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金曜日一首評:春ものの衣類をたたむわたくしの頭上はるかを母がまたいだ/早坂類

春ものの衣類をたたむわたくしの頭上はるかを母がまたいだ
/早坂類『早坂類自選歌集』


『風の吹く日にベランダにいる』(河出書房新社:1993年)に収録の歌。
春ものの衣類をたたむのは、春のさなかなのか、夏にむかう時期なのか。
たとえば、母との別離を想像する。けどそこに悲嘆はなくて、さわやかな季節に遠くにいる母の気配を感じるといった優しい歌と受け取った。「またいだ」に母のかわいらしいキャラクター性を感じて良い。
「頭上はるか」なんとなくはるか頭上と書きたくなるけど、はるか/頭上と言ったときよりも頭上/はるかのほうが、頭の上に高く高くのびる空間をすみやかにイメージできる感じがする。


以前このnoteで引用した歌、

天国と奇跡、とユキのTシャツに書いてあるのだ(白抜き文字で)
/早坂類

天国の浜辺できみを呼んでいる私の椅子は春のそらいろ
/同

など、"天国"の歌が目立つ。
天国はそこかしこにあって、それはかわいい女友だちみたいな、やさしくてしずかな春のイメージ。
人は死んでゆくということをあたりまえに受け入れ、誰もがゆく場所が明るいところであるように、そういったからりとした死生観が印象に残った。

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