White point of view 5

 緑くんは微笑みながら、わたしにそっと手を差しのばすような優しさをくれる。笑いながらパスタをフォークで巻き取るその仕草がきれいで、わたしの鼓動はカラフルな音色を奏でる。
「やっぱり真白ちゃんはいいね。なんかすごい柔らかい雰囲気作ってくれるよね?」
「ほんとー。そうかな?」
「うん。めっちゃ楽だよ。俺こんなんだからさ。よく軽いって言われるけどさ。ほんとはそんなことないんだよ」
「わかる気がする。緑くんは自由に泳いでるだけだよね。この嵐の中に落とされたみたいな世界を。この不自由で歪んだ世界の中を、緑くんは草原を駆ける馬みたいに自由に軽やかに、きれいに浮いているだけ。ただ……それだけだよ」
「真白ちゃんやっぱりすごいよ。俺もわからない俺の気持ち感じ取ってくれるもん。はは。もしかして真白ちゃんってエスパー?」
「違うよー。ただいろんなこと感じたり、想像したりしちゃうだけだよ。昔なんて何にも理由もなくいろんなものが怖かったりして、大変だったし」
「はは。そっか。やっぱおもしろいよ。何だかすごいのんびりできるっていうの? いや、なんか雲みたいだよ。ふわふわしてて、何だかいろいろ包んでくれるみたいな感じ?」
「そう? なんかうれしい。わたしは緑くんのちょっとフラフラしてるとことか、後なんて言うのかな? 生き方のセンス! みたいなところが好きだよ。すごく透明で生ぬるい水みたいで」
「それ褒めてる? でもなんか俺もうれしい。俺さあ。まっすぐした目で真剣にこっち見られると逃げちゃうんだよね。何でだろう? だから真白ちゃんみたいにソフトでキャパが広い子だと、居心地よいんだよね。もちろん良い意味でだよ」
「えへ。ありがとう。でも…… 緑くんだってきっとその気になれば、まっすぐした目できると思うよ。だってたまに見え隠れしてるもん! そういうとこ」
「え? 本当に? 気づかなかったなー。でもきっと俺は探してるのかもしれないな、まっすぐな目を持つ俺自身を……」
「いいね。その言葉。わたしはそんな緑くんを見ていたいな。とけそうになるまで見ていたいな。そして、わたしもその熱で消えてしまいたい」
「真白ちゃん面白い! サイコーだよ」
緑くんはわたしの髪をくしゃっとした。天使がいたずらに吹いたシャボン玉が、いくつも音を立ててはじけたような気がした。だってすごく甘い香りがする。ダメだ。

「溺れそう…… 泳げない。だって甘さと苦さが絶妙なビターチョコレートが癖になったから……」

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