:2013年9月20日

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 内容紹介より。

 犯罪を未然に防ぐには、いつどこで起きるか予測できればいい。それを可能にするのが「景色読解力」――注目すべきは、いかにも怪しい「不審者」ではなく、見慣れた「景色」なのだ。犯罪科学のエキスパートが最新の知見をもとに、実践的な防犯ノウハウを伝授。「街灯は犯罪者を呼び寄せる」「『いつも気をつけて』は無理な注文」「監視カメラは『だまし』に弱い」等、意表をつく指摘を通して犯罪のメカニズムを解明する。

 犯罪を防ぐことに関して色々と誤解していた点が多くあり、とても興味深かったです。本書は主に「犯罪機会論」に基づいて、防犯について提言されています。〈犯罪機会論とは、犯行の機会(チャンス)の有無によって未来の犯罪を予測する考え方〉(p.4)のことです。言い換えますと、犯罪者がどのような場所(景観)を選んでいるのかを予測することで、未然に犯罪を防ごうとする考え方のようです。それで導き出されたのが、〈犯罪が発生する確率の高い場所は、「領域性が低い」場所と「監視性が低い」場所ということになる〉(p.30)ということでした。ここが本書の一番のかなめだと思いました。つまり、

〇危険な景色=入りやすく見えにくい場所

〇安全な景色=入りにくく見えやすい場所

に変えていくことが、犯罪機会の長期的な現象につながるということでした。言われてみればそうかもと思いましたが、私としてはここが盲点でした。また、〈傍観者効果〉という用語も出てきて、ドキッとしました。〈人が多い場所では、犯行に気づいても、「たくさんの人が見ているから、自分でなくてもだれかが行動を起こすはず」と思って、制止や通報を控える傾向がある。その場に居合わせた人全員がそう思うので、結局だれも行動を起こさないことになる。その様子を見てだれかが行動を起こすかと言えば、そうならない。今度は、「だれも行動を起こさないところを見ると、深刻な事態ではない」と判断してしまう〉(p.116)心理のことを指すようです。つまり、「人通りの多い道は安全」ではないということです。心理的に「見えにくい場所」になっている……なんとまあ逆説的な話だろうと思いました。

 とにもかくにも、本書は私の固定概念をぶっ壊してくれました。外を歩くとき、本書を通じて得た「犯罪機会論」の目を通して、周りの景観を少しでも意識してみようと思います。

 著者の公式サイトもあります。「小宮信夫の犯罪学の部屋」、拝見します。


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