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二人に一人が癌になる

某ガン保険のCMで初めて聞いた時には、そんなにみんな癌になるの?と驚いた。

1/2なんて、聞いただけでも十分にインパクトのある数字だと思う。

でも、癌の専門病院に来て、実際の患者を目の当たりにして、それは現実を伴って更に本当に凄く恐ろしい数なんだと思い知らされた。

初めてこの癌専門病院に来た時には、冗談かと思った。

一階のロビーに溢れる人、人、人…。

空港というか、デパートの催事くらいの感じで人で溢れかえっている。

初診の時の指示で「診察の1時間前には受付して下さい」とあったのも納得。

っていうか、1時間前だと間に合わないよ。

それくらい混み合っていた。

で、ここに居る全員が癌(もしくは癌の疑い)なのかと驚いた。

ここは癌の専門病院なんだから…。


本当にね、みんな癌になります。

何がどうなって日本はこんな事になったのか…。

やっぱり何か理由があるんじゃ無いか…。

思う事は色々とあるけど、とにかくみんな癌になりますよ。

僕らなんか二人が二人、癌だしね。


食事に気をつける。

運動をする。

ストレスをためない。


予防に良いと言われる事を実践する事も大事だけれど、正直、良いと言われること全てを長きに渡ってなんて出来っこ無いとも思うし、やったとしてもやっぱり癌になるようにも思う。

そんな中で備えられる事ってなんだろう?

がん保険に入る?

それも凄く大事だけど、もっと基本的なこと。


悔いなく生きる事だよね。


それに尽きると思う。

悔いなくってのは、求めればどれだけでも求め続けられる事なので、どこからが悔いなくなのかって話はあるけれど、あまり欲張らず、ここで人生が終わったとしても、まぁしょうがないかと思えるあたりまでの悔いなくですかね。

だから、悔いなく生きるって事は、ある日突然、貴方は近いうちに死ぬでしょうと告げられたとしても、動じない心を作る為にとても大切なこと。

そしてこれは、ある程度自分自身の選択でどうにかなるし、他人に制限される事も少なく、しかも、人生において最も大事な事だと思う…当然だけど。


ただし、これは年齢がある程度いっている人であればって事だよね。

僕は今50歳を超えていて、特に何を残した訳でもなく、人に迷惑も沢山かけたとは思うけれど、でも、割と自由に好き勝手に生きて来られたし、大切だと思える人との出会いもあった。

それらの事から考えると、ある程度悔いなく生きて来られたと思っている。

ホント、幸いなことに。

でも、若い人の場合にはこれがなかなか難しいので、若くして癌に罹ってしまった、ましてや亡くなってしまった人は本当に気の毒だと思う…。

死ぬのが怖いという気持ちも理解できる。

その短い人生では、まだまだ全然足りないと思うだろうとね…。


ところで、この病院を受診するタイミングで、今の癌の生存率が発表された。
(↓下の画像から記事にリンクしています↓)

5年、10年後の生存率。

生存率は上がっているし、早期発見なら治る癌も増えているのだとも思う。

でも、僕の膵臓癌のように未だにほぼ治らない癌もあるし、治る癌でたとえ治ったとしても、治療の過程で失うモノがとても多いというのが癌の現実だと思う。

見た目や身体的機能もそうだし、生きがいや、生きる意志そのものを失ってしまう事もある。

実は、初めてこの病院に来た時に、こんなに沢山の人が癌なら、なんとなく自分も大丈夫なんじゃ無いかと錯覚を覚える程に、癌を普通に感じてしまったところがあった。

治療も外来だし、すぐに仕事を辞めないで下さい、仕事を続けながらでも治療は出来ます!なんて事も病院のあちこちに書いてある。

そんな感じだと、ちょっと酷い風邪をひいたくらいのイメージかな?と思いはじめても仕方がない。

でも、実際は全然違う。

個人差はあるにしても、抗がん剤の治療ですら、かなりキツイ。

これが、外科的に切除の手術なんかをしたら、当然あるモノが身体の中から永久に無くなる訳だし、手術での体力の低下もあるだろうし、入院自体も長引くだろう。

また、切除したモノが身体の外側だった場合には、見た目も大きく変わってしまう。

そうなると、なかなか仕事を続けながらっていうのは難しくなる人が多いと思う。

それだけの病欠を、それだけのハンディを許してくれる会社が、今の日本にどれだけあるだろう。

世の中のほとんどの人は、会社とは到底呼べないような、例えば飲食店のお店みたいな所で働いている人も沢山いる。

そんなところが休ませてくれるとは思えないし、例えば、腕や足がなくなったり、顔に大きな傷ができたような見た目の変化を許してくれるとも思えない。

そうなると、やっぱり、一旦辞めるしか無いと思う。

でも、辞めたら新しい次の職場を探せるだろうか。

大きなハンディがあり、治療に伴って休みも多くなるかもしれない癌患者をわざわざ採用してくれるだろうか。

その答えは明らかだ。

勿論、例外はあるとは思うけど、それはあくまで例外。

そして、いくら外来で治療が出来るようになろうが、新しい薬が出来てこようが、癌と戦う薬はやはりとても強い薬で、それを投与する事のリスクってのは無くならない。

初めて抗がん剤の治療を始める時、そういったリスクについて詳しく説明を受けて、なんか少し軽く考え始めていた自分は全く間違っていたのだと思い知らされた。

治療中に薬の副作用で死んでしまう事だってあるのだから。

そして、それは治療費にも。

例えば、膵臓癌を摘出する手術は術後の化学治療も含めると100万円をゆうに超える。

そして、今、僕がその手術が出来るまでに癌を小さくする為に抗がん剤治療を行っているけど、その一回の抗がん剤治療(点滴)にかかる金額は6万円を超えるんだよね。

点滴での治療が一回分だよ、6万円。(その人の治療内容と薬によって変わります。僕の場合。)

命を救う治療なのだから、考えようによっては安いと言えば安い。

でも、これは一回の治療費で、これを人によっては十数回も。

とても、皆んなが皆んな安いと思える金額では無い。

少なくとも僕には安くないし、風邪薬とは全然違う。

そして、そもそも膵臓癌は、抗がん剤治療だけでは治らないのだから。

治るのはあくまで手術のみ。

そして、今は、まぁ、高額医療費控除があるから助かっているけれど、これを未来永劫に国が補助していけるのだろうか。

こんなに癌患者が多いのに…。

絶対に無理でしょう。

話が少しそれたけど、癌はやっぱり全然軽く無いんです。

本当に全く軽い病気じゃないんですよ。


だけど今の日本では二人に一人が癌になるのが現実。

軽い病気では無いものの、身近な病気ではあるという最悪な状況。

こうしている間にも、物凄い数の人が癌の宣告をされていて、それ以降の人生の大きな変更を余儀なくされている。

その変更は、誰でも容易に想像出来るとは思うけど、悪い変更がほとんど。

辛く悲しい事が多い。

生きるのが嫌になる事も多い。


でも、そういう事ばっかりじゃ無いという事も知って欲しい。


僕は、そんな気持ちで、この日記を書いたり、Twitterを始めたりしました。

癌になって良かった!とまでは思わなくとも、癌になったからこそ見つめ直せた事、人生の最後に向けて準備出来る事はあると思う。

少なくとも交通事故で一瞬で死んでしまうよりは、ずっと長い時間が残されている。

なので、この日記やTwitterなどを読んでくれている皆さんにとって、勿論、皆んなが皆んなに有益だなんてことは思っていませんけれど、二人に一人が癌になるという大きな母数の中でなら、何人かには有益な事もあるかも知れないとは思っています。

そんな事で、今後もこの日記やツイートを読んで貰えたらとても嬉しいです。

また、こうして書く事で自分自身も色々と考える事が出来るし、なにより、今はこれが一つの生きがいにもなっているので。

いつもありがとうございます。



あ、最後にもう一度言わせて下さい。

今の日本では二人に一人が癌になる。

それは恐ろしい程の確率で誰もが罹り得る身近な病気だという事を。

脅すつもりではありませんが、これはやっぱり本当の事なんです。

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