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麻痺

初めて彼の人を観たのは、YouTubeだった。
仮面をつけて、ポケットに手をいれたまま、少しの動きもなく
機械のように正確に歌っていた。

実は「東京喰種」という漫画の大ファンだったわたしは、最初、
「仮面をつけているなんて、リアル喰種なのか???そういうコンセプト?まさか喰種コラボ?」くらいの気持ちで観た。

「麻痺」

痺れた。
思考力が飛んだ。
頭の中が疑問符だらけになった。
人間の出せる声なのか?
人間の歌える歌なのか?

わたしには音楽の素養がない。
譜面も読めない。
だから音楽的なことはなにもわからない。
それなのに。いや。それだからこそ?
鷲掴みにされた。持っていかれた。
歌声に。佇まいに。美しさに。
とても激しい曲なのに、その後ろにある静寂さに。

「麻痺」

わたしを彼の人と出会わせてくれた楽曲。
今でも一番好き。
ライブでは息絶えてもいいと思って、跳んでいる。
からっぽだった自分に灯をともしてくれたから。
なん十分の一かでも、返したい。届けたい。応えたい。

「それが嘘か誠かなんて」
ライブの時に見上げる彼の人の目には何が映っているのだろう。
わたしたちが放つ熱が、青い炎になっているといい。
わたしたちの想いが、少しでも伝わるといい。


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