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『愛の不時着』登場人物感想メモ

やっと着陸できた……!

今年の夏前ぐらいだったか、やたらと『愛の不時着』なるドラマの名前を耳にした。ハマったひとが周囲でもチラホラ、
「いいんだよー……」
「とにかく面白いから!」
「観なよー、ああもう語り合いたい!!」
熱を帯びた声が次第に増えていく。Netflixに先月入ったのを機に、軽い気持ちで観始めたら………ははは、私もドハマりしちゃったんですよ。

ドラマにのめり込んだの、いつ以来かなあ。もうね、続きが気になってしょうがないの。でも1本90分ぐらいあるんですよ、これ。CMもないからかなりの重量感。内容的も軽くはない。毎晩1話ずつ、同じようにハマったツレと一緒にワクワクしながら観続けました。ときに「ああダメだ、続きが知りたい。もう1話見ない!?」「明日仕事やのにー! でも観たい。観よか!?」なんて言い合ってね。そしてようやく昨夜、完走……。やっと着陸。アホみたいに号泣(笑)。自分でも自分がおかしいっす。ちょっと今、灰。

※当然のごとくネタバレがあります。まだこのドラマについて何も知らない人は本当に何も知らないまま観たほうがいいと思うので、ちょっとでも興味ある人はお進みにならないよう

あらすじは検索していただければと思うんですが、本当に乱暴にまとめると「パラグライダーにのっていた富豪の韓国女性が竜巻にのまれて北朝鮮へ。第一発見者の軍人とだんだんと恋仲に。もちろん不法侵入、自由恋愛などできない。軍人には婚約者がいて政敵もいる。女性は家族愛にとことん恵まれておらず帰還を疎む兄弟がいて妨害もされる。さあどうなる!」的な感じ。

いやー、あのね。なんの予備知識もなく見たんですよ。最初のうちは「財閥の一家が仲悪いんでしょ、ありがちじゃーん」とかナメて観てたらいきなりの竜巻。「えええええええええええええええ不時着ってそういうこと!!」と叫びました。よく叫んだよ、このドラマ観てる間。印象的なシーンとか展開書いてたらキリがないんで、私は主要キャストの感想をここでメモしておきたいんです。

俳優さんがね、みんなうまいんだ。素敵なんですよ。脚本に描かれている自分のキャラクターを魅力にふくらませられる人ばかりで、どんどん引き込まれていきました。ドラマの住人たちと顔なじみになっていくような感覚。一緒に卓についておしゃべりしているかのような。大昔のドラマの例えでなんですが、水前寺清子主演の『ありがとう』もそんな感じだった。主役カップルを軸にしての群像劇、サブキャラクターたちも実に魅力的で。自分もそのサークルの一員になりたくなる、彼らを眺めていたくなる。気の合う常連仲間のいる飲み屋さんに足繁く通ってしまう感覚にも似て。

そんな彼らに思ったことを、記録しておきたくなりました。

◇ユン・セリ(ヒロイン)
財閥の娘、居丈高でときに傲慢、ワンマンでやり手、部下や周囲のひとに対して高圧的、ひとの気持ちを考えない。親きょうだいからの愛に恵まれず育った女性。と書いてみて、とてもドラマ的にありがちな設定だなと。既視感の強いキャラクターを魅力的に見せたんだから、たいした演技者なんだとあらためて。我が強く、ときに不器用なお嬢様を恋人が突き放さず、さりげなくフォローする、離れない、守る……が基本の展開。北朝鮮で暮らすうちにだんだんと角がとれてくる。ひとの温かさを知っていく。

◇リ・ジョンヒョク(もうひとりの主人公、ユン・セリの恋人)
ヒロインと恋に落ちるのは武骨な北朝鮮の軍人。ひたすらに強くて、ルックスは言うに及ばず、頭も良くて、文化的な一面も存分にあって、礼儀正しく慎ましく、そしてそんなパーフェクトな自分に対してのドヤ感やナルシズムや「俺すごいだろ」的な感じが微塵もない。そりゃ惚れるわ! 

なんというのか……現代的なルックス×「高倉健」的な良さだよなあ、と。現代においてそんなキャラクターに説得力持たせるには「北朝鮮」という設定が効果的だったことに唸りました。彼、ドラマ内で女性からも男性からもトコトン慕われて愛されるんですわ。好漢度100%。そこも健さんっぽい。ドラマの前半~中盤は北朝鮮が舞台、終盤は韓国が舞台になるんですが、ジョンヒョクというキャラは圧倒的に北朝鮮でのほうが輝いてる。現代資本主義社会では「王子様」はいまいち"らしく"あれない。ユンセリが北朝鮮で受けた影響と、ジョンヒョクが韓国で受けた影響の違いが私はものすごく印象的でした。彼らがもし韓国で暮らしたとしたら、次第にジョンヒョクの良さは薄れていってしまうのではないかな……とも想像。

しかしとにかく感情をコントロールするキャラなんです、ジョンヒョク。すごく嬉しい、すごく恋しい、すごくつらい、いろんなシチュエーションがこれでもかとあるんですよ。でも表情に出ない、出さないキャラクター。だから観てるものがその内心をどんどん汲み取るようになるんですね。そうなるともうファン心理は炸裂増幅するわけで。多くのひとが「キュンとした」と書いてるけど、それはジョンヒョクのアクションや言葉が最小限もいいとこだったことに起因するんだろうなあ、なんてね。

こっからはひとことメモ的に。

◇ユン・セリ母
私が個人的に好きだったキャラその1。この世のすべての不幸を背負っているかのようなあのまなざし! 誰かに似ている……と思いつつ結局最後まで決定打を思いつかなかった。なんかこう………「硬いパンとまずそうなスープを飲んでいるカット」に登場したらピッタリじゃないかと訳わかんないこと思いました。往年の名バレリーナ(でも膝の故障で早く引退)とかそういう設定も合いそう。

◇セリ家の長男夫婦
財閥育ちとはまったく思えないカジュアル感、ちっともお金持ちな感じがしない。どことなく夫婦漫才師感あり。妙に私、彼らが好きでした。

◇セリ家の次男
これ以上ないというぐらいのクズ男キャラ、出てくるたびに「まだバカのほうがマシ」と身もフタもないことを思っちゃいましたねえ。マンボクが決定的な会話を録音してて公表されたときは「さあ、どうリアクションする!?」とワクワクしましたよ。キィキィ激高する演技ってむずかしいと思うんですが、上手だった。損な役をずーーっと演じられた彼に拍手。

◇セリ家の次男の妻
個人的に大好きだったキャラその2。「ひとを見下すまなざし選手権」があったら相当上位に来るでしょうね。全身これ「蔑視」ってなキャラクター。常に脳内権謀術数、ユンセリを引きずり落とすことしか考えてない。もうたっぷりお金持ってるでしょうに……。

◇ソ・ダン(ジョンヒョクの婚約者)
最初ツンケン、どんどん魅力的なキャラになるいい役。「若い頃の浅野温子に似てる」という声に納得。そりゃ飲まなきゃやってられないよね……と同情しました。これ以上ないというぐらいの理想的な婚約者からは「眼中にない」ことを見事に示され、ようやく愛と誠実さを感じられた男は目の前で死亡。強く生きていってね、ダン………。

◇ク・スンジュン(ダンと恋仲になる男)
30年前ぐらいに日本でドラマ化されたなら、明石家さんまさんにオファーが行きそうな役。演技的にものすごく達者な方だなあと感服しました。体の動きがすごくきれいだよね、舞台とか踊りとかやられているんだろうか。

◇ジョンヒョク母
どういうわけか「こういうひとを怒らせたらダメ」と見るたび思った。草村礼子さんとか、南果歩さんを思い出す感じのお顔。どうでもいいんですが、ジョンヒョク父を最後のほうで脅す軍部将校、鴻上尚史さんに似てるなあと。

◇ジョンヒョクの部下4人
愉快なカルテット、良かったですよねえ……素晴らしい編成。深刻でシリアスで重いドラマパートに疲れたあたりで必ず登場、見事な息抜きになる。素朴で、のどかで、のんきで、ちょいと俗っぽくて。
・クセの強い年長者
・とにかくイケメン
・韓国ドラマ好き(おたくキャラ的な?)
・無邪気な年少者
こういう構成って、ドラマや物語を作るひとからしたら基本なのかな? 韓国ドラマ好きの彼は物知りキャラクターというか。ジュモクがチェジウに会えたときのシーン、ほほえましかったねえ。彼らに会えなくなるのがさびしいです。最後のほう、ユンセリを護衛して戦うところは「なんだちゃんと強いんじゃーん!」と嬉しくなっちゃいましたよ。

◇マンボク
耳野郎という表現、すごいよね。とにかくよく泣く彼。最後のほう、脅迫されたことをきちんと告白するシーン、私大声で「えらいッ」と言ってしまいました。

◇ダン母&ダン叔父
私が個人的に大好きだったキャラその3がダン母です。顔芸というか表情演技がうまくてまあ、面白くて。「ちょっと待てコラ」みたいな睨み(上沼恵美子感があった)、都合の悪いことを押し切るときの強引な笑み、「何が起こってるの!?」的な驚愕、どれも忘れられない顔・顔・顔! そしてきちんとシリアスに母の悲哀みたいなものも芝居で見せる。名人だ。『パラサイト』の寄生一家のお母さんなんですね、気づけなかったなあ。そしてダン叔父も『パラサイト』のあのひととは! こちらはもう余裕綽々といった演技でした。ふたりの掛け合い、最高だね。

◇北朝鮮の村の奥さんたち
ファン多いでしょうねえ、彼女たちの。私も毎度楽しみでしたよ。ヨンエさんの旦那が連行されて肩身が狭くなってるとき、夜中にこっそり差し入れでみんなが集まってくるシーン、泣けたわー。酒癖の悪い人民班長(大沢家政婦紹介所にいそうな感じ)、アンミカさんっぽいひと、マンボクの妻(このひともうまい。なんというか、倍賞千恵子さんがやりそうな役が似合う感じ)、みんなよかった。映ってない部分の暮らしぶりも想像できるような。

◇チョ・チョルガン(主人公ふたりをとにかく消したい人)
さあ、チョルガンですよ。
このドラマがよかった理由のひとつに「悪役がひとり」というシンプルな構成もあるなあ、と。嫌なヤツはいろいろ出てきましたが、大物悪は彼だけ。とにかく全身から憎悪が噴き出しているかのような、魔を体現している役でした。そんな役を見事に演じ切ってましたよね。「ずっと一側面だけ」というのも役者としてさぞ大変だろうと思います。いやーしかし憎たらしかった。終盤、マンボクが銃を持って追うじゃないですか、「はやく撃て、はやく、ああ、はーやーく!」とマジで叫ぶ私。子どもか。銀の弾丸とかじゃないと死ななそう。しかしあの角度から撃って何でまたユンセリの胸部に当たるんでしょう………ってまあ、細かいことはどうでもいいですよね。竜巻まきこまれた後でもユンセリの髪の毛サラッサラだったし。

ああ、感想はまだまだ尽きません。各エピについても観た人と語り合いたいなあ。ジョンヒョクがバイクで追っかけ現れるところ、叫びましたよねえ。「来たああああああああああああああああ!」
テンション上がったなあ、あんとき。

ああ、もう一度最初から観てしまうかもしれません。長々書きましたが、以上が私なりの主要人物感想メモでした。

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