今もあるもの

 中学2年の秋だったか、冬だったか。
 深夜に流れる「洋楽」を紹介する番組。今、令和5年においては前時代的な番組なのかな…。
 当時はバブル経済がはじけてもはじける寸前でも、その残り香・香りが社会のあちこちにあって、まだまだ空気に脂が混ざっているような雰囲気だったような。
 バブル経済の恩恵なのか、同級生の家庭は家を建て替えたり、新しいマンションに移ったり。東京の23区で家を構えるのが普通とは言えないまでも、当たり前のように行える家がある一方で、親の商売が軌道に乗らないという時代と逆行する家に育った為なのか、何故か心がかきみだされた、深夜のテレビから流れるギターリフ。
 当時、TMネットワークだ、BOOWYだ。
 いやいや米米CLUBだよ。とか言っていた。(決して否定ではないし、今でも聞いているし心はやはりはやる音楽)

 でもそのギターリフを聞いた瞬間は、「これ見つかった…。」って感じだった。探してたから、なんかそのときに心にハマる音でリズムで映像だったから。
 Nivanaのsmells likes teen spirits
  なんだか黄土色の画面の中で、金髪の髪の長いやつが基本下向いてギターかきむしって、デカイ髪が禿げそうなのが低めの位置でベースをかまえて、黒髪のこれまたロン毛が豪快なのにタイトなドラムを叩いて、その後ろでチアガールが踊るっちゅう。
 それまでミュージックビデオの存在は知っていたけど、それってJALだかANAだかの米米CLUBの浪漫飛行をモチーフにしたCMていどの認識だったのが、それそのものが音楽を伝える為の商品としてっちゅーか、作品?なんだってのが伝わったものでもあった。
 その当時は先に触れたように、日本においてはバブルの余韻みたいな時代ではあったけど、ことにNirvanaの活動していたシアトルでは温暖で中所得者層が厚い、一般的には過ごしやすい居心地が良い街にもかかわらず、そのコミュニティでは鬱屈した空気が流れて米国の中でも自殺率の高いと言われていた地域という特色で産まれた音楽。なんていうのは後から聞いて確認した事柄だけど、確かにその空気だったり雰囲気は当時の、その居ること存在することに違和感を感じていた中学生には大きな衝撃をあたえられて、いまだに引きずっているという…。
 その深夜の音楽番組というか、洋楽情報番組。確か、テレビ朝日だったと思うんだけど…。は、平日深夜で、一瞬だけ映った有名な「泳ぐ赤ちゃん」のCDのジャケット。その記憶を頭に、最短の日曜まで頭に保存していた。
 そして最短の日曜になった時、その当時それこそ無数にあった渋谷のCD屋さんで頭に保存した映像を頼りにNevermindをゲットしました。
 話しはずれるがその当時、どこの店で買うのが正しいのかが分からないほど無数のCD屋があった。それこそ渋谷のスタジオの隣の、JEANS MATEの上にあったタワーレコードに行けば良かったのかもしれないが(正直敷居が高いというか入るのに勇気が必要だった)、買ったのは居酒屋が多数入っている渋谷会館(?)の隣の小さな路面店(その後はドラッグストアになりがちだった)だった。
 CDのパッケージは大きくて、CDのケースのたてを3倍に横を1・5倍に伸ばした元のジャケットの厚紙で覆われている商品だった。

 カート・コバーンはそんな気は全くなかっただろうけど、その時から今までずっとその時の感情だったり空気感だったりを、私に1つのパッケージとして保存してくれている。
 
 そしてやっぱり今でもNevermindの1曲目を、ふとした時に聞いている。

 でも、Pollyも好きになって聞いている。

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