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ふるちんになった夜

第三話 ジェリーのママ

 しばらくぶりにジェリーに顔を出すと、Y美ちゃんが出迎えてくれた。

「も〜〜灰ちゃんったら、社会人にもなって殴り合いとかなにやってんの!ママも呆れてたわよ。」

 そうだった。アキラに羽交い締めにされて、ズボンを脱がされ、下半身裸になった私はその後・・・・

洋服屋の男には私なりのやり方でケリをつけた。私よりまともな感覚の持ち主だった。

そして、アキラとは、非常階段で延々と殴り合いを続けたのだった。
翌朝、体のあちらこちらに痛みが残っていたが、なぜかスカッとした爽快感を感じたのもまた事実だった・・・・・

 その日も、ジェリーのママは、休みだった。遅くなってから出てくることもあるが、最近はあまり顔をださないようだ。
 (こんなんじゃこの店長くもたないんじゃないだろうか・・・ママはオーナーになりたがっているんだろうけれど、ヘルプの娘たちだけで店やっていけんだろ・・・・)
そんなことを考えながら、ママの顔を思い浮かべていた。

 不意に、虚無感を漂わせた表情で、タバコをくゆらせているママの姿をよく覚えている。
一緒に釣りに行く客というのは、パトロンなのだろうが、釣った魚の話を嬉々として話すママの明るい顔とは対照的な表情だった。

私は、その原因についてひとつ心当たりがあった。ある晩のことだった。ジェリーで飲んでいるときママに来客があった。ママは外にでて話をしているようだった。
私は、どういう訳だか、外に出てママが話している相手をみたのだ。

ママが話していたのは、ママの実子だった。中学生くらいの男の子だったが、パーマをかけてリーゼント風に決めていた。ママと話しているその顔は、白痴と怒りの入り混じった凶暴な表情だった。
ママは、悲しそうな困ったような顔をしてその子と話をしていた。
(小遣いでもせびっているのかな?)
という程度にしか考えなかったが、相当の暴れん坊であることがうかがい知れた。

お店に家庭に、女手ひとつで切り盛りしているママのことを案じると、あの笑顔の影にどのような苦労があるのだろうと思わずにはいられなかった。

 後日、新しく入ったヘルプの娘を囲んでみんなで写真を撮ろうということになった。
「ママも一緒に写らない?」
と尋ねたが、ママは笑って断った。

「はい、チーズ!」

第三話 了

※この物語に出てくる、団体名、個人名は架空のものです。この物語はフィクションです。

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