いい歳なので

好きなものに対し、好きだという態度を出すことを恥ずかしがるのを止めようと思ったのだった。
そう、こないだの、20年前から好きなバンドのライブを久しぶりに観たときに、なんとなく思った。
歳をとって、残された時間は短くなっていく一方なわけだし。
このままでいいのか?
いや、よくない。もっとしあわせになりたい。

なんかさー、スタンディングのライブにおいて、整理番号が一桁の場合は、だいたいにして、最前列に行くことは可能なわけですよ。極端に横幅が小さいハコ以外では。
けれども、なんか恥ずかしくて、ずっとためらっていたのです。いやなんかねえ。こちらが見るということは、見ている自分も演者の視界に入ってしまうかもしれないじゃないか、というわけです。

好きなものは、見つめていたいが、自分は見られたくないという、壁になりたい願望があるので。ねえ、なかなか行けないんすよ。前に。

けれども、勇気を出したくなったんすよなあ。急に。
ほら、先のことなんてわからないから、今をもっと大切にしないといけないなと。
今回の一桁チケット、ギリの一桁とはいえ、そうそう取れるわけではないし。
…や、そんな大層なことを一瞬で考えたわけではないけど、ほんとなんとなく。いつもと違うことをしたくなった。

で、最前の、しかもど真ん中が少し空いてたのをよいことに、我が身を滑り込ませ。

…いやあ、至福でしたなあ。
最前て、高さ的には演者の足元あたりだから、むしろ目が合わないんだなあと。安心して凝視できたです。

おかしくなったんじゃないぜ。

と、ガニ股で寅さんのようにゆったり歩きながら、自分のこめかみへ向けて人差し指をくるくるとさせながら歌う姿が、目に焼き付いている。

おかしくなったんじゃないぜ。素直になっただけだ。

なんてな。

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