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レザークラフトの上達を阻む心理

こんにちわ、HAKUです。
今日は久々にレザークラフト初心者の方を想定して記事を書いてみたいと思います。

以前、私が初心者の頃に失敗したことを「初心者の頃に陥りやすい罠」として記事にしました。今日はこれと近しいけれど、また別の視点でレザークラフトの上達を阻むメンタリティについて考えてみたいと思います。

気持ちは分かるけど…

私は今、YouTubeでレザークラフトに関する動画投稿をしていますが、時折コメント欄でこういった質問を受けることがあります。

○○(道具)は買ったほうが良いですか?
道具はどれがオススメですか?
このアイテムは○○mm厚でも作れますか?
アレをこーしてみたいんですけどできますか?

”嫌われる勇気”を持って率直に言ってしまうと、これらは頂いて結構回答に困ってしまう質問だったりします。

もちろん、自身の経験でお役に立てることがあれば力になることはやぶさかではありません。経験したことを、わざわざ出し惜しみするようなことはしていないつもりですし、そもそも出し惜しみできるほどたくさん引き出しを持っていないという噂も…。

道具にしても、作品の素材や仕様、仕上がりにしても、最終的に「良し!」と判断するのは作り手本人。であれば私に聞くよりも、自分自身で試してみるのが確実なんじゃないかな、と思うわけです。

っと偉そうな事を書きましたが、こういう事を誰かに尋ねたくなってしまう心理もよく分かります。きっと「こうすればいいんだよ!」「これで間違いない!」っと自分よりも経験のある人に断言してもらって安心したいというか、背中を押して欲しいというか…。

要するに、「失敗したくない」「回り道をしたくない」って事じゃないかな、と思います。

誰でも失敗はイヤだし、できることなら避けたいと思うもの。革だって安くないし、費やした時間や労力を考えたら、そりゃ失敗したら落ち込みます。私自身、失敗続きで上手く行かなかった時期は本気でレザークラフト教室を探して通おうかと考えたこともあります。

でも、あまりに失敗を恐れて過ぎてしまうと、それはそれで成長を妨げてしまうのではないかな、と思います。”涙の数だけ強くなれる”のと一緒(世代バレバレ)。月並みですが、失敗の数だけ上達できる…と、私は思っています。

ちょっと気が楽になるお話

もしかしたら、私の動画を観てくださっている方の中には、「あぁ、このHAKUって人は器用だから、こんな風にスムースに制作ができるんだなぁ」なんて思ってくださっている方も居るかもしれません。(うーん、ちょっとは居て欲しいな…)

でも、それは大きな誤解。

私はいまだにたくさん失敗をしています。失敗を繰り返して、繰り返して、「よし、行けそうだ!」となったらカメラを回して撮影する。要は充分に予行演習をした上で動画を作っているだけの事です。

以前のnoteでも少し触れましたが、私の場合YouTube動画を撮影する前にかならず2~3作、下手するとそれよりも多くの試作をしています。

ちょっとこちらを御覧ください。

こんなに何度も設計しとるよ

これは私が今取り組んでいる作品の型紙設計画面。いくつかの塊になっているのが見えると思いますが、その塊はそれぞれ型紙「Vol,1」「Vol,2」…と修正を加えたバージョン違いです。(数が少ない部分は一部のパーツのみの修正だった箇所です)

言い換えれば、この塊の数、型紙のバージョンの数だけ制作➞失敗➞修正を繰り返しているということ。それだけ事前に何度も失敗しておいて撮影に臨んているのですから、動画ではスムースに制作しているように見えなきゃ困る(汗)実際はもっと泥臭く、時間もコストもかかることをやっていたりします。

プロの方が毎回こんな事をしていたら大赤字もいいところでしょう。でもアマチュアの私には時間・コストの制約もありませんから、こんなゼイタクな事ができちゃうわけです。そう、ゼイタク。たくさん失敗して、じっくり時間をかけて制作に向き合えるなんて、ある意味、アマチュアの特権です。

特に初めて挑戦するアイテムなんかは、「どうせ一発できれいに作れる訳がない」「一回目はまぁ、失敗するだろうな」くらいの気持ちで取り組んでいます。

だからといって設計も制作も適当にやる訳ではありません。なるべく失敗のないように細部まで考え抜いて設計し、丁寧に制作はするのですが、やはり実際に作ってみないとわからないことがある、という事です。

・どういう所が難しく失敗しやすいか?
・イメージしていた手順でOKか?手順を変えたほうが良さそうか?
・CADでは確信の持てなかった仕様や寸法は大丈夫か?
・実際に作ってみてサイズ感や機能などはイメージ通りか?

こんな事を考え確認しながら試作をするようにしています。

だから私は、失敗はむしろ大歓迎。失敗することによって型紙の精度も上がるし、次に制作するときは、より自分の理想のイメージに近づける訳ですから。こうなると「失敗」というよりも「伸びしろ」と言ったほうが良いかもしれないですね。

道具選びも然り。

制作に限らず、道具選びも同じだと思います。

私の押し入れの引き出しには、せっかく購入したのに今は全く使っていない道具、使いこなせなかった道具がひっそりと眠っています。使っていない道具をみるとちょっと心が痛みますが、こういう事も結局の所、避けて通れないんじゃないかと思います。

私の場合で一例を挙げると、ヘリ落とし。「1mm厚未満の薄い革でも使えるヘリ落としが欲しいなぁ」と思い、こちらのクラフト社さんのヘリ落としを購入したことがありました。

ところが、どうやっても上手く使いこなせない…。恐らく先端に少し角度がついているのですが、その微妙な角度のせいで刃がどちらに向いているのかが把握しづらかったせいではないかな、と思います。

誤解のないように言っておきますが、これは「道具が悪い」と言っている訳ではありません。強いて言えば「相性」。たまたま私には合わずに使いこなせなかっただけで、こちらの道具を愛用している方はたくさんいると思います。

買い物としては失敗だったかもしれませんが、「どうやら自分は刃先に角度のついていない物のほうが使いこなせそうだ」という経験値を得ることができました。

それを踏まえて購入したのがこちら。韓国のPalosantoさんのヘリ落としです。最初のものと価格帯が全然違いますが、当時はFLINTさんやSINCEさんの工具がまだ日本のマーケットに登場しておらず、薄い革にも対応したヘリ落としはなかなか見つけるもの大変だったのです。

多少全体が湾曲していますが、柄の方向と刃の方向がほぼ同じなのでとても扱いやすい。切れ味も素晴らしく、こちらは今でもお気に入りのツールとしてバリバリ活用させてもらっています。

こんな風に、どういうものが自分に合うのか、または合わないのかというを知れるのも貴重な経験ではないかと思うのです。そしてコレばかりは誰に聞いても正解を教えてもらえないこと。自分で実際に使ってみて、自分自身で判断するしかない事じゃないかな、と思います。

仮に他のみんなが良い!っと絶賛しているモノであっても、憧れの職人さんが使っているものと同じモノであっても、「何だか使いにくいな」「上手く使いこなせないな」と感じたのなら、きっとそれが正解です。

それは決して失敗ではなく、自分の好みやクセ、現在の習熟度などを知ることができる貴重な経験だと思います。

ちょっと余談になりますが、私はこういう考えなので、動画の中でも「この道具はおすすめです!」という表現は決して使わないようにしています。上記の例のように使用感は人それぞれ。安易におすすめして、万が一その方と道具の相性が悪くても責任が取れないですから。

「どの道具を買えばいいのか、ハッキリ教えてョ!」っという方にとっては不親切なかもしれませんが、「無責任なくらいなら、不親切でいる方がいいかな」と自分では思っています。

ケチだったHAKU少年に母がかけた言葉

唐突ですが、恥ずかしながら私は小学生の頃まで、とっても「ドケチ」なお子様でした。お正月にもらったお年玉には絶対に手を付けない。お小遣いもあまり使わずに取っておくタイプ。たぶんお金が「減る」というのが心理的に嫌だったんだと思います。

友達と遊ぶにしても、ゲームセンターに行ったり、駄菓子屋さんに入り浸ったりとお金を使う遊びは好きではなかったです。公園で野球やサッカーして遊んだ方が楽しいのにな、っと思っていました。

ある時、友達が休みの日に繁華街の大きなおもちゃ屋さんに行って、地元では売ってないアニメのグッズを一緒に買いに行こう!お昼はマクドナルドに行こう!と誘ってくれました。当然、私は断ります。ちょっとグッズが欲しい気もしましたけど、電車賃・グッズ代・お昼代とたくさんお小遣いを使ってしまうのが嫌だったからです。

そんなケチンボな私を見かねて、母親の言ったことが今でもすごく印象に残っています。

「お小遣いはまた貯められるけど、友達と一緒に楽しむ経験はお金じゃ買えないんだよ。お小遣い使ったって、その分友達と出かけて楽しい思いができたらいいじゃない。ホラ、いってらっしゃい。」

お金は大切にしなければいけないけれど、お金を出してこそ得られる”経験”もある。お金に代えられないモノ、形のないモノの価値をきちんと感じられるようになりなさい。

そう教えたかったのでしょう。マスターカードのCMの先駆けのような母の助言。やるな、オカン。何だかこの記事を書いていたらふと思い出してしまいました。

昨今は何かと「コスパ、コスパ」と、どうしてもコスト面ばかりに目が行きがち。それは否定しませんし、自分自身もそういう損得勘定をすることはたくさんあります。でも、数値で測れないし、具体的な形には残らないけれど、自分だけの経験・体験という立派なリターンもあることを忘れてはいけないな、とも思います。

制作にトライして失敗してしまったり、自分に合わない道具を買ってしまったとしても、「革を無駄にした」「損した」ではなく「こうしたら失敗するという貴重な経験値を得られた」「どういうモノが自分に合わないのか体験し学べた」と考えてみる。

そんな風に捉えてみると、怖がるような失敗や無駄なことなんてない!と開き直れるかもしれません。

失敗せずに思い通りの作品を作りたいなんて、バットを振らずに「ホームランが打ちたい」と言っているようなもの。バッティング理論を頭に詰め込むだけでは永遠にホームランは打てません。思い切ってスイングしてみることが大事だと思います。

積極的に経験・体験を重ね、失敗を恐れるのではなく楽しむ。そんなレザークラフトとの付き合い方もアリなのではないでしょうか。

<おまけ>数年後の母子の会話:

子:「部活の友達とメシ食いに行くから夕飯いらないよ」
母:「はいよー」
子:「で、小遣い足りないんだけどさ、ちょっと前借りさせて」
母:「友達付き合いはいいけど、アンタもっと考えてお金つかいなさいよ」
子:「でも、楽しみはお金じゃ買えないから。母さんも言ってたでしょ?」
母:「下手なこと言うんじゃなかった…( ´Д`)=3」

バカ息子でごめんなさい。

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