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【Minecraft】音ブロック立体ディレイ試論


はじめに

今回は音ブロック解説記事です。現在の音ブロゴリラたちが実際に使っている技術をある程度紹介することが目標です。JavaEdition前提で話が進んでいきます。間違いも多いでしょうし、訂正、批判、罵倒などは大歓迎です。

立体ディレイって何?

今回解説する「立体ディレイ」という言葉はピッチョさんによる造語(*1)です。私の(勝手な)理解で今一度定義すると、「マインクラフトという三次元的な空間内で音ブロックを立体的に配置し、適切な距離・遅延でディレイ音を鳴らすことで音の表現の幅を広げる技術の総称」です。

なんだそれ

でもそう表現するしかありません。私の表現力が乏しすぎるからです。いや、ものすごくざっくりいうと

「音ブロックで(疑似的に)音を伸ばす技術」

でいいんですが、それだと音を伸ばすだけじゃないんだよなあって思っちゃうんですよね…
ちなみに、”立体”ディレイとは言いますが、実際に立体である必要はないことが多く、回路の量が多すぎて結果的に立体的になるというのが実情です。

とにかく音が伸ばせることがわかったところで次に立体ディレイの基本形を解説します。

立体ディレイの基本形

立体ディレイの最も基本的な仕組みは、

「中央で鳴らす→右で鳴らす→左で鳴らす→右→左→右→・・・」

画像1 (数字は音の鳴る順)

というように鳴らすものです。上の動画では2gt間隔で鳴らしています。BPM150前後であれば、音が鳴る間隔は1gtか2gtが一般的です。(*2)
左右の音ブロックは音が粒だって自然に伸びていないなら近すぎ、音量が小さすぎるなら遠すぎるということになりますが、あえて粒だたせるパターンもあり、一概に正解は言えません。そして最初に中央で鳴らさないパターンや、だんだん近づけるパターンなど、再現したい音に合わせていろいろな形に派生します。

自然な音の伸ばし方

音ブロック演奏での最難関課題は、「どうすればいい残響になるのか」ではないでしょうか。この節では、残響の形と間隔の2節に分けて、自然なリバーブを組む方法として私の仮説を紹介したいと思います。
残響の形(距離)と音の間隔の二つのパラメータをいじることで試行錯誤を繰り返すことができるようになれば、立体音響音ブロ技師レベル1です。

1.再現したい音源に減衰を合わせる

まず下の画像をご覧ください。

画像2

これはピアノの全音符の波形です。最初に最も音量が大きく、その後急速に音量が小さくなり、小音量の余韻が残っているのがわかると思います。音ブロックでピアノを演奏する際によく使われるharp音源を使って立体音響回路を組んでみましょう。次の2つの動画をご覧ください。

いかがでしょうか。二つ目の動画の方がピアノ音に近い音に聞こえたかと思います。ここからさらに中央で鳴らす音ブロックを二つに増やしてみましょう。次の動画をご覧ください。

さらにピアノに近い音になったかと思います。先述のピアノ音の波形に合わせて中央で鳴らす音を大きくし、ディレイの音は急速に減衰するように回路を組むことで、よりピアノの音に近い音響が実現できると言えそうです。
このように、鳴らしたい楽器の音に合わせて音の減衰を設計することで、自然なディレイに近づくことができます。

ピアノと似た波形の音を出す楽器としてシンバルやアコースティックギターなどがあります。つまり、これらの楽器を再現する場合は上述のピアノと同じような音量減衰の回路を組めばいいのです。
一方でエレキギターはストリングスと減衰が似ています。シンバルとアコギ、ストリングスとエレキギターはそれぞれ実際の音楽でも音が混ざりやすい組み合わせですよね。

この理論に従うとスネアやバスドラムのような急激に減衰する打楽器の場合は減衰の激しいディレイ回路を組むことになりますが、これらの場合はそもそもディレイは作られないことの方が多いです。逆に、弦楽器や管楽器といった持続系の音を再現する場合は一定の距離を維持したり、徐々に近づけたりする置き方になります。

しかし、持続系の音と一口に言ってもいくつかバリエーションはあります。回路を組む際の最も大きな違いは最初の音を中央で鳴らすかどうかですが、この点に限ってみるとおおよその傾向がつかめてきます。というのも、管楽器、特に金管楽器は立ち上がりの音が強く、弦楽器はあまり強くない傾向にあります。それに対応して管楽器の場合は最初の音を強く鳴らし、弦楽器の場合は鳴らさずにディレイ部分のみとするのが適しているような印象があります。

また、回路を改良するにつれてより滑らかでディレイの音の粒が目立たなくなっているように感じると思います。立体ディレイの音の粒立ちが最初の音との音量差でいい感じにかき消されているわけですね。

2.鳴らす間隔を変える

立体ディレイの音が鳴る間隔を2gtから1gtに変更したり、1gtから2gtに変更したりします。ピッチョさんの言葉を借りると1gt感覚で鳴らすと「音の広がりをなくす」ことになりますし、そのほかにも間隔を変えることによって音響の効果はいろいろと変わります。ここではその一例を紹介します。

以下の2動画をご覧ください。

ここではplingをそれぞれ1tick、2tickの間隔で鳴らしています。間隔が違うことで全く異なる音響になっていることがわかるでしょうか。

plingは音の粒が目立つ音源で、ディレイを組む際にそれが気になりがちなのですが、そういうときにあえて鳴らす間隔を1gtから2gtに変更することで自然な響きになることがあります。このような操作が効果を発揮するのは、plingが目だってかつ穏やかな音響が必要なとき、その最たる例はピアノソロでしょう。

以降の節では、主に私が使っているものを中心に、様々な亜種的な立体ディレイの組み方を紹介していきます。

左右対称に組む方法

我々ずぼら系音ブロ技師にありがちな制作方法として、「左右対称にディレイを組む」というのがあります。左右どちらか片方を作ってそれをWorldEditで反転コピペすることができれば作業効率は大幅にアップしますので、知っておいて損はありません。(*3)
その方法の一例を解説します。

立体ディレイのディレイ音の数は大抵奇数になります。というのも、立体ディレイは普通十六分か三十二分の間隔で音を鳴らすのですが、四分や八分といったよく使う音符はそれらの偶数倍の長さであるため、音の鳴る回数は最初に鳴る音を含めて偶数回になるためです。ですので、中央で鳴らして次に左で、その次に右で・・・といった方法ではディレイ部分に必要な音の数は奇数となり、一見左右対称には組めないように見えます。

しかし実際には多くの音ブロ技師が左右対称にディレイを組んでいます。現在よく使われているのは、最初に中央で音が鳴るのと同時に左右どちらかでも音が鳴るように組む方法です。下の画像をご覧ください。

画像3 (数字は音の鳴る順)

これは1gt間隔でBPM150での二分音符を鳴らす回路です。ご覧のように左側は中央の回路に対して1gt遅れですが、右側は中央の回路と同じ遅延であり、中央で最初の音が鳴るのと同時に右側でも音が鳴る構造になっていることになります。


左右に若干偏った音にする方法

左右両方で音が鳴っているにもかかわらず左右どちらかに偏って聴こえる、という音響の解説です。私の場合最初にこのタイプの組み方をしたのはラグトレイン演奏のBメロ部分のiron_xylophoneですが、最も顕著なのはアスノヨゾラ哨戒班のベース部分です。以下に二動画を張り付けておきますので(特にアスノヨゾラ哨戒班の方は)ご覧ください。

いかがでしょうか。上の二例は若干異なりつつも基本的な構造は同じです。

画像4 (ラグトレイン)
画像5 (アスノヨゾラ哨戒班)

上の二画像がそれぞれの基本的な構造です。共通点は、最初に鳴らす音を左右どちらかにずらして置いたうえで、ディレイ回路のうち先に鳴る方がそれと同じ側になるように組むことです。

これはつまり、ディレイ回路は左右対称に置いていたとしても先に鳴った側に音の重心が寄ってしまうことを意味します。実は、「左右対称に組む方法」で紹介したやり方でも、多くの場合左右どちらかに偏っているのです。

この性質を利用することによって、逆に、中央に音を置けない場合にもほぼ左右対称に音が鳴る立体ディレイを組むことができます。以下の動画をご覧ください。

またしても手前味噌ですが、どうか我慢してベース部分を聞いていただければと思います。仕組みは先ほどの回路とは逆で、中央の音の偏りとは逆側のディレイ回路が先に鳴る形となっています。

実は、前節「左右対称に組む方法」で紹介した回路動画もそれを利用しています。中央の音が鳴ると同時に右側で鳴っているのですが、それを中和するために、中央の音を増幅する際に左側に付け足す形をとっているのです。

左右どちらかのみで鳴らす方法

左右どちらかのみで鳴らす場合は通常以上に精密な音量減衰が必要になります。それに加えて、音の間隔は狭くした方が精密な音量を再現することができ、良い音になる印象です。一例として、右側でのみ鳴らしたギター音回路を添付します。一つ目の動画は2gt間隔、2つ目は1gt間隔です。

いかがでしょうか。どちらも使えないことはないですが、単体で使うことを想定すると音の間隔が狭い方が違和感が少ないのではないでしょうか。逆に、他の楽器と混ざり合って鳴るような部分だと少し粗いくらいがよさそうです。

おわりに

今回は前半で音ブロ立体ディレイの基礎理論を、後半でやや応用的な組み方の例を解説しました。
この記事の注意点として、「いかに原曲を再現するか」に重点を置き過ぎているというものがあります。言い換えると、原曲では持続系の音をあえて減衰系にしてみるといったような場合を考慮していません。
これは将来の課題となりますが、皆さんもぜひマイクラ独自の音響を追究してみてください。

今回の記事のもう一つの注意点として、複数のバージョンで撮影した例を掲載している点があります。1.12.x以前とそれより後のバージョンとで音の聴こえ方が違うため、より例としてわかりやすい方で撮影しています。

1.16.5以降か1.12.2以前かという違いは小さいようで大きく、一度あるバージョンに慣れるとそこから移動しようとする人は多くありません。
どちらのバージョンでも基本的な技術は同じですが、1.13以降の新しいバージョンはそれ以前と比較してパン振りが激しく、離してもなかなか音量が減衰してくれないといった性質があります。特に後者の特徴は立体ディレイの音がうるさくなったり粒立ちしたりする原因となるので、扱いは難しいと感じる可能性が高いです。

しかし一方で作業効率という観点で見ると、(私の体感では)1.16以降が旧バージョンと比較して少し勝っており、特に1.18.2環境では音源同時再生数を増やすmodがあり、音数的な不便さを感じなくなっています。

要は一長一短。最終的には操作感や慣れ、見た目も含めて好きな方を選ぶのがいいでしょう。


音ブロック立体ディレイ技術においては、日本語圏が世界で最も先進的な技術を持っているといっても過言ではないのに、それに軽く触れる解説はあっても、立体ディレイそのものの解説は私の観測範囲ではあまり多くないのが現状です。(そんなこと言ってるうちにあんずさんが解説動画をいくつも出されました。遅筆…)

この記事によって、またこの記事が批判されることによって、音ブロ界隈の技術がさらなる発展を遂げることを祈りつつ、筆を擱くことにします。それではまた。

脚注

*1 【Minecraft】音ブロック立体音響講座 -前編-【VOICEROID解説】

*2 gt=gametick 1gtはリピーター0.5遅延

*3 見た限りでは左右対称に置くのは1gtなど短い間隔で鳴らす際に使われることが多い印象です。私の場合、2gt間隔のディレイでは、ふくらげさんの作業動画で紹介されている方法を使うことも多いです。


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