ブックガイド(35)「白村江」(荒山 徹)

「白村江」(荒山 徹)~ダイナミックな古代の外交戦~

(2017年 12月 25日 「読書記録゛(どくしょきろぐ)」掲載)

兄の百済王によって処刑されかけた悲劇の王子、余豊璋。
才知溢れ、王位継承者でありながら不遇をかこつ新羅王族、金春秋。
冒険心に富み、天皇位簒奪への野心を燃やす倭国豪族、蘇我入鹿。
聖徳太子の大いなる遺志を継ぐために、策略を巡らす葛城皇子。
激動の東アジアの情勢は、4人の男たちの思惑と絡み合って、「白村江の戦い」へとつながっていく…というのがアマゾンの紹介だ。

彼らの群像劇のスタイルを取りつつ、倭国(日本)の「白村江」の敗戦が何だったのかという仮説が語られる。
一読して気づかされるのが、当時の半島状況と現代の半島情勢の酷似具合

高句麗=北朝鮮

唐=中華人民共和国

新羅=韓国右派

百済=韓国従北派

って関係性とよく似てるのだ。

彼らが、国防と政権安定のためにどの国と同盟をするかといった外交戦を、白村江の開戦20年前から追った物語である。
この外交戦争、政権抗争の手に汗握るダイナミックな物語だ。どのキャラも素晴らしく際立っている。
実は夜勤明けで本来ならすぐ眠ってしまう私が、眠ることも能わずに最後まで読み通してしまった。
こんな時代歴史小説は今までなかった。「柳生もの」の軽妙な荒山徹も好きだが、こういった骨太な荒山徹もいいなあと、改めて惚れ直したしだい。

白村江 (PHP文芸文庫) | 荒山 徹 |本 | 通販 | Amazon

(2023/08/24 追記)
作者・荒山徹さんは、古代や戦国時代などを描いていても、そこに必ず現代に通じる問題をはらんだ作品を書く。「歴史は繰り返す」というが、どの時代であれ、どの国であれ、人の気持ちは変わらない。うれしければ笑い、感しければ涙を流す。喜怒哀楽の感情が変わらないのだから、人とはどの時代でも似たようなことを繰り返すのだ。
そんなことに気づかされる作品である。
歴史・時代小説ベスト10(週刊朝日/2017年)第1位

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