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【③チュムポーン→ハートヤイ】極寒特急。ぼったくりハラール。そしてスラム。

とにかく寒い。めちゃくちゃ寒い。

席は2等車だったらしい。頼んだつもりなかったが、どーりで292Bは高いなと思った。でもまぁイスは柔らかいしリクライニングも付いてるからこりゃいいや、よく寝れそうだ、って最初は思った。

走り出してすぐ、「あれ、これ"涼しい"通り越してるぞ」って気づいた。車両はエアコンついてないが、首を回しながらもクリティカルにぶち当たってくる扇風機と、それでなくても窓からビュービュー入ってくる風で、さっきまで火照ってた身体が急激に冷却されていくのが分かった。

よく見ると、俺以外の乗客、皆長袖着てるかスカーフのようなものを肩から掛けてる。一方、俺は半袖短パンという夏休み小学生スタイル。まぁいいか。とりあえず寝よう。寝れない。寒い。寒くて寝れない。眠りに入ろうとすると、すぐに寒さで目覚める。腕を組み、両手でそれぞれの二の腕をカバーする。リュックサックを盾にして風から身を守る。どれも焼け石に水である。

ってゆーか、なんで扇風機回ってんだ?!今暑がってる奴なんていねーだろ!辺りを観察すると、前列の席の壁面にスイッチのようなものがあるが見えた。あれだ。即座に俺はその席へ向かい、そこに座ってたオヤジに向かって「ナーウマーク!(超寒い!)」って言うと問答無用でスイッチを切った。扇風機は止まった。オヤジはそれ見て、あ~スイッチここだったのねぇ~って顔して笑ってた。足にシャツを巻きつけていたオヤジも寒かったに違いない。だから喜んでいた。私の史観ではそういうことになっている。

扇風機は切った。これでだいぶマシになるに違いない。ならない。寒い。窓から入ってくる風が半端ない。自分の近くの窓閉めても、そこ以外全部開いてる窓からガンガン吹き込んでくるので意味ない。あとはもう、日が昇ってきて気温が上がるのを待つしかない。震えながら日の出を待つ。

夜が明けた。しかししばらくは寒いままだった。日もだいぶ高くなり、ようやく身体が温まってきて眠れるようになったのは8時ごろだった。気がついたら足元でゴキブリがひっくり返って死んでた。こいつは夜を越せなかったようだ。

11:00ごろ、ハートヤイに到着。土地情報:ハートヤイ(Hat Yai)はタイ南部の中心的かつ最大の都市である。ハジャイとも呼ばれていて、マレー半島を旅するバックパッカーの間では通過点として利用されることの多い街だ。しかしわざわざ観光で来るようなところではないようで、調べてもこれといった見どころが出てこない。あと時々テロがある。(そのためか駅には常に軍人がいた。)

まぁいい。とりあえず飯だ。ほとんど寝れなかったことに加え空腹も限界だった。ホステルに行く前にどこか飯屋に寄ろう。道中、HALALと看板が掲げられた定食屋を見つける。ハラール料理かー。どんなのか分からないが、マレーシアに近い=ムスリムの多いこの街らしくて良いのではないか。飛び込む。

入ってみればどうということはない、カレーとか魚とか、おかずを選んでご飯に盛りつけるどこにでもある飯屋だ。迷ってる余裕はない。とにかくかっ込めれば良い。チキンカレーとコーラを頼んだ。

ざっかけない昼飯。せいぜい30B、コーラも入れて36Bくらいだろうか。ハートヤイはバンコクと比べて若干物価が高いとも聞いていたので、40Bくらい取られるかもしれない。速攻でかっ込む。お会計。

おばちゃん「70バーツ」

俺「は???」

聞き間違えかと思いおもわず3回聞き直した。カレー50Bコーラ20Bとのこと。

たっか!!!!!!!!

ひょっとしてぼったくりか?!とも思ったが、お店の雰囲気といいおばちゃんの表情といい、その様子はない。この店が特別なのか、ハラール飯がそうなのか、あるいはこの街では普通の価格なのか・・・。

なんとなく釈然としない思いを抱えたまま、とりあえずホステルへ向かう。

チェックインは14:00からだと言われた。もともとバックパックを置きに来ただけだったので、フロントに預けるとすぐに街へ出た。特に行くあても無かったので、とりあえず近くのキムヨン市場というのに行ってみる。一応ハートヤイの観光スポットらしい。

はなから期待していなかった通り、面白くなかった。乾物やら服やらが並ぶ、タイのどこにでもある市場と変わらなかった。

すぐに出て街をぶらぶらする。路上でちょっと面白いものを見つけた。

魚が瓶に入って売られてる。もちろん生きたまま。ペットだ。あと一緒にハムスターやらモルモットやらも露店で売られていた。テントの下とは言え、このクソ暑い国で屋外販売だ。哺乳類は明らかに弱っているように見えた。残念ながらこの国の、動物の尊厳や権利に関する意識は低い。まぁ日本や欧米の方が高いからなんだというのだ。所詮ペットなんて人間のおもちゃだ。命のおもちゃだ。同じように汚いケージに押し込まれて市場に並ぶ「食べる用」のニワトリとほぼ同等に扱われているこの国のペットは、そういった人間のエゴを思い起こさせてくれる。

しばらく歩いていると線路に出た。線路の脇でもどうやら市場がやってるっぽい。こっちの方がローカルで面白そうだ、と覗いてみたものの、どうやらもうお開きだったようで店は閉まっていた。魚の生臭さだけが残されていた。

しかし、市場の先に、何かがあるのを感じた。線路脇に、未舗装の細い道が見える。何も考えず入ってみる。

ド直球のスラムだった。やはり、線路脇というのはスラムが多い。どうしてそうなるのか、きっと研究とかもあるんだろうけど寡聞にして知らない。

あとは高架下も面白かった。高架下というのは、なかなかの確率でDopeなものが見れるスポットだ。今回ハジャイで見つけたは、お守りやペンダント、それも職人手作りのものがそのまま並ぶなかなか珍しい露店市場だった。

中には「コレ何の神様だよ?!」「お守りっていうか呪術道具??」みたいなモノもある。タイの風習や信仰に詳しくないのでどういう意味があるのか分からないが、タイ人はみんな何かしらこういうお守りみたいのを持ってる。見ていると何か自分もひとつ欲しくなってくる。結局買わないけど。

14:00過ぎにホステルに戻る。シャワー浴びたり洗濯したりする。

夜にはまた晩飯探しにウロウロするが、昼間のトラウマもあってあまり店に入りたくない。(また割高だったら嫌だから。)安く屋台で済ませたいところだが、中々そそられるのが無い。結局どこでもいいかってなって、愛想の良さそうなオヤジがやってるお粥屋の屋台に座った。

なかなかレベルの高いお粥だった。トッピングでチョイスした豚はしっかりと味が染み込んでいて、シーユ(タイ醤油)ベースの汁とよくマッチしていた。これで40B。バンコクの相場観とそう変わらない。

食べ終わると店のオヤジに話しかけられた。「どっから来た?」ー「日本だ」と答えるとオヤジ「おおーX Japan!」って言った後、「教えてくれ、日本のビールはキリンがNo.1か?」などと日本のことをいくつか質問した。オヤジは日本のこと好きみだいで、「CDは日本製がNo.1だ。私はダウンロードよりCDの方が好き」「オーディオはSNANSUIが一番だ」などと、オーディオオタクっぽいことも言ってた。この辺じゃ日本人は少々珍しいのだろう、日本の話ができて嬉しそうだった。

オヤジと話終えて隣の屋台に目をやると、屋号にツバメの絵が書いてあった。同じようなものが近辺にはいくつかあった。Bird Nestって書かれていたのも見た。おそらく"ツバメの巣"だろう。

どうやらスープとかではなくスイーツみたい。どの屋台も結構繁盛してて、隣の店もコンスタントに客回転していた。ひょっとしたらこの街の名物なのかも。何て呼ぶのか分からないのでお店の人が作っているところをおもむろに指さして「いくら?」って聞いてみた。40B(約140円)だと。安い。ツバメの巣って高級食材ちゃんうか。食べてみないてはない。「同じのくれ」と頼む。

小さめのお椀にココナッツミルクスープとたっぷりの氷が入って出てくる。中にはカラフルな具が色々入っている。

どれがツバメの巣なんだ??わからない。とりあえず食ってみる。美味しい。ココナッツミルクの優しい甘み。中のゼリーみたいな奴らも控えめな甘さで、さっぱりしている。他に豆やら干し戻しフルーツみたいのも入ってて色々楽しい。しかしツバメの巣っぽいものが見当たらない。ってかツバメの巣入ってるのか??今更だが、俺は前の客が頼んだのをコピー注文しただけで、「ツバメの巣くれ」とは一言も言ってないー。まぁいいか。それより干しドリアンみたいのがクソうめぇ。生のドリアンはあまり好きじゃないが、これは甘みが濃厚でとても美味しい。

結局ツバメの巣食ってない気がするが、それなりに満足してホステルへ戻る。ホステルに帰ると、あることが気になっていて、受付のおねーさんに相談してみた。

「明日、昼2時の列車でペダン・ベサールに向かって、そのあとペナン島に行きたいんだけど、乗り換えのフェリーの時間まに合うかな?」
「うーん、危ないと思う。朝の列車に乗った方がいいよ」

やはりおねーさんもそう思うか。「実は洗濯物干してて、朝の便だと乾くか不安なんだ・・・」何気なく心情を話すと、「なるほどねー。じゃあこうしたら?」って言って、おねーさん裏から物干し竿持って来た。「これ使って外の室外機に当てて干しましょう。すぐ乾くよ」

それ持って二階上がると、窓を開け、室外機に向けて物干し竿突っ込んだ。しかし、「う~ん・・・室外機の風温かくない・・・。ダメかも」と表情が曇るおねーさん。「ちょっと洗濯物見して」と言うのでバルコニーに連れてくと、「ああ、これくらいなら室内でエアコンの風当てときゃ乾くよ!」って言って物干しラックをエアコン前まで移動してくれた。とても親身で親切なおねーさん。感謝だ。

荷物整理を済ませ、明日の朝6時にアラームをセットすると、寝る前の最後の一服に外に出た。向こうからACミランのユニフォームシャツを着て長い竹竿を担いだ男がこちらにやってくる。目が合うと、「タバコくれ」「金くれ」。金は部屋に置いて持ってなかったので、タバコだけあげた。そういえば、今日日中も別の男に「ボールペン100Bで買ってくれ」って言われた。いらないと言うと、「じゃ普通に100Bくれ」って言うので再び断るとすぐに去って行った。この街ではダイレクト乞食が結構いるようである。こういうのバンコクではあまり出くわさないよな―。昼見たスラムの光景を思い出した。

明日はペダン・ベサールで乗り換え、そこでマレーシアへ国境越えだ。今回の旅初めての国境越え。ドキドキするなぁ。

(2月9日。晴れ。明日へ続く)

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