夜がてら
散歩していた公園の公衆便所に入った。
小便器の上には糸くずのように小さい蚊が羽を震わせていた。手洗い場には水に濡れた陶器に滑り、這い上がれずにいる甲虫がいた。
僕は蛇口の側に置かれたトイレットペーパーの芯で甲虫を掬い上げ、足元に落とした。
甲虫は逆さまになってじたばたとしていたので、息を吹きかけて起き上がらせた。
甲虫は壁の隅を行ったり来たりして、もたもたとしていた。
おそらく僕よりも著しく短い命の中で、この虫たちは何を思って、何を幸せに感じて生きているのだろうと思った。
しかしもがきながらも今を生きる虫たちを見て、彼らの一生を想い、不思議と心が暖かくなった。
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