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マネージャーに部下のモチベーションはコントロールできない

こんにちは。はこにわガジェットです。
当マガジン「マネジメントハッカー」では主にマネージャーやリーダーの方を対象に仕事のマネジメントに関わるノウハウやTIPS等をお伝えしていきます。

今回のテーマはこちら。

マネージャーに部下のモチベーションはコントロールできない

マネージャーになると真っ先に直面する課題は、部下のモチベーション向上です。どうせ働くならモチベーション高く働く人に囲まれていたいものですよね。

今回はそんなモチベーション論について記載します。

ケーススタディ

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ITソリューションの販売を手掛けるA社の営業企画部に在籍する高橋課長は、若手社員である牧野の育成について悩んでいた。

牧野は入社三年目になる。高橋としてはそろそろ新人的立ち位置ではなく、もう少し高い目線で仕事をしてほしいと考えているのだか、どうにも本人の仕事に対する意欲が見られない。

やる気がないわけではないが、業務に対する積極性というか、自ら手を挙げ、アイディアを出して引っ張っていくような姿勢が見られないことに、高橋は悩んでいた。

そこで、毎月実施している1on1で、牧野とその話をしてみることにした。

高橋『最近の仕事はどうかな?楽しくやれているか?』

牧野『仕事ですからあまり楽しいかどうかという視点では考えませんが、やるべきことはできていると思います』

高橋『君は少しドライなところがあるから、もう少し仕事に対するやる気を表に出してくれた方が、周りもやりやすいと思うよ』

牧野『はぁ。そうですか。仕事は嫌ではありませんが、楽しいとも思ってないので、やる気のあるポーズだけするのも難しいですね。』

高橋『そうか。俺が若い頃はみんな仕事に対するやる気があって・・・』

こうして、今日も議論が噛み合わないままに1on1は終わっていった。

モチベーションの源泉

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ケーススタディでは上司が部下のモチベーションを高めるのに苦労しているようですが、こうしたことは実社会でも日常茶飯事でしょう。

ではこの「モチベーション」はどこから生まれてくるものでしょうか。
いくつか有名なモチベーション理論をご紹介します。

1.マズローの5段階欲求説
これはモチベーション理論として非常に有名でご存じの方も多いかと思います。人間の欲求は以下の5段階で段階的に満たされていく、という説です。

(1)生理的欲求:食欲や睡眠欲等の生きるための基本的欲求
(2)安全性欲求:安全や健康な生活を求める欲求
(3)社会的欲求:仲間が欲しい、社会に加わりたいという欲求
(4)承認欲求:周囲から認められたいという欲求
(5)自己実現欲求:より良い自分になりたいという欲求

2.エドワード・L・デシの内発的動機付け
心理学者エドワード・L・デシが提唱したモチベーション理論において、内発的動機付けを生み出す源泉として以下の3つの欲求が挙げられています。

・自律性:自ら行動を選び、主体的に動きたいという欲求
・有能感:何かを成し遂げて、周囲に影響力を持ちたいという欲求
・関係性:他者と深く結びつき、互いに尊重しあう関係を作りたいという欲求

私はこれまでの経験から、特に後者のエドワード・L・デシの理論が実社会でも適用できると実感してきました。自律性、有能感、関係性の3つをうまく喚起することができれば部下のモチベーションも向上するはずです。

響くかどうかは相手次第

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しかし、そんな簡単に部下のモチベーションを上げられれば苦労はしません。

例えば自律性を促すために少々の失敗には目をつぶり、自分が責任を負う覚悟で少し難しい仕事を部下に任せ、口を出さずに成り行きを見守ったとします。自律性を高めるには最適の方法で上司にもかなり勇気が要りますが、部下がこれに気づかないことも往々にしてあるのです。

上司としては部下のために一生懸命考えてやっているのに、まったく手ごたえがないと、「最近の若い奴は・・」と言いたくなるものです。しかし、上司と言っても所詮は人間。他の人間を思ったように動かすことや考え方を変えさせることなど、簡単にできないのが当たり前と思っていた方が良いでしょう。

自分が相手に期待したからと言って、その反応が無いことで評価を下げたり叱ったりするのは逆効果。相手には相手の考え方があり人生観があるのですから、そこを尊重しましょう。

マネージャーにできること

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では、部下のモチベーションを高めるために上司にできることはないのでしょうか?

そんなことはありません。

例えば、やる気のなかった部下が急に最近やる気を出し始めた、という経験はないでしょうか?または、自分自身が過去やる気のなかった状態からやる気が出始めた経験は?

そういった時には何からのきっかけがあるものです。例えば上司からの一言であったり、顧客からの反応で合ったり。しかし往々にして本人にとって重要ったその一言は、声をかけた上司の方は覚えていないことが多いのです。

あのときのあなたの言葉が心に刺さって、という話をされる時、相手側は覚えていないことが大半です。

人間の考え方や価値観が変わるきっかけとはそんなものです。声をかける方が狙ったとおりに相手を変えることよりも、「そんなことが?」というシーンが相手に響いているものです。

ですから、上司が唯一できることはいつかどこかのタイミングで部下に刺さることを祈りながら、すぐに結果が出なくても相手のモチベーションを刺激する言動を続けることです。

私はこれを『スイッチを押し続ける』と呼んでいます。


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