【めりけんじゃっぷ】第1話 別れの儀式と菓子箱の匂い
脈が速く感じるのは、国際線のやたらと高い天井に広がる絶妙なリバーブのかかった英語の出発案内のせいではなく、
儀式が間近に迫っていたからだ。
ドラマでよく観る場所。
出発ターミナルへ向かう下りのエスカレーター。
ここは、心配という想いしか頭にないはずなのに、
「行ってらっしゃい」という余裕の大人スキルを必死に繰り出そうとしている母親と互いに顔を見合わせ
「行ってきます」と言える最後の場面。
小学生の頃、予防接種の順番が回ってきた時の様な脈拍感覚の中、僕は母親に背を向けた