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【FtM・ヤンヒー】タイ・バンコク渡航記(SRS &胸オペ体験談)

はじめに

この度2023年2月下旬に、タイのバンコクにある「ヤンヒー総合病院」にてSRS (腹腔鏡手術による子宮卵巣摘出)と胸オペ(U字式による乳房切除)を行いました。その際に行ったこと、起きたことや感じたことについて、自分のための記録も兼ねて、こちらにまとめたいと思います。日記的な意味も込めて書きますので、特に「手術するまで」あたりからは自分語り的であまり参考にならない記述も含まれますが、ご容赦ください。

かかった費用と日数

費用は手術代、アテンド代(G-pitさん)、検査費(婦人科、整形外科、精神科、麻酔科による手術前検診とPCR検査)など諸々込で125万円程度、日数としては入院4泊+ホテル4泊+飛行機夜行便で計8泊10日かかりました。

治療歴と身体的スペック

手術当時26歳、ホルモン注射(エナルモンデポーorテストステロンデポー250mg 1A/3w)を3年8ヶ月程継続、中肉中背(165cm60kgくらい)で既往歴はほぼないような状態での手術でした。

手術を決意するまで

手術を受けること自体は、FtMを自認したころ(手術の7、8年前)から希望していたことではありましたが、金銭的に厳しい、時間が取れないなどの理由で見送っていました。
また、ホルモン注射のおかげで見た目としては男性に見えるようになったことで、日常生活では性別欄が女性であるために起こるちょっとした不都合(健康診断時やら住宅契約時やら)以外はあまり困っていなかったことなどから、二の足を踏んでいたような状態でした。
しかし、会社を休職し出したこと、それにより転職を考え始め、次の職場では戸籍から男性として働きたいなという気持ちが強くあったこと、ある程度の貯金ができていたこと、そしてパートナー(女性)ができて結婚を考え始めたことなどが重なり、手術を決意しました。
手術を「SRSと胸オペを同時」に「タイ」で行うことは、学生時代に出会った年上のFtM当事者で既に戸籍変更までされていた方に勧められたことから、かねてよりそうしたいなと考えておりました。僕自身でもさまざま調べ、症例数やコスパの面を考えてやはり同時にタイで!との決意を固めました。終わった今、そうして良かったなというのが率直な感想です。
初めての手術&ひとりでの海外渡航ということでアテンドさんを利用することは最初から決めておりましたが、どこにお任せするかについては決めておりませんでした。これも、インターネットでさまざま調べたり、以前にアテンドさんを利用してSRSを行った友人に聞いたりして検討しましたが、最終的には、コスト面と知名度を考えてG-pitさんに依頼しました。非常に丁寧にご対応いただけたため満足しています。

渡航するまで

アテンド会社への連絡

G-pitさんに2022年12月頃に翌年2月下旬に手術を受けたいということでご連絡をし、希望通り予約が取れました。渡航まではメールとLINEでのやりとりになりました。細かい流れは下記です。

  1. 2022年12月頃、G-pitさん予約フォームより予約

  2. 予約内容の確認メールがくるため、確認後振り込みで入金

    1. 頭金(全額の5分の1)の入金確認後、飛行機チケットが手配される(このとき全額入金しても問題ないようです)

    2. 全額入金期限は渡航の1ヶ月前まで

  3. 航空機のチケットのPDFが添付された、注意事項など記載のメールがくる(僕の場合はジップエアだったためチェックイン用のコード付きのページファイルでした)

  4. 渡航2日前にLINEで現地スタッフ(メール対応のスタッフとは別)から空港での集合場所などの連絡がくる

上記以外にも、質問があればメールまたはLINEで答えてもらえました。僕は飲んでいる薬のことや現地でのSIMカード調達について質問しました。メールでの返答が遅いという口コミが見られましたが、僕の場合は翌日までには答えていただけたため、特に遅いという印象は抱きませんでした。

持ち物調達

渡航するにあたり、持ち物を検討&調達しましたが、実際に持っていったものは下記です。

  1. 衣服

    1. Tシャツ×3

    2. 下着×4

    3. ハーフパンツ×2

    4. カーディガン×1(外は一年中暑いが、室内は空調がきつくて冷えている場合がある&退院後の観光時、仏閣に入るには長袖長ズボンの必要がある)

  2. タオル(一応備え付けのものはある)

  3. 延長コード(特に病室などは枕元にコンセントがない)

  4. 洗濯セット(折り畳みハンガー、物干し紐)

  5. 冷えピタ(術後やたらと暑くなったりするためあると良い)

  6. サンダル(基本は夏の気温のためクロックス等あると便利)

  7. サコッシュ(胸オペ後リュックだときつい&貴重品を入れて持ち歩く際盗難防止になる)

  8. ビニール袋(洗濯物入れなど何かと重宝)

  9. プロテインバー(さっと食べられるようなものがあると何かと便利)

  10. 常備薬(病院で痛み止め等はもらえるがあると安心)

これらは全て持っていって良かったと思っているものですが、これら以外で調達した方が良かったなと思うものは下記です。

  1. 耳栓(結構車の音がうるさい部屋がある)

  2. 飛行機用枕(フライト6時間強は思ったより長い)

  3. シャワーシート(胸オペするとしばらく上半身はシャワーできないため)

※持ち物番外編

Netflixアカウント(と日本エリアVPN契約)
 → 僕はYoutube狂であったため、あまり必要を感じませんでしたが、ひとり海外は結構心細い&G-pitさんが取ってくださったホテルの部屋のテレビで自分のアカウント使用して見られるのであると良いと思います

いつも使ってる石鹸やシャンプー
 → 僕は元々こだわりがない&手術に向けてベリーショートにしたりしたので気になりませんでしたが、やはり石鹸等の質は日本には敵わないですので、気になる方は持っていく方がいいと思います

申請等の準備

G-pitさんからのメールにも再三記載がありますが、絶対に必要なものとして、下記があります。

  1. 英文の推薦状(パスポート名と同じもの)

  2. パスポート(有効期限が6ヶ月以上あるもの)

  3. ワクチンパスポート(ワクチン未接種の場合は出国72時間前の英文陰性証明書)

これらのうち、パスポートは既にありましたので、今回申請などして入手したのは、推薦状とワクチンパスポートです。
推薦状は、もともと診断をいただいていたジェンダークリニックを再度受診→セカンドのクリニックも再度受診→英文の診断書作成→推薦状作成といった流れで書いていただきました。僕の場合は渡航1ヶ月半前に受診したため、結構ギリギリになってしまい焦る羽目になったので、早めの取得をおすすめします。
ワクチンパスポートについては、マイナンバーカードがあればアプリからでも入手できるようですが、僕は戸籍変更後に作ろうと思っており無かったため、郵送で申請しました。(各自治体に申請書と返信用封筒を郵送すれば1週間から2週間程度で届くようです。僕の場合は1週間程で届きました)

注意点など

  • 手術前後2週間は、執刀医からの処方薬以外は断薬になるため、他の病院から定期的に処方薬をもらって服薬している方は、そのお医者さんに英文の説明書を書いてもらい、タイの病院の先生に確認してもらう必要があります

  • チェックイン時、タイでの住所を求められたので、入院する病院の住所を控えておくとスムーズかと思います

  • 気温程暑くない&室内は基本冷房ガンガンのため、寒がりな方は、長袖も持っていった方が良いかと思います

  • 空港でもSIMカードは入手できますが、セブンイレブンで買う方が安いのでおすすめです(空港、病院の近くなど至る所に24時間営業のセブンイレブンがあるため、深夜に到着した場合などは利用するといいです)

    • セブンイレブンでの相場は10日間で250B (1000円程度)くらい

    • 僕が購入したのは true5G という会社のもので、10日間無制限でなんと79Bでした、速度は8Mbpsしか出ませんが、YoutubeとTwitterとLINE (電話含む)しかしない方であれば、特に問題なく使用できるレベルです

手術するまで

1日目

7時間弱程のフライトでスワンナプーム空港に到着しました。アテンドさんと合流し、車でヤンヒー病院へ。ヤンヒー病院近くにセブンがあり、そこで夕飯とSIMカードを調達できました。(到着が深夜12時頃だったため、24時間営業のセブンが病院の目と鼻の先にあるのは助かった)
初日夜は病院内のホテルの部屋(10階の部屋。以前は10階が外国人専用の病室の階だったようだが9階に移動したようである)に宿泊しました。
トイレのやり方(横についているシャワーみたいので手動ウォシュレットの上、ティッシュを流さず捨てる)と、風呂シャワーのぬるさに戸惑いつつ(タイの文化らしい、熱いシャワーは浴びないんだとか)就寝。コンセントが枕元に無いため延長コードで繋ぐなどしました。

2日目(手術前検診)

朝9時から手術前検診が開始。朝ご飯は出ないので軽く用意しておくと良いです。(僕は日本から持って行ったプロテインバーを食べました)
アテンドさんに連れられて病院内のさまざまなカウンターに行きサインを書いたり、問診票に答えたりしました。このとき、英文推薦書とパスポートとワクチンパスポートを求められるのですぐ出せるようにしておくとスムーズです。精神科からの長めの問診票の中にバームテストのようなもの?がいくつかあって面白かったです。
病院食について和食か洋食かタイ料理で選べると言われ、せっかくならとタイ料理を選びました。(タイ料理大好きマンとしては実際美味しかった)

診察などの順番は時々によって違うようですが、内容はだいたい下記でした。結果は、何か問題があった場合は連絡があるとのことで、僕の場合は問題なかったのか手術まで特に何も言われませんでした。

  • PCR検査

  • HIV検査

  • 身長体重測定

  • 血圧測定

  • 婦人科内診(僕はたまたま手術直前にやることになったのでこの時はしなかった、下腹部に印だけ書かれました)

  • 胸部の検査(触診と写真を撮られるなど)

  • 各科(婦人科、整形外科、精神科、麻酔科)の書類の記入及び診察

空き時間にお昼ご飯を屋台で食べました。アテンドさんに勧めてもらったガパオライスとスムージー、しめて100B(400円程)安い!!

ヤンヒー病院目の前の屋台で食べたアテンドさんオススメのガパオライスと、マンゴースムージー。
めちゃくちゃ美味しい。

途中、昼過ぎにアテンドさんに連れられ、昨日全く同じ術式で手術したという方(Aさんとします)のお部屋へ。まだ辛そうでしたが、朝よりはだいぶマシとおっしゃっていました。早朝が一番辛かったとのこと。これが明後日の自分の姿かと思い戦々恐々としつつ、退散しました。

16時頃、ようやく検診が終了し、病院内ホテルの部屋から病室に移動。ホテルの部屋とベッド以外はほぼ同じで、個室な上にかなり広く、9階なために眺めも良かったです。

各病室に一つ、バルコニー(出られないが)があるようで驚き。
かなり広くてはしゃぐ。この時はまだ半分観光気分である。

ベッドの上でぼんやりしていると、看護師さんがやってきて、手の甲から採血をされました。これが、まぁまぁ痛い。(針は点滴のため差しっぱなしで終了)
その後、これから買えなくなるだろうと思いお菓子をセブンで買うなどしましたが、手術後、食欲などなくなるためこれは要らなかったです。慣れないことをしたからか、眠くて仕方がなく、この日は9時には就寝しました。この時、睡眠導入剤と思しきものを手渡されたのもあり、すんなり寝ることができました。

3日目(手術)

※少し汚い話なので注意
朝方に1度血圧と排尿排便回数のチェックに看護師さんが来て少し起きるなどしましたが、寝るのが早かったためそこそこすっきりと起床。(この後も、退院まで数時間ごとに、血圧チェックと回数チェックが挟まることとなる)
朝6時前にまた看護師さんがgood morning‼︎と爽やかにやってきて、剃毛と浣腸が開始されました。剃毛はなぜか手術箇所だけでなく、腋やお腹やVIOや内腿まで(この時は理由がわからなかったがこの後1週間は風呂に入れないので衛生面を考えてのことだったのかななどと思っている)剃ってくれました。VIOをバリカンみたいなやつで剃るのでちょいちょい痛いですが、そこは我慢。浣腸は横向きに寝かされて肛門に細い管を差し込まれ、液体を注入されました。2分間深呼吸をして待つよう促され、下痢のような腹の痛みに耐えつつ待って、すぐさまトイレへ。その後、手渡された消毒液(ピンクでヌルヌル)で身体を洗い、渡された手術着に着替えました。終わったら看護師を呼べといわれるので呼ぶと、採血と昨日さしっぱの針から点滴が開始されました。後はベッドで待機となったため、そのまま寝てしまいました。

途中、昨日できていなかった婦人科内診が行われ、指を突っ込まれて軽くうめいてしまいました。まぁまぁ痛かったですが、当然手慣れており一瞬で終了しました。その後、よくわからない夢をいくつも見つつ、10時ごろ再度起床しました。いらした看護師さんから手術の流れを説明をされ、手術自体は12時からで、11時半に出発と聞かされました。また、麻酔は10時間前後効くように打ち、目が覚めた後、1時間程回復室で待機ののち、またこの病室に戻ってくるとのことでした。(片言の翻訳なのでもしかしたら僕が勘違いしている可能性はあるが大体そんなようなことを言われた)実際は、手術は12時半からとなり、目が覚めたのは約8時間後でしたが、まぁだいたいそのくらいと思って問題ないかと思います。

11時半前に病室を出発しました。アテンドさんも来てくれて少し安心したのも束の間ベッドに寝かされて手術室へと運ばれました。エレベーターなんかにも乗るので三半規管の弱い僕はちょっと酔ってしまいました。手術室のあるブースの前でアテンドさんとはバイバイとなり、緊張は頂点に。この時、最終確認ということか、何度も今日なんの手術をするのか看護師さんに英語で聞かれましたが、いまいち何を受け答えしたのかよく覚えていません。
それから手術室前の部屋でなんと1時間近く寝たまま待たされましたが、これが絶妙に寒い。かなり暑がりの僕でも寒かったので、寒がりの方は心しておいた方が良いかもです。
待ちくたびれて緊張が逆にほぐれてきたところで手術室に移動となりました。「準備してるなー、うん?これ麻酔か?違うな心拍測ってるだけだなぁ」なんて思っていたその後の記憶がありません。なんと、準備中にもう意識を失ったようでした。

退院するまで

3〜4日目(手術直後)

全身麻酔は初めてで、一瞬で知らない天井!みたいのを想定してましたが、就寝時と似た感じでさまざま夢らしきものを見て、意識が戻りました。その時の自分の状態としては、胸元は大きなバンドのようなもので締め上げられており、脇にはドレーンが、手には点滴が、尿道にはカテーテルが刺さっている、といった感じでした。
戻ってすぐは、痛み止めのせいか胸元の痛みが少しあるだけで痛みは弱く、それよりも強い吐き気があり、我慢できずそのまま吐いてしまいました。手早く拭いてくれる看護師さん。
そのままオペ前に説明があった通り、1時間弱程回復室で待機となりました。時間を聞くと夜8時半とのことでしたので、8時間程眠っていたことになりますね。
それから数時間、強い吐き気に悩まされつつ、麻酔が残っているのか手足も上げられないような状態で寝転がっていました。だんだんと胸部の痛みが強く出てきましたが、しばらくは吐き気の方がキツかったです。何度かナースコールをして吐いてしまいました。(一度は、耐えられずベッドの上に吐いてしまい、看護師さんにご迷惑をかけるなど……)

早朝(術後8時間程)にかけて下腹部の痛みが強く出てきました。とてもではないですが液晶を長くみていられないため、何も見られず、そもそも満足に体を動かせずちゃんとスマホが取れないため、ただまんじりともせず、時間が過ぎるのを待ちました。この時なぜだか異常に暑く、看護師さんに言って、日本から持参した冷えピタを取ってもらい、付けてしのぎました。
1時間毎くらいに看護師さんが血圧を測りにきたり、様子を見にきたり、点滴や薬を変えてくれたりしました、吐き気どめで少しずつ楽になってきて(それでも、液晶が見られる程では無かったが)10分〜30分程の睡眠がようやく摂れるようになりました。
人によって違うとは思いますが、辛かったのは手術直後から5時間程の強い吐き気と胸痛、術後10時間後くらいから8時間程の下腹痛だったかと思います。また吐き気が術後20時間後くらいまで続いたのでそれもキツかったです、僕の場合はものすごく痛みにピークがあるというよりは、胸、下腹部と順々にきた感じでした。吐き気はかなり強く出ましたが、多分痛みは弱い方だったのではないかと思います。
気を紛らわせようと久石譲を聞き出したら、めちゃくちゃに泣いてしまい、思っている以上に内心辛いのだなと思い、打たれ弱さに少し悲しくなるなどしました。
お昼ご飯としてスープが出ましたが、とても食べる気にならず、ほとんど残してしまいました。

コーンスープと思しきものと、チョコチップアイスと、甘いお茶。
スープとアイスに関しては味は美味しかった。

昼食が出た後は、薬が経口の錠剤と液剤に変わりました。(ガス抜きの薬と抗生物質と痛み止め)
正午ごろ(術後16時間程)に、前述のAさんがお見舞いにいらしてくださいました。今日退院だと言うのでお互いおめでとうと言い合い、ベッドに寝たまま見送りました。元気そうな姿に、明後日にはあのくらい元気になれるのかなと、かなり励まされました。

※少し汚い話なので注意
時間は前後しますが、昼前(術後15時間後程)にお腹の中のガスを出す坐薬を入れられると下痢の時のような下腹痛が重なってきて、それが地味に辛かったです。カテーテルが外れるまでに一度、早く自分でトイレに行きたいからカテーテルを早く外して欲しいと看護師さんに訴えましたがNO‼︎と返されガックリ、経過時間で外すのだろうしそりゃそうではありますね。
ベッドの上で強い腹痛ダブルパンチの中、大便をしなければならないのは、身体的にも精神的にも結構な苦痛でした(陣痛と出産なんてこの無限倍大変と思うので経産婦さんはマジですごい……)

最近書かれていた他の方のnoteでも同じような記述がありましたが、振り返ると術後20時間くらいがヤマでした(アテンドさんに聞くとかなり個人差が大きいようですので参考にはならないかもしれませんが)
ちょうどその術後20時間で尿道カテーテルが外され、やっと自由の身に。ワンツースリー!の掛け声で外され、まぁまぁ痛かったですが、やはりこれも一瞬でした。カテーテルが取れると歩けるのですぐさまトイレへ!(成人としての尊厳を奪還!)

この頃には痛みもだいぶマシになってきて吐き気もかなり薄まっておりました。この後、また夕食が到着し、三割程度しか食べられませんでしたが、まともに経口摂取できるようになってとても嬉しかったです。また、少しずつ精神的な余裕も出てきました。やはり、自分で自分のことがある程度できるというのは大事なことなんだなと噛み締めました。
ただ、だいぶ楽にはなったとはいえ、彼女と長電話などしていると、だんだんと痛み等々が辛くなってきてしまいます。体力が常に赤ゲージでピコンピコン言っている感じでした。
昼頃にいらしたアテンドさんが置いていってくれたPCで懐かしのドラマ(MR.BRAINというキムタク主演のドラマ、皆さんはご存知ですか?)をぼんやりと見ているうちに、夜になりました。その間も看護師さんがちょくちょく血圧のチェックや傷口のチェックなどをしてくれ、経過は良好とのことで一安心でした。その日は寝付けず、少し夜更かし気味で就寝しました。(Youtubeの動画を聞き流ししているうちに寝ていました……Kevin's English RoomというYoutuberの動画です、これはご存知の方も多いのでは?)
それまでは吐き気や痛みで気が付いていませんでしたが、ずっとザッピングのような耳鳴りがしていました、ストレスということなのか、人体は正直ですね。

5日目

翌朝になるとより痛みはひき、体も動かしやすくなりました。(と言っても少し動かしただけで息は上がるし、起き上がるのにも歩くのにも痛みが結構出るが、寝転がっている分にはかなりマシになる。とてもありがたい)

朝ごはんはお粥とやさしいお味の焼売みたいなものとフルーツ。お粥以外は完食し、お粥は半分くらい完食したところでギブアップでした。やはり食欲は戻っていないらしい……(そもそも結構ボリュームがあるのもあるが)

ちょくちょくわざと歩いたり、YouTubeを見たり、帰国時に必要な「Tokyo Visit Web」というものを登録(アテンドさんからご案内いただいたもの)したりして暇を潰しました。

12時頃にお昼ご飯、13時過ぎにおやつ、17時にお夕飯と、ごはんラッシュが到来。味は美味しかったですが、食べ切れる量ではなく大半残してしまい罪悪感がありました。しかし、のちに別の入院患者の方に話を聞くと、どっこいどっこいな状態のようだったので、みんなそんなもんみたいでした。どこかで聞いたことのある言説でしたが、タイ人って本当にずっと食べてるんだな〜などと思いました。毎回のようにドラゴンフルーツとパパイヤ(食べてる時は何かわからなかったが後でアテンドさんに教えてもらった、オレンジ色で硬いメロンとマンゴーの中間みたいな味だった)が出てくるため、もう一生分食べたのではないかと思う程でした。

ミニワッフルとセブンでも売っていたゴマ飲料(と思しきもの)、豆乳のような味。
米はお粥なのにおかずは揚げ物という矛盾、味のないお粥ってなかなか食いづらい。
そして毎回ついてくるナミナミカットのフルーツ、独特である。

アテンドさんより明日の13時に退院と聞かされ、ならばと、一応動く練習としてちょっとしたことではナースコールせずワザと自分で行うようにしたりなどし始めました。(少しベッド動かすとか、取りづらい場所に落としたリモコンを拾うとか)
確かに痛いですし、絶対に安静にするべきではありますが、この後の体力の低下度を考えると、少しずつ動いていたのは正解だったかなと思っています。

痛みはかなり引いているとはいえ、寝返りが全く打てない、少しでも動くと傷が痛い、脇の辺りから胸にドレーンが刺さっているという状態からあまりよく寝られず、悪夢に近いような夢ばかり見て、なかなか辛かったです。(これは緩和されつつも、ここから帰国前日までそんな感じだった)

帰国するまで

6日目(退院)

13時退院からのホテル直行ということで(次の3日後の通院まで病院近くのホテルに滞在する)ガーゼの張り替え等々を看護師さんにしてもらいました。この時、下腹部については、大きな絆創膏のような防水テープを貼ってくださり、下半身だけはシャワーしても良いと言われました。術後のケアについては同じヤンヒーでも先生によって方針が結構違うらしく、張り替えない先生も居るとのことで、以前少し話した同じ術式の方は張り替えなかったと聞きました。ただし、胸のバンドは後1ヶ月程しなければならないというのはガモンでも共通のようでした。

この時初めて患部を直接見ましたが、こんなに小さな切り込みで一体どうやって乳腺だの子宮卵巣だの取り出すのだろうかと疑問に思うレベルで傷口が小さくて驚きました。胸はまだ全体に腫れがあり、触られても押されている感覚はありましたが、触れている感覚はない不思議な感じでした。(これは帰国後しばらくは同じような感じです)

出してもらった最後の病院食を食べて、荷物を詰めてホテルへ移動しました。(看護師さんと写真をとるなどしました、みんなノリが若い……)

ホテルに荷物を置いた後、アテンドさんに連れていただいて両替&近くのデパートへ。デパートは日本で言う高島屋のフードコート付きバージョンみたいな感じでピッカピカでした。帰国までに何度か行きましたが、タイ語どころか英語も達者でない僕は、最後までこのデパートの名前を覚えられないままでした……

色々案内してもらい、下の階にフードコートと、お土産を買えそうな食品系のフロアがあると知ることができましたが、しばらく歩いただけで貧血のせいなのかフラフラになってしまい(これがこの後数日は微妙に後を引くが、この日は歩くのが辛いレベルでフラフラだった)さっさとホテルへ引き上げました。

ホテル近くのセブンイレブンに行って鉄分の豊富そうなもの(Fe ironなどと書かれたドリンクと10円の激安バナナ、ドライプルーン)を調達して食べて休憩したのち、またデパートへ赴いて鉄分サプリを購入しました。(80Bくらいだった、1回1、2錠の薬100錠で約320円はすごい)

この頃から食欲は出てきてほぼ普段通り食べられるようになりました。夕飯に、アテンドさんにおすすめされた台湾版の巻き寿司みたいなものとトムヤムクンヌードルを食べました。これがとても美味しい!デパートで買っているので割高なのでしょうが、しめて500円程度なので、物価の安さが窺えました。

お腹もいっぱいになり、シャワーもどうにか下半身だけ浴びて(上半身のシャワーが許されたのは帰国後からでした)寝ようとしましたが、空調が故障しているのか絶妙に暑い。
きちんとシャワーできないこともあり、汗はあまりかかないほうがいいと言われていたため、レセプションに事情を説明したら、夜中にも関わらずすぐ対応してくださり、部屋を交換してくれました。(少し広い部屋にしてもらえてラッキーでしたが、逆に広すぎてより寂しくなってしまう……)

7日目

ホテルは朝食付きだったので、入院中にアテンドさん経由で紹介していただいた、同年代で同じ日に同じ手術をガモンで受けていた方(Bさんとします)と一緒に食べることにしました。この方が本当に良い方で、また彼女との関係性やら仕事の状況やらの境遇も似ていたこともありすぐ意気投合しました。FtMあるあるな質問を一通り交わしつつ、いろんな不安を言い合えたのは本当に心強かったですので、同年代の方とは繋がれるなら繋がった方が良いかなと僕は思います。
この日の夕方頃、用を足す際に下腹部に強めに力を入れてしまったところ、多い日の生理程度の出血があり、戸惑いました。すぐにアテンドさんにご連絡したところ、体調に問題がないなら、緊急性は無さそう(術後の出血はよくあることのようでした)なので、次の診察の時に先生にお話ししましょうとのことで、とても安心しました。
この件以外にも、細かい質問についてもLINEですぐに答えてくださったり、初海外&手術の心細い身としてはとても安心感があって助かりました。慣れている方であれば、もちろん自己手配で問題ないと思いますが、僕は本当にアテンドさんを頼んで良かったなと心から思っています。
夜にはアテンドさんに、前述のAさんと、Bさんと一緒に夜市へ連れていただきました。異国情緒満載な屋台に、立ち並ぶお洒落なバー、いかにも夜市といった雰囲気でとても楽しかったです。夕食は夜市の近くのタイ料理レストランで変わったサラダやチキン、スープ、チャーハンなどいろいろお腹いっぱい食べて、大満足で帰宅しました。

おいそれとは入りづらいレベルでオシャレなバーたち。
写真が下手で申し訳ないが、どれも日本にあるものとは一味違って美味しい。
左のとうもろこしのサラダが独特で甘酸っぱくとても美味しい。

8日目

この日は特に予定もなかったので、Bさんとの朝食ののち、ひとりで「ワット・ポー」へ出向きました。
同じ仏教のお寺は日本にももちろんたくさんあるわけですが、やはり色味から雰囲気から何もかも違って、でも仏像はどこか似通っていて、非常に面白かったです。
まだまだ体が本調子でないのと、なかなかに暑かったのもあって、倒れないよう巡るので精一杯ではありましたが、ひとり全く知らない異国の土地を歩くという経験はなかなか良かったですし、楽しかったです。

鮮やかな色彩のこのような塔がいくつもある。
ワット・ポーで最も有名らしい「涅槃像」
確かにすさまじい存在感である。

普段は彼女か、シェアハウスしている友人と一緒にいることが多いせいか、ホテルでひとりでいなければならない状態はなかなかに孤独感が強く、寂しさを感じました。あまり旅行などで帰りたいと思うタイプの人間ではないし、ひとり旅も好きな性質ではありましたが、異国の地で体調も万全でなく、そのせいで睡眠時間も細切れで……となると不安や孤独を強く感じるもののようです。ひとりで気を紛らわせることのできるものを持参されることは結構重要なんじゃないかなと思います。(僕の場合は彼女との電話とYoutube、Twitterが心の支えでした)

9日目(通院、帰国)

朝9時ホテルのロビー集合で、通院ということになったので、早めに朝食を済まし、病院へ向かいました。行なったこととしては、婦人科での診察と整形外科での診察とドレーンの除去でした。
婦人科の診察では、経過の問診と、防水絆創膏の張り替えをしてもらいました。僕の場合は前述の通り、生理程度の出血が一度見られたため、そのことを(アテンドさんを介して)話すと、抗生剤を追加でくださいました。(腹腔鏡手術の場合は1ヶ月程は出血が見られる場合が多いとのこと)特筆して問題はないとのことで、一安心。さて次は、整形外科でドレーンの除去……というところでしたが、いつまで経っても呼ばれない!手術前の検診でもかなり待ち時間が長かったですが、この日、僕は夕方から仕事関係のWEB会議が入っており、少し急いでおりました。それをアテンドさんにお話しすると(数日前の時点からLINEで相談はしていて、流石に間に合うだろうとの見立てでしたが、思った以上に長引いてしまった)顔見知りの看護師さんに話を通してくださったらしく、かなり早めに診てもらうことができました。本当にありがたかった……!
ドレーンを抜くにあたって、痛がりの僕は非常にビビり散らかしておりましたが、いざ抜いてもらうと、これが全然痛くない!細いものが体内を通るなんとも言えない気持ち悪さはありましたが、痛いよりは万倍マシです。意気揚々と病院を後にし、ホテルへと戻って無事WEB会議に参加することができたのでした。

夕方過ぎ、Bさんと誘い合わせて、お土産を買いにデパートへ。ドライマンゴーやラーメン、チリソースなんかを買いました。(ついでに、この後しばらく必要であろうナプキンを購入しました。日本と全く同じものを日本の相場の半額以下で買えるので、腹腔鏡の方は買うのをおすすめします)この日の夜にはタイを発つということで、デパートの前でBさんと記念写真を撮りました。彼は僕の在住する東京・神奈川からはだいぶ遠いところの方でしたので、なかなか会えなさそうなのが非常に残念でした。デパートから戻った後も、僕の部屋で色々とおしゃべりをし、最後僕が先にホテルを発つときには握手をして、今後の飛躍をお互いに祈って別れました。

ジップエアはとても並ぶということで、アテンドさんの判断でフライトの3時間以上前に空港へ到着しましたが、おっしゃった通り、チェックインカウンターは長蛇の列でした。この時、息子さんの手術の付き添いに来ていた女性の方が所用で先に僕と同じ便で帰られるということで、いろいろお喋りをしながら、搭乗までご一緒しました。
短い時間ながら色々お話ししましたが、ここまで実現できたことについて、非常に褒めていただき、良い人生を、とエールを贈ってくださったことは、とても心に残っています。

酔い止めを飲んだら一瞬で眠ってしまい、起きたらこんな景色だった。

10日目

飛行機は少しの遅れを出しながらも無事、成田へ到着。彼女のアドバイスにより、成田からある程度近くまでバスを取っていましたが、これは大正解でした。キャリーを押してあちこち移動するのは、術後すぐの体には負担がなかなかに大きかったです。バスを降りて彼女と合流し、バンコクのデパートにもあった一風堂でラーメンを食べて帰宅し、すぐに爆睡しました。これで、僕のタイ渡航はやっと終わったのでした。

ヤンヒーとガモンの僕的比較

どちらがいいのかについては、人によるというところでしょうが、今回ヤンヒーで行った僕の見解としては下記の要素で決めるのがいいのではないかなと思います。(もちろん、ガモンのことはわからないのであくまで今僕が見える範囲です)

ヤンヒーのメリット

  • 少し(10万程度)安い

  • 総合病院なので整形外科管轄以外のことで何かあった場合も安心

  • 胸オペで付けるドレーンのボトルが一個だけでよい(ガモンでは二つ付けるのがデフォルトのようで、数日間だけの話ではあるがこれは地味に邪魔)

ガモンのメリット

  • 乳頭縮小手術も通院時に追加でできる(8万程度追加でできる模様)

  • 診察時の待ち時間が短い(ヤンヒーは基本各科に対して1時間くらい待たされるような感じですが、ガモンは早いと全ての診察が1時間程度で終わるとのことで驚いた)

まとめ

書き始めたら長くなってしまいましたが、通して感じたのは、ひとりの心細さと、人がいてくれることのありがたみでした。本当にいろいろな方に助けてもらって、どうにか終えることができました。お医者さんや看護師さん、アテンドさん、ほかタイで出会った人々や、日本で励ましてくださった方々に、深く感謝しております。今のところは傷口の経過も良く、やっと平らになった胸と、嫌悪感の抜けた腹部に、とても満足しています。
今後、改名と性別変更を行なっていくつもりですので、そのことについてもまとめられたらなと思っています。内容の中で、ココもっと詳しく書いて欲しい、などありましたら、DMかリプいただけたら書ける範囲で加筆したいですので、遠慮なく言っていただけたらと思います。

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