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NAOMI

【小説】 ※無料で最後まで読めます

ザイゼンナオミが押し寄せてくる。

山すそから。岸辺から。路地という路地から。
ザイゼンナオミは瞬く間に天文学的な数に達する。

にっこり笑ったザイゼンナオミ。ちょっぴりアンニュイなザイゼンナオミ。コーヒーはブラックのザイゼンナオミ。スヌーズ5分設定のザイゼンナオミ。サイゼリヤに入り浸るザイゼンナオミ。市が尾に部屋を借りるザイゼンナオミ。

あふれかえったザイゼンナオミは当然のことながら大人しくしているということはない。TSUTAYAというTSUTAYAを破壊し、埋め立て地という埋め立て地を掘り返し、挙げ句の果てにはフキを生で食べたりする。

それに飽きると血で血を洗う争いのはじまりだ。ザイゼンナオミがザイゼンナオミにジャブを放つ。ザイゼンナオミがザイゼンナオミにローキックを入れる。ザイゼンナオミがザイゼンナオミに腕ひしぎ逆十時。ザイゼンナオミがザイゼンナオミに三角絞め。ザイゼンがナオミをなじり、ナオミがザイゼンを罵倒する。ナオミナオミ詐欺、みたいなことも起こる。

遠からず世界はザイゼンナオミに埋め尽くされるだろう。だけど心配はいらない。新しきザイゼンナオミが世界中の溝という溝から生まれ出て、旧きザイゼンナオミを喰らいつくしてくれるから。

もはやこの世界は、ザイゼンナオミを繰り返すだけのシステムと成り果てたのだ。




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