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B型肝炎訴訟(2)

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000002329

市民の声は津軽海峡を越えたか
W辺 R
2006-10-13 00:02

 先にB型肝炎訴訟に関する記事を書いた際、その中で「なぜか患者団体およびその他の市民団体の支援が乏しかったこともあり報道で取り上げられる機会には恵まれなかった」と紹介した。この点について検証したいが、その前に補足情報を提示する。6月16日にこのB型肝炎訴訟の最高裁判決、同21日にこれも前に紹介した薬害C型肝炎(大阪)訴訟の地裁判決が出た際の扱いについて、記者が新聞縮刷版(6月号)の見出し索引を元に記事数を取りまとめた物である。

表 肝炎訴訟に関連する新聞記事件数(各紙縮刷版2006年6月号より)
 ,特にB型,特にC型,共通など
朝日新聞, 6( 5),23(12),4
読売新聞※, 4( 4), 6( 3),0
毎日新聞, 6( 6),17( 9),3
日本経済新聞※, 4( 3),12( 6),0
 ※補足
 読売新聞では主要記事のみ索引に掲載されているため、項目数自体が少ない。
 日本経済新聞の項目数はキーワード別インデックス内「肝炎」の項目に含まれる数。
 カッコ内の記事数は判決直後のもの(B型は17日、C型は21日夕刊~22日)。

 内訳をみると、判決の翌日に1面・社会面・社説・解説等で取り上げられた点は共通であるが、薬害C型肝炎訴訟の場合は地裁判決であったため被告(国・厚労省)側控訴等の続報があったことに加えて、判決前には原告関係者を紹介する連載企画、判決後は各所での抗議行動等が記事になっている。こうした記事がほぼ全くといっていいほどに無かったのである。17年前から続いた訴訟の全てを見ていたわけではないが、この傾向は今に始まったことではないであろう。

 私なりの推論から先に書くと、近年では社会全体の高度化・複雑化もあって、特定の社会問題に対した際に報道機関が持つ取材能力が限定的なものになっているのではないかと考えられる。報道機関の専業記者が、こうした場面では普段から付き合いのある関連団体から貰った資料や紹介された関係者の話を記事にする作業部隊になっているとみているのである。

 具体的な例を挙げると、朝日新聞(縮刷版)では記事索引の分類に【裁判】-[最高裁]というものがあるが、ここに含まれるB型肝炎訴訟の記事は4件である。その一方で、靖国参拝訴訟に関する記事が6件あったりする。【医療】に至っては関連記事が無かった(薬害C型肝炎問題は8件)が、サリドマイド問題に関する記事が4件、エイズ問題に関する記事も2件あった。こうなると、新聞は昨日今日にあったことを取材して記事にするばかりではない、特定の団体や個人によって山分けされている主張の場なのではないかと勘繰りたくもなる。

 ここまでの内容から、次のような疑問が持たれるのではなかろうか。では彼らはなぜ、同じ1989(平成元)年に提訴された薬害エイズ訴訟の原告関係者のように”市民”の広範な支持を得ることが無かったのか。前置きが長くなったが、幾つかの可能性を挙げて検証してみる。

1.距離の壁
 B型肝炎訴訟は札幌単独で提訴されたものであり、2004(平成16)年の高裁判決・上告までの15年間は北海道に閉じ込められていた点。この点は、全国各地で同時展開されている薬害C型肝炎訴訟などとの大きな差ではある。他地域の患者団体関係者などに支援が皆無だった件について尋ねると、まず返ってくる答がこれである。
 しかし、薬害エイズ問題に関する資料などを参照すると(この訴訟自体の資料が少ないこともまた問題である)、当初から札幌単独を前提にしていた訳ではなく、関東地方など他地域にも展開する計画はあったが結局立ち消えていたことが分かる。一見明快ではあるが、根本的な要因とは考えられない。

2.陰謀説
 原告関係者が挙げていた要因としては、このような物もある。長年にわたって、旧厚生省の御用学者らが古くは「肝臓病は酒飲みの病気」、比較的新しいものでは「同じ注射器で複数人が違法薬物を回し射ちしたのが主因」あるいは「肝炎は単なる性感染症」といった主張を繰り返して定着させるに至り、結果として患者の疎外にある程度成功したというものである。
 ただし、この説には不完全な点がある。専ら差別問題を扱う団体との連携を図ればこうした状況を逆手に取ることも充分に出来たと推測されるが、そうした動きがあった形跡は少なくとも表面的にはみられない。一理はあるが若干の無理もある、といった具合であろうか。

3.規模の壁
 詳細は前回の記事を参照して頂ければと思うが、話の規模があまりにも大きく非現実的な印象すら与える点、また実際に追求すれば膨大な規模の国民負担を呼び込みかねない点がある。この点については朝日新聞が薬害C型肝炎(大阪)訴訟地裁判決を受けての記事(6月22日付)の中で短く述べている。当該部分を以下に引用する。

 だが最高裁判決によって、予防接種による肝炎感染者には何らかの救済策づくりが迫られる。B型の感染者と患者について試算すると、最高裁が認めた1人あたり賠償額500万円を支払えば総額3兆5550億円(以下略)

 推定被害者70万人余(B型肝炎ウイルス持続感染者の約半分)とみての単純計算で出た数字がこれである。原告関係者が求めるように全ての感染者を対象とすればさらに倍になる。1人当たりの額は薬害C型肝炎訴訟よりも1桁あまり少ないものであるが、対象人数が極めて多いことからこのようになっている。この数字を見て、日本の総人口で割り算をして、それでも被害者の救済のために声をあげようと考えるような正直者は善良な市民の中にもそうは居ないであろう。単純かつ有力な説ではある。

 こうした可能性について検証した末に、私が到達した考えは――実に身も蓋もないものだったのだが、長くなってきたのでここで一度稿を改めたい。
(続く)

オーマイニュース(日本版)より

前回の記事は以下。

次回の記事は以下。(後日置換します)

このニュースについては初回記事に書いたことがほぼ全てですので割愛します。記事自体について、このシリーズはなかなか読ませるものとなっています(いました)ので個人的には一度目を通してほしいと思っていますが、個人ブログでもピックアップされていないんですよねぇw

インターネット上の情報なんてあっという間に消えてなくなりますよ。ホントに。