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美顔づくしの明治の西洋画…『美音』…に見惚れました。@東京国立博物館

先日、東京国立博物館トーハクの近代美術工芸の部屋で、島崎柳塢りゅうろうさんという方の大きな絵を見上げていました。

島崎柳塢りゅうろう『美音』東京国立博物館

こうして近づいて写真を撮ると、それほど大きくも感じられませんが、実際に目の前に立つと、見上げなければ隅々まで見られないくらいの大きさです。

島崎柳塢りゅうろうさんという名前を初めて聞いたのですが、解説パネルによれば「川崎玉章門の逸材で……」と記されています。川崎玉章さんという方自体を知らないのですが、そう名前を挙げられている画家の門下の中でも“逸材”と言われていたんですね。今回の『美音』を見ていると、そう称されるのも分かる気がします。

島崎柳塢りゅうろう『美音』東京国立博物館

さて……作品『美音』は、火鉢を囲んで琴の音色に耳を傾ける老若男女を描いたのだそうです。解説には「各々の表情やしぐさにごく自然な動きが表現されています」とあります。実際に絵を観ると、冬の寒い日なのが分かると同時に、ほんわかとした温かい雰囲気を感じさせます。

島崎柳塢りゅうろう『美音』東京国立博物館

「今日は冷え込みが激しいですねぇ」なんて言いながら、琴の奏者にお尻を向けながら火鉢に手をかざすおばあちゃん。「ほんとうに寒いですねぇ」なんて相槌をついているかのような、尼さんでしょうか……。その隣で声を出さずに静かにうなずく女性。目を閉じて美音に耳を傾けている人もいます。

そうして琴の音色が響く中で、若いお嬢さんを連れたお手伝いさんでしょうか……が、「失礼いたします……こちらに入らせていただけますでしょうか」と、柔和な表情のおじいさんに声をかけています。おじいさんは、「どうぞどうぞ、はやく入ってこちらの火鉢にあたりなさい」と優しく応えているような気がします。

島崎柳塢りゅうろう『美音』東京国立博物館

この部屋全体に、やわらかくてあたたかい空気が流れているような気がします。そう感じさせるのは、どの人の表情もやさしげだからでしょうね。そして、老若男女の顔立ちが、どの人も美しいです。

なんとなくですが、この方の作品を今後観る機会は、そう多くないような気がします。そんな中で、トーハクで『美音』を今回観られたのは良かったです。島崎柳塢りゅうろうさんの『美音』は、明日で展示が終わってしまうそうです。

ということで、来週から同じ場所に展示されるのは、小林古径さんの『異端(踏絵)』のようです。また来週からは、下村観山さんの『春雨』、前田青邨さんの『朝鮮之巻』や『湯治場』も展示されるとのこと。いずれも初見ですが、楽しみなラインナップです。

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