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ウグイス嬢は見た(下)──南の島のまつりごと

引用元URL:http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003272

敗れた糸数陣営から
編集部沖縄取材班
2006-11-20 11:33

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那覇市・新都心での演説は聴衆の人数より報道陣の人数のほうが多かった(12日)
撮影者:編集部沖縄取材班

 大接戦の末敗れた糸数慶子氏の陣営のウグイス嬢が選挙戦を通じて見たこと聞いたこと感じたことを率直に語ってくれた。

 

 6つの党が決めた統一候補でしたから、そのせいか、選挙運動をどこが指揮しているのか私たちには分かりにくかったです。ただ、糸数さんは「救世主」として期待されていましたし、私たちは頑張って応援しようと思いました。

 ウグイス嬢の仕事は大変です。窓を開けて手を振っていると、いくら沖縄でも夜は寒くなります。雨天の日は大変です。車で走ると雨が前から降り込んできます。雨に打たれながら、これで同情票が入るといいなと思ったりします。雨に濡れても頑張るウグイス嬢というのは美談になるのです。

 街宣車で狭い路地に入って手を振っていると、電信柱や後ろから来るバイクに気をつけなければなりません。交通量の多いところは排気ガスがすごいです。こう見えても肉体労働なのです。でも、糸数慶子を勝たせたいという意地があります。だから頑張ることができるのです。

 休憩時間だって休みません。今では携帯メールはみんな当たり前に使いますから、これで友人や知人などに「よろしく」と連絡するのです。ウグイス嬢の多くがそうやって携帯メールでお願いをしてきたようです。メールを送ると「必ず入れる」「糸数さんの演説を聞いたよ」などとたいていは返事が戻ってくるようです。

 仲井真さんの街宣車が糸数選挙対策事務所の前を通る時ウグイスさんたちはこちらにお辞儀をしているのを見たことがあります。教育されているのですね。えらいなぁと感心しました。

 そういえば告示前は仲井真さんの側でウグイス嬢をしていた4人がこっちに来たと聞きました。

 選挙選中盤の新聞報道で「糸数は那覇が弱い」と出たので、それ以降は那覇を集中してきました。まさか那覇で引き離されているとは思っていませんでした。

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支持を訴える街宣車(14日、那覇市内で)
撮影者:編集部沖縄取材班

 かつては県内をまんべんなく回るという感じでしたが、14日ごろから那覇に集中しているように感じます。そのせいか、糸数陣営の街宣車と那覇市内ですれ違う回数が増えたように感じます。遠くでマイクの声が聞こえて、それが近づくとたいていは仲井真陣営の街宣車だったのですが、「あれ、またこっちの街宣車だ」とびっくりして、こっちのマイクのボリュームを落としたりしました。

 那覇集中をする前は政策をけっこう話していました。個々の政党ごとに街宣車を出しているようですから、それぞれのウグイスが「基地反対」や「観光を充実させて景気を向上」「福祉に力を入れる」と自分たちの主張をバラバラでしゃべっているようでした。だから、私は家族から「あなたたちが言っていることとぜんぜん違うことを言っている選挙カーがあるね」と言われたことがあります。選挙戦の全体が見えないので、よく分からないのですが、何だかまとまりに欠けるように感じました。

 さて、那覇集中以降は「慶子慶子慶子」と名前の連呼や「選挙に行きましょう」という呼びかけが増えました。相手側もやはり連呼でした。

 私たちウグイスは若い世代が多いので、この選挙期間中はデートもできません。朝の通勤時間帯に「朝立ち」して訴えるための場所取りも一部のウグイスがやっているくらいです。いい場所は相手陣営もほしいから、陣取り合戦になります。この戦いをウグイスがやるのです。前夜から車を止めて、車内で寝るわけです。「目の下にクマができた」「化粧ののりが悪くなった」という声を聞きました。ウグイスは体を張っているのです。


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那覇市の目抜き通り「国際通り」を歩く糸数慶子氏(中央)と応援にかけつけた辻本清美氏(左)と喜納昌吉氏(右)=14日
撮影者:編集部沖縄取材班

 選挙戦終盤の16日ごろからようやく盛り上がってきた感じがします。選挙戦最終日の18日は完全に那覇集中で動きました。国際通りを相手陣営とすれ違ったのですが、同じ沖縄の人間同士が沖縄をよくしようという思いは同じなのに2つに分かれて争っているのだなと思うと、苦しくて悲しくなりました。

 この日は最後に県庁前広場で打ち上げをしました。慶子さんもステージに上がり、喜納昌吉さん(民主党沖縄県連代表、参院議員)たちと一緒に「花」や「ハイサイおじさん」を大合唱しました。

 県内各地を回ると、家の前にポスターを張ってくれていたり慶子カラーであるピンク色ののぼりを上げていてくれたりするのを見つけることがあります。そんな時は涙が出そうなくらいうれしくなって、声に張りが出ました。とはいえ、当選するかどうかきわどいのではないかと私は思ってきました。だって、支持者が手を振ってくれたり駆け寄ってくれたりするのは当たり前です。そういう最初からの支持者ではなく、新聞も読まずテレビも見ずインターネットもしない無関心な人をどれだけ掘り起こして投票してもらえるかが重要だと思うのです。見えない人の動向が気になっていました。

 投票日の午前11時時点の投票率は高くありませんでした。浮動票の多くはこちらの得票になると思うので、浮動票頼りの糸数陣営にとってはちょっと気がかりな数字でした。投票日の朝に「選挙に行こう」と呼びかける自転車隊が出ました。

 結局負けてしまいました。「6党が結集したのはよかったけれど、それぞれが持つ力をフルに活用したのか疑問だ」という声を聞きました。確かに、たかがウグイスでもおかしいと思うようなバラバラのことをしていたように思います。その最たるものが、6つの党それぞれが訴える内容がバラバラだったことです。「この選挙のリーダーは誰だったのか」という声が選挙後に聞こえてきました。

 糸数慶子はいくつもの選挙を当選してきたので、仲井真さんより知名度があるとみんな思っていたのですが……。選挙の結果、新知事に選ばれたのは仲井真さんです。その仲井真新知事には、糸数慶子に投票した30万9985人の気持ちも大切にしてほしいと思っています。

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沖縄県知事選・勝敗を分けたのは

【編集部から】
 記事の文言を一部差し替えました(2006年11月23日)。

オーマイニュース(日本版)より

※引用文中【画像省略】は筆者が附記


この記事についたコメントは4件。

4 ブーゲンビリア 11/22 11:15
この記事で、負けた理由がよくわかったような気がします。
写真を見ても、わかる気がします。街宣車の前に「女性知事で」とありますが、政策にすべきだったのではないでしょうか。山内さんはどんな気持ちだったでしょうか。
4年後のことを、今から用意周到に考えるべきだと思います。
辻本清美、喜納昌吉の旗が大きく見えますが、こういうのもどうなんでしょうか。

わだっちさんの意見も、だれのことかわかりませんが、あり得るのかと・・・
やはり、誰かがしっかりリーダーシップでまとめないと、勝てませんね。
その役割の人は、むごいようですが、山内さんではなかったでしょうか。
これは、終わりではなく、始まりだとわたしは思っています。
ちなみに旗こそだしませんが、
糸数さんの右側にいる女性は神奈川県議会議員の長谷川くみこさんです。

3 わだっち 11/20 18:54
この企画は面白いです。
糸数陣営としては、あの超有名国会議員の応援はマイナスではないかと思いますが。(疑惑だけなら同情の余地があるのだが、その後の対応があまりにも駄目駄目)

あと沖縄の失業率はすごいらしいですからね。革新は不利です。

2 西野浩史 11/20 18:10
 「県民が選んだ」の部分についてのご指摘はまったくその通りです。私自身かねがねそのように思っていましたので。編集を担当したのは私ですので、これはウグイスさんに相談して修正したいと思います。ありがとうございます。

1 物言う一市民 11/20 16:55
本土に住んでいるために、糸数さんに投票したくても出来ませんでした。ただ、大多数の投票で選ばれた仲井真さんにも、基地についてははっきり東京に物を言ってもらいたいですね。
ただ、オーマイニュースの皆さんに申しておきたいのですが、例えば「県民が選んだ」と言うところは、今後は「県民の大多数が」などと表現してもらいたいですね。これでは変化を期待して相手候補に投票した選挙民には非礼になると考えるからです。


なかなか面白い記事です。とくにここの部分

 結局負けてしまいました。「6党が結集したのはよかったけれど、それぞれが持つ力をフルに活用したのか疑問だ」という声を聞きました。確かに、たかがウグイスでもおかしいと思うようなバラバラのことをしていたように思います。その最たるものが、6つの党それぞれが訴える内容がバラバラだったことです。「この選挙のリーダーは誰だったのか」という声が選挙後に聞こえてきました。

文字通り「烏合の衆」ということが読み取れます。なかなか中にいる人のこういう話は聞く機会がないのでたいへん良い企画だったと思いました。