地方分権改革で職員の士気は上がったか?

 地方分権一括法によって政治の構図が変わってきている。それまで国の下に位置づけられていた都道府県や市町村が、国と対等の立場に置かれるようになった。

 それによって首長の権限が格段に強まり、全国の自治体には「小型大統領」が誕生した。住民にとっても自分たちに近いところへ権限が降りてきて、参加・発言の機会が増えたのだから幸いのようだが、実はそうとはかぎらない。むしろ中央集権のほうがよかったという場合もある(拙著『個人を幸福にしない日本の組織』第6章)。

 それは職員にとっても同じだ。たしかに地方独自に事業が行えるようになり、仕事のやりがいが増したという面はある。しかし自治体、とりわけ基礎自治体である市町村のなかには、選挙で票を集めることだけを意識して「住民ファースト」を徹底する首長が現れ、職員がその犠牲になっているケースもみられる。職員の待遇、勤務条件を極端に切り下げたり、職員に暴言を浴びせパワハラまがいの扱いをしたりする例もある。実際に自治体職員に話を聞いても、「以前のほうが働きやすかった」という人が少なくない。

 住民へのパフォーマンスはすぐ票に結びつくが、職員の意欲が低下し、その悪影響が住民にまで伝わるにはかなりの時間がかかる。だからこそ、住民は冷静に、かつ長期的な視点から首長の姿勢を評価してほしい。

「個人」の視点から組織、社会などについて感じたことを記しています。