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蚊と無傷なままの虫の死骸について

近頃は流石に冷房に頼っている。そのため窓をほとんど開けなくなった。そのせいだろうか、閉じた網戸と窓ガラスの間に蚊が1匹死んでいた。薄茶色をした体格の良い蚊だった。紙の上に乗せ、彼の長い後肢と細身の胴、小さな頭、透明な2対の翅を観察する。太くて醜い蠅に比べれば、スタイリッシュな蚊の身体はなんと洗練されているのだろう。そして薄く透明な翅に蛍光灯が反射し、虹色に光るのを見た時、その美しさに感嘆した。俺にはこの蚊が天使のように見えた。
この蚊のように、虫が無傷で死んでいるのを見るのが好きだ。いとも容易く潰され死んでゆく虫が、綺麗な身体のまま死ねるのは難しいように思うからだ。寿命か餓死か、もしかすると病気か、とその死因に思いを馳せると、不思議に胸が温かくなる。そして老衰であればいいなと、いつも願う。

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