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パーティで会った女の子

【小説】 ※無料で最後まで読めます

パーティで知り合った女の子と日を改めて会うことになった。
パーティで話が弾んだ女の子と別の場所で会うと、話がぜんぜん噛み合わない、というのはよくあることだ。この噛み合わなさというのは、たとえば「こんにちは」と言っているのに「証明できませんものね」と返されたり、「おいしいね」と言っているのに「歴史的解釈を用いましたか?」と軽く怒られたりするレベルの噛み合わなさ。今日はどうなるだろう。前回は話が盛り上がったけど、前回と同じ会話を繰り返すことはできないのだ。

駅で待ち合わせの約束をして、5分前から待機。
7分遅れで彼女がやってきた。
パーティ会場の特殊な照明の下で見た女の子を、明るい日射しの中で見るとまた雰囲気がちがったりするものだけど、彼女の場合は身長が明らかにちがって見える。
160センチぐらいだったはずなのに、いま目の前にいる女の子は少なく見積もっても8メートルはあるのだ。
多めに見積もれば10メートル弱。
郵便ポストにつまずいたり、電線を蜘蛛の巣みたいに乱暴に手で払ったり、中世の拷問道具としか思えないようなヒールで停車中のスズキワゴンRを踏み抜いたりしている。シックなスカートの裾がゆっくり揺れてオーロラのよう。

「ごめんなさい、ちょっと遅れちゃった」少しはにかんで彼女が言う。
「背、伸びた?」と僕は聞く。大声で。
「え? 髪切ったからかな? ケーニヒスベルクの橋の問題ですよね。パンケーキで決まりだと思います」と彼女。
だめだ、ぜんぜん噛み合わない。


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