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ふるちんになった夜

第二話 宴

 それは蒸し暑い夏、スーツ姿で営業にまわり、仕事後のビールがうまい季節の頃だった。高校時代の友人であるアキラから珍しく連絡があった。飲みに行きたいので、いきつけの店があったら、連れて行ってもらいたいというのだ・・・・・・

 アキラとは最近久しぶりに会っていた。

営業先の洋服屋は、不良っぽいヤンキーの溜まり場で、刺繍のごてごてしたジャンバーやら、革ジャンやらを扱っていた。洋服屋で、営業の打ち合わせをしているとき、アキラが服を買いに来ていて出会ったのだった。アキラは洋服屋の店員と、親しそうに話をしていた。

 それは、私にとってはあまり嬉しい出来事ではなかった。アキラは、高校時代からなにかと私につっかかってきて、何度も不愉快な思いをさせられていた。普段は普通に馬鹿話などするのだが、なにかのきっかけですぐに喧嘩腰になってくる。身勝手な性格で周りを振り回すこともあったため、ある程度しょうがないと受け流して高校時代を過ごしたのだった・・・・・・

 「金曜日なら、仕事がはけてから会えるよ。居酒屋で飲んでからでいいか?」
と、私が尋ねる。

 「いや、スナックがいいんだ。いきつけのところ、どこかないのか?」
 アキラの提案は、よく意味がわからなかったが、待ち合わせの場所を決めて電話を切った。

 当日、待ち合わせの場所から、「ジェリー」へと向かった。仕事の後でビールがうまかった。ここは乾きものしかださないので、アルコールばかり飲むことになる。

 今日もママは不在だった。Y美ちゃんとヘルプの娘たちが3人ほど相手をしてくれた。アキラは上機嫌で酒を飲んでいた。スナックの娘たちに、下ネタなど平気で口にしている。結構どぎつい事もいうのでこちらがはらはらさせられるが、そういう客も多いのかY美ちゃんなど笑いながら相手をしてくれていた。

「灰ちゃん、なにか歌ってよ」
アキラのリクエストに、十八番のアリス「チャンピオン」を情感たっぷりに歌い上げた。
「つまんねー歌だな」
アキラは、憮然とした表情で言ってきた。スナックの娘たちが一瞬私の顔をみる。
「おまえもなんか歌えよ」
無視して、アキラにカラオケをすすめた。
「嫌だよ」
ニコリともせずに、返事を返してくる。

 相変わらず、意味がわからない。気分が悪くなった私は、酒をあおった。二時間ほどたったころ、酔いが回って足元がおぼつかなくなってきていた。
すると、アキラが、携帯でどこかに電話をかけ始めた。どうやら洋服屋の友人のようだった。

「灰ちゃん、〇〇が、ここに来て一緒に飲みたいっていってるんだよ。いいかい?」
営業先だし、断るのも不自然だ。いい加減酔っていたのでお開きにしたかったが、了承した。

 洋服屋の男は、すぐに姿を現した。アキラと二人で私を挟み込むような形で、席に座ってきた。青白い顔色で背は高いが痩せた男だった。私を挟んでアキラと、何事か話をしていた。三十分ほど、たっただろうか、アキラが、

「この店は暑いな、暑い」
と言い出した。

真夏とはいえ、この手のスナックはクーラーをガンガンに効かせているので、むしろ寒いくらいだった。

「なに言ってんだ。クーラー効いてるから、暑いことないだろ」
私は言った。

「灰ちゃん、暑いからさ、涼しくしてやるよ」
アキラと、洋服屋の男がめくばせをした。それが、合図だったのか、アキラは私を羽交い締めにしてきた。

アキラは、身長は180cmある。体を鍛えるのが好きで、痩せて見えるがかなり筋肉がついている。力いっぱい羽交い締めされると、びくとも動かない。こちらも酒に酔っているので腕に力が入らない。
洋服屋の男の手が、私のベルトにかかった。
「やめろっ・・・やめろっ おらっ・・・・!」
私は声をふりしぼったが、アキラと洋服屋の男は笑いながら私の体からパンツごとズボンをずり下ろした・・・

「キャアアアアア!!」
Y美ちゃんの、金切り声が店内に響き渡った。
目的を果たしたアキラと洋服屋の男は席についてニヤニヤと笑っていた。
私は、店の床に下半身裸の状態で、だらしなくねそべっている。
酔っ払った意識の中で、私が感じていたのは或る種の開放感だった。
そして、うすぼんやりと、昔の記憶が蘇ってくる・・・

(宴が・・・・始まる・・・・)


第二話 完


※物語に出てくる店名や人物名はすべて架空のものです。また、この物語は、フィクションです。


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