プレイヤーは物語の観測者ではない。『7 Days to End with You』感想(ネタバレ無し)

※注意
攻略や物語に関するネタバレは含みませんが、記事後半(感想)に『プレー済みの方に対して問いかける内容』を含みます。
未プレーで、感想に対する先入観を植え付けられたくない方の閲覧は推奨しません。

※注意②
ほぼすべて独自解釈ですので、「おかしな解釈が許せん」「自分の解釈を自分だけで大事にしたい」方は見ない方がいいと思います。貴方が感じ、受け取った全ての物語は、全て正しいでしょう。




ゲームとしての特徴

『ねとらぼ』さんの紹介記事がわかりやすくまとめられているのでそちらもご覧ください。


ゲーム性をざっくり例えるのであれば、広く慣れ親しまれた『脱出ゲーム』に近いのではないでしょうか。主人公はある日見知らぬ家で目覚め、記憶も失っています。
そこに居たのはこれまた見知らぬ女性。彼女の力を借りながら家を探索し、色々な場所を調べて手掛かりを探し、徐々に物語を紐解いていく、というのが大まかな流れです。

この作品の最大の特徴は、『主人公もプレイヤーも、作中の言語が一切分からない』点です。記憶を失っているので主人公が何者かも分からない、言語が理解できないので彼女が何者かも分からない。ただ少なくとも、言語を理解するために彼女が力を貸してくれるのは間違いないようです。

少なくともプレイヤーにとって未知の言語。
辞書機能があり、プレイヤーは自由に単語の意味を登録できます。
登録した単語には自動でルビが振られていく設計。(黒塗りしてます)


否定される時に毎回言われるこれは「ダメ」という意味なのかな?本っていう意味なのは分かるけど、違う本を調べたときに言われる未知の単語は本の特徴を示す形容詞なのかな?などというように、少しずつ言語を紐解いていきます。

そうやってゲームを進めていくにつれ、見えていなかった事実が徐々に明らかになります。主人公と彼女は何者なのか?彼女の目的は何なのか?真相を解明するまで、7日間は何度も繰り返されます。


―感想に対する先入観無しでプレーしたい人はここでBACK―
※攻略・物語に関するネタバレはありません









感想

一言で言うならば、『ずるい』。

決して卑怯だとか姑息だとかいう意味ではないのだけれど、そう表現せざるを得ませんでした。

この世のゲームで「主人公はプレイヤーの分身です!」「あなた自身が主人公!」と謳われている作品は数多くあれど、実際にプレイヤーがどう感じるかにはかなり個人差があるのではないでしょうか。どっぷりと主人公に感情移入する人も居るでしょうし、いやいや自分はあくまで第三者で主人公を見守るだけだよという人も居るでしょう。

なぜ『7 Days to End with You』に対して「ずるい」という言い回しを用いたのか。それはプレイヤーを『プレイヤー本人=物語の観測者』から『主人公=プレイヤー本人』の立場へとすりかえてくるからです。強制的に。あまりにも容易に。

このゲームのジャンルはパズル&ノベルゲームです。プレイヤーは全員「謎解きがしたい」「物語を読んで解明したい」と思ってプレーを開始したはずです。

しかし、「謎解きがしたい」はともかくとして「物語を読んで解明したい」に着手することはプレー開始直後には不可能です。だって物語を読もうにも言語が分からないわけですから。

さて、物語を読むにはまず言語を理解する必要があります。言語を教えてくれるのはヒロイン1人です。プレイヤーはヒロインの一言一言に注視し、何を伝えてくれているのかをじっくりと考えていかなければなりません。

すなわち「どんな物語なのか知りたい」ゆえに「ヒロインが何を言っているのか知りたい」わけです。その過程は「頑張ってヒロインに歩み寄ろうとする」と言い換えることが出来るでしょう。まずは否が応でもプレイヤー全員がヒロインに歩み寄るところから始まるってワケね

ところでプレー済みの方が読んでいるのであればお聞きしたいのですが、プレー中にヒロインが何を言っているのか知りたい理由は本当に「パズルゲームだから」「物語が知りたいから」でしたか?
あるいはこう思いはしませんでしたでしょうか。

「彼女は必死に何かを伝えようとしてくれてるんだな」
「彼女が主人公に対して一生懸命なのが嬉しい」
「あ、彼女って主人公のこと好きなんだな」
「彼女が懸命に伝えてくれていることなのだから、頑張って理解したい」
「もしかして、自分も彼女のことを好きかもしれない」

多かれ少なかれこう思った方は、いつの間にか言語を理解する当初の目的を忘れていたかもしれません。
あなたは「パズルゲームだから」「物語が知りたいから」ではなく、大好きな彼女の言っていることだから一生懸命言語を理解しようとしていたのではありませんか?

そうでしたらおめでとうございます。あなたはもはやこのゲームの観測者ではありません。彼女はプレイヤー自身に語り掛けてくれているし、『主人公=プレイヤー自身』です。
それは単なる作中の主人公への感情移入ではなく、主人公とプレイヤーとの同一視に他なりません。だってあなたはゲームを攻略したいからじゃなくて、彼女のために望んで言語の解読に取り組んだのですから。


私はこのゲームを何周かプレーして、だいたい6~7割くらいの単語を自力で解読しました。ただ結局エンディングの分岐に必要な単語を導き出せず、5周くらいしたところで攻略サイトに手を出しました。そして、エンディングの回収という名目で、そこまで深く考えることなくゲーム内での最後の選択を行いました。
心の底から後悔しました。ギャン泣きしそうになりました。

少なくとも私は、プレーする過程で完全に主人公と自分を同一視していました。であれば、「プレイヤーとしてどうするか」ではなく「この状況で自分が主人公本人だったらどうするか」を基準に選択をしなければならなかったはずです。

物語を紐解いた後もまずは主人公本人として目の前の出来事に向き合い、自分なりの結論を見出して、その後に「ようやくゲームをゲームとして」感じられるようになってから各結末を見たかったなぁと感じています。そこだけが心残りです。

プレイヤーに押し付けるでもなく、第四の壁を破るでもなく、言語の解読という過程を踏ませることによって、知らず知らずのうちにプレイヤー自身と主人公を同一視させてしまう。というか同一視せざるを得ない作品であるというのが『7 Days to End with You』に対する印象でした。

これからプレーする方には、是非ともプレー中に今自分がどんな気持ちなのかを噛みしめながらプレーしてみてほしいと思います。
ゲームを一通りプレーした方も、あの時自分がどんな気持ちで言語の解読に取り組んでいたのか、振り返ってみるのも良いのではないでしょうか?(抜け道使って解いた方も……振り返ってみてください)




まとめ

まとまりそうにありません。
ただこれほどまでに感想に個人差が出るであろうゲームって無いと思うし、自分の感想もかなり偏っていると思うので、プレーした人は感想教えてください。
プレーしてない人もプレーして感想教えてください。
教えてくださいってば


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