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ウグイス嬢は見た(上)──南の島のまつりごと

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003258

当選した仲井真陣営から
編集部沖縄取材班
2006-11-20 07:21

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仲井真弘多氏(中央)の応援に小池百合子内閣総理大臣補佐官(前列右)と浜四津敏子公明党代表代行(前列左)が駆けつけた(12日、那覇市内で)撮影者:編集部沖縄取材班

 19日に投開票が行われた沖縄県知事選では仲井真弘多氏と糸数慶子氏が大接戦を繰り広げた。その両陣営でウグイス嬢を務めた女性たちが見た「もう1つの県知事選」をお伝えする。まずは、当選した仲井真弘多陣営のウグイス嬢に登場してもらおう。

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 知事選が始まっていきなりとんでもない事態が発生しました。告示前まで一緒にやってきたウグイス嬢の仲間が4人も相手陣営に行ってしまったのです。ウグイスは20人ほどしかおらず、ただでさえ足りないのに、5分の1が抜けたのです。この話は陣営内では水面下で広がりました。しかし、表立って話題にしてはいけない雰囲気で、タブーになっています。陣営の幹部たちはぴりぴりしていたようです。

 出て行った4人は相手陣営でやはりウグイス嬢をしているようで、何度も目撃されています。「見たよ。堂々とやってたよ」とあきれていた人もいますし、「許せない」「裏切り者だ」と怒っている人もいました。ただ、私自身はそこまで思えませんでした。だって、いろいろな理由があるのでしょうから。

 4人が抜けた穴埋めでしょう、選挙戦中盤になってカラスボーイが入ってきました。ウグイス嬢の男性版をこう呼ぶそうです。仲井真さんが会長をしていた沖縄電力の関係からの応援だと聞きました。

 街宣車で県内を回ると、首長が保守のところは反応がよかったです。例えば那覇市や浦添市、南城市などではこちらに手を振ってくれました。一方、革新系の首長がいる沖縄市や北谷町は冷ややかなものです。

 仲井真さんのウグイス嬢を引き受けるまでは糸数さんに投票しようと思っていました。だって同じ女性ですから。でも、ウグイスを引き受けてからはどうしても仲井真さんをひいき目に見てしまいました。そもそも経済界で抜群のキャリアを持ち、東大卒の学歴があり、省庁とのパイプは太いと申し分ないのですから。

 ウグイスは体力勝負です。午前6時半に集合して7時に出発、午後8時に終わって事務所に戻り、解散するのは9時半ごろというハードスケジュールでした。みんなヘロヘロです。でも、自分たちが勝った時の光景を見てみたいということでやってきました。ウグイスは素人からベテランまでの寄せ集めですが、選挙戦の中盤になるとチームワークができてきました。

 ただ、ウグイスを見る目は厳しいものがありました。休憩時間にウグイスがかたまってタバコを吸っていたりすると「イメージが悪いから、タバコを吸うな」という電話がかかってきたりしたようです。これは支援者のアドバイスなのかもしれませんが、候補者と同じくらい注目を集めていることを自覚させられました。

 このほか、ウグイスは何でも疑うことを教育されました。例えば、お茶ひとつでも有権者から受け取ることを禁じられました。もしかしたらそれがワイロかもしれないし、毒入りかもしれません。体調が悪くなるものが何か混入されている可能性だってゼロではないということです。それから、問題を起こさないよう十分に気をつけることが求められました。何かあると新聞に載って叩かれ、仲井真さんのイメージが壊れる恐れがあるからです。

 選挙戦後半になっても革新系首長がいる沖縄市と北谷町は相変わらず厳しい情勢だと聞きました。そこで、「沖縄市で勝てれば選挙に勝てる」ということで、沖縄市にずいぶん力を入れているように感じました。

 14日から「3日作戦で行け」と言われました。投票日までの木曜、金曜、土曜の3日間はひたすら「仲井真」の名前を連呼するようにという指示です。政策はもう言いません。名前を連呼して効果があるのかなと不思議に思いました。

 名前といえば仲井真宏多は「なかいま・ひろかず」と読みます。ところがこれをフルネームで呼ぶと「なかいま・いとかず」に聞こえるということで、相手候補である糸数さんを利するわけにはいきませんから、「なかいま」だけでいいということになりました。

 東京で会社員をしている私の友人は「糸数がいい」と言ってきたことがあります。「100年先も沖縄に米軍基地があってはいけないから、米軍基地にはっきりノーと言う糸数さんがいい」というのです。

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仲井真氏の支援者が大勢集まり、街頭演説を見守る。奥は沖縄県庁(12日、那覇市内で)
撮影者:編集部沖縄取材班

 しかし、沖縄で現実を見ている私にはそうは思えません。基地で働いている友人は大勢います。その人たちが失業していいとは思えないのです。沖縄では基地は就職先なのですから。基地は何でも「ノー」と言うのはどうかなと思います。そもそも、私が所属する会社では上司がリストラされつつあります。妻子がいるのに、どうするのだろうと心配になります。沖縄の雇用問題は切実ですから、なおさら仲井真さんに当選してもらいたいと思いました。


 すべてを終えた18日夜、カラオケハウスの1室に40人ほどが集まり、慰労を兼ねた打ち上げがありました。選挙の話は出ません。疲れたねという感じで、おしゃべりをしたり歌ったりしました。糸数陣営側の喜納昌吉さん(参院議員、民主党沖縄県連代表)の「花」も歌いました。「明日の投開票日は事務所にどんな服を着ていけばいいのですか」「ピンク色だけはダメだよ。糸数カラーだから」という冗談も出ていました。幹部のみなさんが1番はじけて楽しんでいました。大変だったのだなと思いました。

 こちらの陣営は糸数さんより1カ月も早く選挙活動をスタートしたそうです。沖縄の政財界では有名ですが、一般への認知度がなかったので、私の目には糸数さんと仲井真さんはずっと並んでいるように見えていました。

 19日夕方、出口調査の結果が劣勢と出たことが分かり、事務所は大騒ぎになりました。しかし、勝つことができました。当確がテレビに出た瞬間みんな大喜びです。目が真っ赤になっていました、

 実は選挙運動期間中、休憩時間にウグイスの多くが求人誌を見ていました。仕事をしたいのに仕事がないので、必死に求人誌で情報を探すのです。「この選挙運動のお手伝いがきっかけで、就職につながる人脈が広がればいいね」などと話し合ったものです。これが沖縄の現実なのです。

 仲井真さんが当選したのは、身近で切実なこの「沖縄の現実」に立ち向かう姿勢を明確に示したからに違いありません。

【関連記事】
ウグイス嬢は見た(下)──南の島のまつりごと
沖縄県知事選・勝敗を分けたのは

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは2件。

2 ブーゲンビリア 11/22 18:49
かず(gomatamago)さん
マスコミは悪質ですね。だからこそオーマイニュースで発信していきたいものですね。

>本土からは、沖縄県民のほとんどが基地反対で被害者意識で凝り固まっているように見える。

確かにその通りだと思います。
ただわたしが知る限りでは、被害者意識ではなく加害者意識なのです。
たとえば、辺野古にあるキャンプシュワブから海兵隊がイラクに行って、ファルージャにもいって、なにをしたか。取材者を近づけなかったので、詳しいことは明らかにされていませんが、街は壊滅しました。この上V字型滑走路を造るというから反対しているのです。
ジュゴンのためばかりではなく、イラクで子どもたちを殺している加害者にさせないでくれと言っているのです。基地はいらないことに変わりはありません。基地はいらないけれど、失業問題もあるという、複雑な思いを理解したいと思います。

1 かず 11/22 09:16
どんな形にしろ応援にかり出されれば、自ずとその候補に共感を覚えてしまうんだよね。しかし、このウグイス嬢は結構冷静に分析しているようだ。
本土からは、沖縄県民のほとんどが基地反対で被害者意識で凝り固まっているように見える。
それは、マスコミの作った悪質なイメージだったってわかったよ。


編集部沖縄取材班さん、こんにちは。珍しいお名前ですね。編集部沖縄取が姓で材班が名でしょうか?(※取材したのはおそらく編集局の堀信記者)

選挙戦を裏で支えてきたスタッフに注目した面白い記事でした。他に類を見ないとまでは言えませんが、通り一遍の選挙戦分析記事よりは読んでいて「へぇ~」と思わされて、こういうのも悪くないと思えました。(下)の記事では相手陣営の様子も取材されているようですね。

仕事をくれるのが良い首長、わかりやすい当選理由なのかもしれません。(削除)