創作エッセイ(56)博物館明治村

 先日、記事を書いた野外民族博物館リトルワールドと同じ犬山市にある。
 リトルワールドより古く、1965年の開村である。実は私の自宅から車で20分弱の場所にある。犬山市で時給仕事に就いていた59歳の時から村民登録という年間パスを持っていて、月に4回ほど園内を散策している。
 今回はこの博物館明治村と自身の小説作品の関係について。

作品の脳内ロケ地

 入鹿池の畔、100万㎡の敷地に明治時代の建築物を移築展示し、町並みの再現から、路面電車と蒸気機関車の運行まで再現している。母体が名鉄(名古屋鉄道)ならではのテーマパークである。おかげで、園内の随所で映画やドラマのロケが行われている。
 路面電車に乗っているシーンで、都会にもかかわらず窓の外に木立や池が見えた場合、「お、明治村でロケしたのかな」と気づいたりする。
 頻繁に訪問してる私も、よくロケ現場に出くわしている。身近なところでは「明治東京恋伽」(2019)
 朝ドラ「半分青い」「まんぷく」の時は、ロケのスタッフがバイト先のホテルに泊まってた。特に「まんぷく」はドラマの中で帝国ホテルの玄関内にフロントが設けられていて、自分のバイト業務と重なって強く印象に残っている。
 実は、私自身、自分の作品の舞台となる建物のイメージ元として、このパークを頻繁に利用している。
例)
北里研究所本館。これは、「不死の宴 第一部終戦編」の陸軍登戸研究所諏訪分室のイメージ元になっている。他にも歩兵第六連隊兵舎とか日本赤十字社中央病院病棟なども作品内の随所でイメージ元にさせていただいた。
シアトル日系福音教会。「不死の宴 第二部北米編」の参考に色々な印象をインプットできた。

名作を思い出す場

 自分を感動させた各種物語を想起する文人心をそそる場所である。
例)
 第四高等学校武術道場無声堂。ここは井上靖が「北の海」に描いた場所である。主人公・洪作が四高柔道部員に誘われて金沢で高専柔道に出会うのだが、その場所こそこの無声堂。
 この作品で武道をやろうと思い大学で少林寺拳法を始めてしまった私にとっての聖地でもある。この高専柔道の後継である七帝柔道を描いた「七帝柔道記」の増田俊也さんも「北の湖」を読んで進学先を北大に決めたと書いている。増田さんは私より七歳お若いのだが、同じ高校のOBだったというご縁があるけど向こうはご存じなかろうなあ。

あの作品のここも明治村だったのか

 そんな場所なのである。実際のロケだけでなく、スタッフと思しき人たちのロケハンにも出くわす。

 男女三人組がカメラとノートを手に歩きながら、神戸から移築された異人邸の前で、
「カメラ、この位置で、あっちからリムジンが、こうフレームインしてくるの、どう?」
「いいっすね、それ」
 みたいな会話をしてる。
 変わり種だと、漫画「ゴールデン・カムイ」では監獄のシーンに金沢監獄中央監視所、サハリンのシーンで品川灯台が出てくる。アニメとのタイアップイベントもしていた。

時間旅行が出来る場所

 リトルワールドのうたい文句は小さな世界旅行なのだが、さしずめこの明治村は150年前への時間旅行である。
 思えば私(今66歳)の少年時代(1968年)に、「明治100年記念式典」があり世間に明治ブームが起きた。来年2025年に「昭和100年」を迎え、すでに以前から世間は昭和レトロがブームである。
 長生きも悪くねえなあと思っている。
博物館明治村
(追記)
 村内では衣装も借りることが出来るので、村内のそこここを、書生さんやハイカラさんが通っている。これも楽しい気分を盛り上げてくれる。

文中で言及した自作はこちら。
「不死の宴 第一部終戦編」
「不死の宴 第二部北米編」


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