『片翼の折鶴』

【ネタバラシは多分ありません。】

『片翼の折鶴』

著者:浅ノ宮遼

出版社:東京創元社

発行年:2016年11月30日

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 現役医師によるミステリ短編集です。著者は、2014年に「消えた脳病変」で第11回ミステリーズ!新人賞を受賞しました。その短編含め、救命救急センターを舞台にしたミステリが5編収録されています。

〇「血の行方」……〈救命救急センターに運び込まれた男性は、原因不明の貧血と診断され……〉。医師たちのディスカッションが面白い。時々、専門的な話になりますが、それ込みで面白いなと思いました。

〇「幻覚パズル」……〈何者かに殴られ、前後の記憶をなくした少年。目撃者二人の証言は完全に食い違い……〉。見取り図が出てくると嬉しくなります。本書の中で一番驚いたかもしれません。あと、余談ですが、短編で「〇〇パズル」と聞くと、法月綸太郎さんの「死刑囚パズル」「都市伝説パズル」が思い浮かびます。

〇「消えた脳病変」……〈西丸豊学生時代のエピソード。講師から投げかけられたひと言に学生たちはとまどう〉。本書の探偵役を担う西丸の学生の時の話です。講義中に出された謎を楽しんでいたら、急に頭を殴られるような感覚。本書のなかで一番好きです。

〇「開眼」……〈四肢が麻痺した患者の呼吸困難の原因は、心因性のものなのか?〉。ここまで短編集を読んできて、医療の現場は本当に大変な場所なんだと改めて思いました。患者に対する姿勢、症状の原因を探る姿勢……。敬服です。

〇「片翼の折鶴」……〈余命幾ばくもない患者の望み、そして患者の家族の望みを真摯に描く〉。この短編は「かたよく」ではなく「へんよく」と読むそうです。翼のちぎれた折り鶴の意味を知ったとき、やるせない気持ちになりました。

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