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『血の探求』

【 ネタバラシはありません 】

『血の探求』

著者:エレン・ウルマン
訳者:辻早苗
出版社:東京創元社
発行年:2014年1月10日


(内容紹介)
盗み聞きで出来た物語。
実の母親を捜す”患者”と繰り返し話し合う”精神分析医”。
そして、ふたりの会話を盗み聞きする大学教授の”私”。
予測不可能な傑作ミステリ!


 なかなか面白い趣向の小説です。大学教授である「私」が、精神分析医と患者の会話を壁越しで聞いているという構成で進んでいきます。本当は患者のプライバシーに関わることなので聞いてはいけないのですが、「私」と一緒に背徳感を抱きながら、彼女らの会話に一喜一憂することになります……少なくとも私はなりました。また、本書のタイトル通り、「血」を巡る物語でもあります。アイデンティティってなんだろうと思いながら読み進めました。そして、彼らがいる国と時代設定から、あの話題(これ以上はネタバレになるので書きません)になるのかも……と少し思ったりしたのですが、予想は的中したものの内容は私が思っている以上でした。あと、一介のミステリ読みとしては、いわゆる信頼できない語り手問題が頭の片隅にちらつきました。全員信じたいし全員信じられない。なんというジレンマ。でもおもしろかったです。

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