君に合って


#うちの卵かけごはん

 卵かけご飯って、小さいとき嫌いだった。なんか白身がドゥロッとしててなんだか気持ち悪いし、卵の生臭さが気になるし…。
 小さい時から少しだけ大きくなったまだ小さい時、やっぱり世の中の大人達が旨そうに食う程には旨いとは思えなかったけど一つの事に気付いた。熱々のご飯に、皿で蓋して蒸すように卵かけご飯を拵えると、したの方で熱気がたまることにより、卵が固まってドゥロッと感がなくなることでやな感じを感じなくなった。けど、無い物ねだりが出てくるなんて人間とは勝手な生き物だよ。ドゥロッと感が欲しくなるなんて。余りにも蒸してしまうと、卵が固まりすぎてボソボソ感で、大袈裟に言えばゆで卵をご飯の上で細かくして、少し醤油かけて(昔はよく味の素もかけたな)る卵混ぜご飯になっちまうわけです。これって卵かけご飯ご飯に非ずんば虎子を得ずなわけです。虎子って卵のドゥロッとなんだな。ぼ、ぼ、ぼぉくは、た、た、たぅまごぉの、ドゥロッと感が欲しいんだなぁ~。って、まだ好きじゃないんだけど、気になって来ててって、いやホントは前まで嫌いだったんだけどなんか気になり出して、いや好きじゃねぇよって、勝手に好きとか言うなよ。別に気になってねぇし、少しだけ気になってきただけだし、虎柄のヤツとかヒョウ柄のヤツとかなんか興味ないし、ていうかなんか怖いし…。でも少しだけ気になるし…。
 また小さい時から少しだけ大きく大きくなると、もう色々分別ついてきます。味に対しても許容が増えると言いますか、実際は赤ちゃんが一番舌が敏感で良く味の区別がつくらしいので、大人の舌はただ許容できる範囲が広くなっているだけで旨いのが分かるとか分からないとかではないような気がするけど、これって子供が許容量が狭くて大人になるとそれが広がるって、それをもって大人って言うんですよね。てなわけで大人に近づいてきた小さい人は、なんだか少し固い部分を作りつつ、ドゥロッとしたような卵かけご飯を作ることができるようになりました。虎子をも併せ呑むなんぞは、清濁併せ呑むに近づくようで、人の成長が垣間見られます。
 極めて大人に近くなってほぼ独りで買い物にもいけるようになった小さかった人は、卵かけご飯をそのままだけでなく、味を増やそうとしました。納豆と混ぜたり、葱とかの薬味と混ぜたり、ご飯ですよを混ぜたり、良い納豆を混ぜたり、海の近くの海苔の佃煮をまぜたり、スナック菓子混ぜたり、卵の黄身だけコイツらと個別に混ぜてやったり、黄身をブランシールしちゃってから合わせて混ぜてやったり、君を皆と合わせてやったり、ラジバンダリ。
 冷たいしらすと混ぜてやったり、小女子と混ぜてやったり、ちりめんじゃこと混ぜてやったり、山椒入りのちりめんじゃこと混ぜてやったり、きんしょうばいと混ぜてやったり、釜揚げのしらすと混ぜてやったり、そしたら卵が少し火が通って生の部分と火が通った部分で、「あはっ。」楽しいってなって中に小さい蟹がいて「あはっ。かわいい。」ってなってなんだか得した気分になったり、胡麻油を少し垂らしてやったり、辛みを足すためラー油を混ぜてやったり、青唐辛子を醤油と胡麻油で浸けたのをまぜてやったり、すき焼きの最後の牛肉の旨味と野菜の旨味と豆腐の味わいと割り下の旨味を抱いた卵をかけたり、もう勢い余って卵とご飯を混ぜちゃったり、そしてその混ぜたのをニンニクと生姜を胡麻油で炒めた熱々のフライパンの中にいれて、一緒に火にかけながら煽っちゃって空気に触れさせながら強火でよく煽っちゃって、塩を少々いれて、胡椒を上からパパパッと(これは白胡椒)ふってやって、刻んだ葱をパパパッとかけてやって火を止めて余熱で葱にも火を通してやって、そしたらオカズも欲しくなって豚の挽き肉をよーく、カラカラになりそうなくらい胡麻油で炒めてやって、豆板醤と甜麺醤も焦げない程度に豆チも炒めてやって香りがたってきたら決めてやって鳥がらスープをお玉1杯くらい加えてやって火を止めて刻んだ葱をいれてやって、3センチ角に切った豆腐を茹でてザルにあげて水気を切ったヤツをさっきの挽き肉炒めに混ぜてやって、火をいれて沸騰したら水溶き片栗粉を加えてやって、一気に熱くなると片栗粉が一気に固まるから火から放しながらかといって冷めすぎなくなる程に火を通したら、炒飯と麻婆豆腐の完成。
 君を様々な色に染めようとした僕。それに常に全力で答えてくれた君。君の本当を知りたくて、試してしまった。でも本当ってなんなんだろう、本当って僕が考える本当ってただの僕の中のつまらない小さな宇宙であって、君の本当じゃなくてでも本当が知りたくて知りたくて、というか君が知りたくて、ホントは君の事を気にしていた時から、ただ君自身が知りたくて、でも僕はただの小さな人のまんまで、でも僕だから、僕でいたかったから、勝手な思いで君を変えようとして。君は黄身だから、僕は君がホントは好きで。やっと大人になって、いや大人になれた気がして、いや大人と思いたくて、いや大人というか大きくなった小さな人だけど。
 「僕は白身で君を抱く…。」
 久しぶりに会う君は、やっぱりつややかで。
 一番僕が好きなのは、ドゥロッとしたまんまじゃなくて、熱々のご飯に、全卵と醤油少々(小匙1)をかき混ぜてかけてやって、海苔を揉み潰してパラパラとかけてやって。熱々だから少し熱が通って、火が通った部分と生の部分があって。一気に書きこんで…。
 やっぱり旨い。
 ごちそうさまでした。
 

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