【映画】『ヘレディタリー/継承』は超怖いよって話※ネタバレ無し

『ヘレディタリー/継承』とは、

2018年11月30日(金)日本公開予定のホラー映画である。

この映画、アメリカメディアでは、

”現代ホラーの頂点”(USA TODAY)

“史上最も恐ろしい”(The Guardian)

などと結構な高評価なのだが、

現時点日本ではイマイチ話題になってい気がする。
(まぁ僕日本に居ないからホントはわかんないけど)

Youtubeに上がっている日本版予告編のコメントなんかを見ても

”これ本当に怖いのか?B級にしか見えないんだが”

”しょうもなさそうw”

とか書かれてて、あんまり期待されている気配ない。

確かに予告編を見ると・・・

     ・・・あんま怖くなさそう。

俺もコレだけ見たら

「呪い系か・・・ありきたりなホラーだろうな。つまんなそ」

って思ってただろう。

しかし、実際、一足先に見た僕の感想をまず言っておく。


ここ数年見たホラー映画で一番怖かった。


一応言っておくと僕はホラー映画結構好きで見る方なんだが、
本当に「怖い」って思える作品はなかなか無い。

しかし『ヘレディタリー/継承』は久々に、本当に「怖かった」。

いや、正確には「怖い」というより、
激しく「不愉快」で「不安」にさせられた。

当然、ホラー映画として良い意味で、である。

『ヘレディタリー/継承』はホラー映画で重要な「緊張の糸」を、
ぶっとい縄にして見ている者の胸をギリギリ締め付けるような、
そんな作品である。

ぶっちゃけストーリーだけでは、そんなに怖い/面白いものではない。

ホラーとしてのネタも、特に斬新なものではない。

お母さん、お父さん、お兄ちゃん、妹の4人家族がいる。
お祖母ちゃんもいたが、死んでしまう。
そのお祖母ちゃんの葬式から物語が始まる。
そのあと色々怖いことが起こる。
それだけの話である。

しかし物語の展開、映像、演技、演出、
全てが上手く織りなって、見る者に強烈な恐怖心を与える。

特に開始30分後の衝撃展開には、思わず凍りついた。

久々にホラー映画でシビれたいって人にはぜひオススメしたい作品だ。

そんな『ヘレディタリー/継承』のオススメポイントを簡単に紹介したい。
      ※ネタバレは一切無いのでご安心を。

①いわゆる「びっくり系」じゃない

「びっくり系」というのは要するに、

♦いきなりバンッ!って出てきてびっくりする

♦何か出てきそう・・・
 →何も出てこない
 →これを2,3回繰り返した後バンッ!って出てきてびっくりする

っていうパターンで「怖さ」を出そうとするホラーのことだ。

その瞬間はビクッってなる。しかしそれだけ。
心に残る「怖さ」がないので、見終わった後はもう何もない。

このては英語圏でも Jump scare と呼ばれて、ウンザリされている。

確かにここ10年くらいそんなホラー映画ばかりなので、
「どうせまたコレもびっくり系だろ」と勘ぐる気持ちも分かる。

しかし『ヘレディタリー/継承』はびっくり系ではない。

少なくとも Jump scareを恐怖の核にしていない。

また設定の不気味さ、雰囲気、グロなどで怖さを出してる作品でもない。

この作品から受けるのは、極めて精神的な恐怖だ。

さらにそれは、いわゆるサイコ・スリラーとかで描かれる
「狂気」だとか「人間の負の部分」だとかそんな精神分析的なモノでもなく、

見る者の純粋な共感から生まれる「緊張」「不安」「苦痛」だ。

だから実は、この映画を「怖い」と言ったら少し語弊があるのかもしれない。

しかしこうした精神的苦痛を何か教訓じみたテーマや主人公の成長などで「救う」ことなく、徹底的に悪夢へ引きずり込むことを主眼としたこの作品は、間違いなくホラーである。


②役者・演技の凄まじさ

この映画の恐ろしさは、主演のト二・コレットで70%できている。

アメリカでも「ト二はこの作品でアカデミー賞ノミネートされなかったらおかしい」という声が上がっているほど、彼女の演技は凄まじい。

    「顔」が怖ぇんだよ、マジで。

いや、「顔芸」とか言われるような下卑た表現の話じゃなくて、
彼女の「顔」のせいで見る者は否応なく恐怖に引きずり込まれる。

人間には、人の顔を見るとその人の感情を読み取ろうとする生理があると思う。この映画はその生理を120%悪用している。(勿論良い意味で)

主演のト二だけじゃない、息子役のアレックス・ウォルフも素晴らしい。

決して大げさに泣き叫んだりするのではない。
登場人物の感じている「悲しみ」「苦しみ」「怒り」を、
演技だけでなく絶妙な映像・演出も合わさって見る者の心に摺り込んでくる。

他の役者たちも素晴らしい。

とにかく役者の絶妙な演技力が、作品全体を通して強烈な緊迫感を生み出している。


③「家族」「継承」というテーマのイヤらしさ

最近、たまたま個人的に、「家族」「親子」をテーマにした映画を立て続けに見た。(『万引き家族』、『クワイエット・プレイス』、『Leave No Place』など)

『ヘレディタリー/継承』もその中に入る映画なんだけど、この映画は
その中で一番、というか唯一、
「家族」というもののイヤらしい、不気味な部分をテーマに使っている。

そのひとつは、「家族」の中にある「緊張」である。

普通、社会通念的に、家族というものは最も気心が知れていて、
最も気を使わなくて済む関係だということに”されている” 。

「家族だから許せる」とか、「家族だから信頼できる」といった、
テレビとかでよく見せられる「家族の絆」みたいなアレだ。

しかし私たちの多くは、それらは「理想」であり「幻想」であることを”経験的に”知っている。

私たちは知っている。
上記の「理想」は、容易に裏切られ得るということを。
いや、そもそもそんなものは最初から存在しない、「幻想」であることを。

しかしそうであっても、私たちはこの「幻想」が、お約束が、
たとえ上辺だけでも有効であることを願い、期待し、取り繕う。

それを取り払ってしまったら、恐ろしい「現実」に突き当たってしまうから。

だから「家族」の中には常に「緊張」が付きまとう。

「家族」とは、この「幻想」と「現実」の間に張られた緊張の糸の上を綱渡りしている関係だ。

またこの糸が幾重にも張り巡らされたとき、
それらは一種の脅迫観念となり、命令となって、私たちを締め付ける。

「家族”だから”許さなくては”ならない”」
「家族”だから”信じ合わなければ”ならない”」

「家族」とは一種の共同的なパラノイアである。

と、非常に極端な書き方をしてしまったが、
この映画が持つ「息苦しくなるような恐怖」の正体は、
こういったところにあると思う。

しかし『ヘレディタリー/継承』は純粋なホラー映画だ。
だから「家族とは何か?」みたいな小難しいテーマは現れてこない。

またしかし、だからこそ、こういった家族のイヤらしい部分を、
何らメッセージ性や教訓を引き出さずに、ただひたすら視聴者にイヤな思いをさせるためだけに、ふんだんに使えるのだ。

気の悪い映画だよ、ホント。

もうひとつのイヤらしテーマは、「継承」だ。

「子は親のモノを引き継ぐ」
という制度は、封建社会がブルジョワ革命によって打倒された後も、
今日の私たちに至るまでまさしく「継承」された伝統である。

また継承されるものは財産や権利だけではないことを、今日の私たちは知っている。遺伝や文化など、目に見えないその他諸々がそうだ。

こうした「継承」が正当なものであるとは、誰にも説明できない。

なぜならそれらは本質的に不合理だからだ。

あるいは、時に望まなくても継承されてしまう、放棄することが出来ないという点で、不条理でもある。

現代に至ってもこの「継承」という不合理・不条理から逃れられないという事実、いやむしろすがってしまう自分たちの弱さに目を向けたとき、
私たちは苦虫を噛み潰したようなイヤな気分を味わう。

『ヘレディタリー/継承』はこの苦虫を煎じて作ったお茶みたいな映画だ。

これ以上はネタバレになってしまうから説明できない。

・最後に

もちろん、どの映画もそうであるように、見終わった後
「もっとこうすれば良かったのになー」
「ここが納得いかねーなー」
とか思う部分もあった。

またこの映画はいわゆる「大どんでん返し!」とか「幾重にも張り巡らされたトリック!」みたいな作品でもないので、その辺を期待して見られるとガッカリされてしまうかもしれない。

逆に僕は、変な謎解きやメタファーに頼らないところに好感持てた。

なので穿った期待はせず、素直に見て素直に凍りついてほしい。

あと日本配給のコピーで
「この家族の物語は、永遠のトラウマになるー」
ってのがあったけど、
むしろ特定のトラウマがある人は、それが掘り起こされてすごくイヤな思いをすると思う。

あまり大げさな書き方はしたくないが、ハートがナイーヴな人はある程度覚悟して見た方が良いかも。

以上、『ヘレディタリー/継承』は超怖いよオススメだよ、って話でした。

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