最近ハマってる女性ヴォーカルバンド
僕が最近気に入って特によく聞いてる女性Vo.バンドを紹介します。
「最近」というのは、僕が”最近見つけた”という意味なので、最新のバンドってわけじゃありません。
数年前から一部(?)で既に人気なバンドも多いです。
でもどれも大変素晴らしいバンドなので、ぜひ聞いてみて下さい。
それでは、早速紹介します。
その① Sløtface
2012年ノルウェーのスタヴァンゲルで結成。
結成当初のバンド名は Slutface
あえて日本語直訳すると『アバズレ顔』と言ったところでしょうか。
今も読み方は変わっていませんが、メディア検閲対策のため表記だけ変えました。
バンド名を見ても分かる通り、彼らははっきりとアティチュードを持ったパンク・バンドです。
とりあえず彼らの今年のヒット曲、Nancy DrewのPVを見てみて下さい。
Nancy Drew
アニメの面白さ・可愛さだけでなく、曲の持つ引力に持ってかれます。
ちなみに曲名のNancy Drewとは、アメリカの子供向け推理小説シリーズ
「少女探偵ナンシー」の女の子主人公の名前です。
主人公Nancyは、長年複数の作家に描かれる中で、時代のニーズに合わせてそのキャラクター像が変貌していったそうです。
つまりそれは、その時代の社会が求める・押し付ける「女の子像」というのを一身に受け入れてきたキャラクターということでしょう。
フェミニストたちはそれを「願望充足的で神話的なキャラクター」
「女性性とは正反対の概念の具現化物」として批判してきたらしい。
しかし、Sløtfaceの歌に出てくるNancyはどうやら違うようです。
気をつけな、彼女はお前の悪夢ーNancy Drewだよ
彼女は忍びまわって
お前を吟味するよ
男の構造に捕らわれ
酸素を通して私を満たす
でも私のあの子は黒板を白紙にするのさ
私はそれを見るのを待ち望んでる
何が起こってるのかちゃんと分かってる女のサウンドトラックを待ってるんだ
私は彼女たちのチェリー・ボム(かんしゃく玉)を壁越しに聞いてる
ここで言われているチェリー・ボムとは、ガールズ・パンクの先駆者として伝説的に語られるThe Runaways の名曲"Cherry Bomb"から来てるのでしょう。
アニメPVの内容だけでなく歌詞からも、彼らはこれまでフェミニズムにとって否定的な少女像であったNancy Drewを転倒させ、「色んなものをぶっ壊すカッコイイ女子」の象徴として歌っていることは明らかです。
僕は、これまでガールズ・パンクが示してきた思想的態度とは、誤解を恐れずに一言でいえば、「女はカッコイイ」に尽きると思っています。
この「カッコイイ」の意味については書くと長くなるので割愛しますが、
端的に言うと、90年代アメリカで巻き起こったフェミニズム=ガールズ・パンク・ムーブメント〈Riot grrrl〉の代表格である、
Bikini Killの代表曲”Rebel Girl”でも歌われていたような、
『大好きだよ、あんたと友達になりたいよ!』
『私の世界の女王様!』
と女の目から見て憧れるような「カッコイイ」だと思います。
Sløtfaceはこうしたガールズ・パンクのスタンスを、現代らしい肩の力を抜いたカジュアルさに落としながら、コアとしてしっかり引き継いでいるように見えます。
また思想的な面は置いといても(ホントは置いとけないのですが)、音楽としてキャッチーでありながらエッジの効いたサウンドは癖になります。
エモいサビが印象的なGalaxiesや、情感が波のように押し寄せるSlumberなど、聞いてて最高に気持ちイイ。(また歌詞も非常にイイ。)
ヴォーカル・Haley の素直な歌唱もスッと心に入ってきます。
しかし何と言っても、Sløtfaceはミュージックビデオが面白い!
「パティ・スミスならこんなのつけねーよ!」って歌いながらメイクアップ・チュートリアル動画(パロディ)やるMagazineとか、
鉱山会社による廃棄物投棄への抗議運動に”実際に”参加してるSponge Stateとか、どれもカッコよくて面白い。
PVひとつひとつ解説してるとSløtfaceだけで記事が埋まるのでこの辺にしときますが、最後に1曲だけ紹介したいです。
Bright Lights
女の子が、友達の家で楽しく飲んで、夜道を歩いて帰る。
ただそれだけ、ごくありふれた一晩のスケッチです。
僕はこのPVを見て、このバンドのセンスに打ち震えました。
これ以上多くは語りません。ただ見てみて下さい。
その② Pale Waves
次はめっちゃポップです。
2014年結成、イギリス・マンチェスター出身のPale Waves。
既に各方面から「ブレイク間違いなし」と大注目されています。
僕も最初聞いた時は
「H&Mに流れてそうなシャレオツPOPやな」
「見た目ゴスのくせに、曲は80-90's POPの焼き増しやんけ」
と嫌悪感の方が先に来ましたが、気が付いたらハマってました。
Television Romance
正直、当初、ゴッスゴスなヴォーカル・Heatherの見た目に惹かれたのは事実です。(やはりゴスは最高ですね)
しかし聞いているうち、耳から離れなくなる強烈な中毒性があることに気が付くのに時間はかかりませんでした。
楽曲的には80-90'sUK/US POPの影響が色濃く、それに今風POPのエフェクトやサウンドアレンジを加えたという感じでしょうか。
このバンドを見出したThe 1975もそんな感じですが、何かこの辺のリバイバルが流行ってるんですかね?
特に好きなジャンルじゃないのであまり興味ありませんが。
(The 1975や似たような他のバンドも聞いてみたけど好きになれなかったです。)
だたこのPale Wavesだけは癖になりますね~。
やはりヴォーカルのHeatherの”声質”が大きいでしょうか。
瑞々しくて甘い歌声はライブでも同じなようでグッときます。
しかし今のところ「どの曲も似てる」と言われていて、実際その通りだと思います。
また、キャッチーですがオリジナリティが薄く、楽曲に”引力”が足りないとも感じます。
まぁしかしこれから音楽性は幅を増していくでしょう。期待してます。
One More Time
Heatherさんかわいすぎ
その③ In This Moment
2007年にメジャーデビューしたLA出身のメタル・バンド。
2018年時点で既にアルバムを6枚出してます。
恥ずかしながら自分が発見したのはつい最近です。(しばらくメタル聞いていなかったもので・・・)
興味を持ったきっかけはこのPVでした。
Whore
正直、最初聞いた時、歌ってるの男か女か判断つきませんでした。
それくらいパワフルかつ絶妙なヴォーカルの歌唱力に衝撃を受けました。
このバンドの最大の魅力は何と言ってもこのヴォーカル、Mariaの歌唱力とカリスマ性でしょう。
のびやかなメロディから鋭いスクリーム、艶やかさと泥くささが絶妙に絡み合った歌声は正に唯一無二でしょう。
特に”Burn”という曲のサビ、スクリームからメロディパートへの流れは、パワフルかつめちゃくちゃエモい。彼女の真骨頂だと思います。
バンドとしての音楽性は、大ざっぱに言うと
メタルコア/メロデス色が強かった〈初期〉
インダストリアル/NU METAL感が増してきた〈中期〉
南部ゴシック風味を出してきた〈最近〉
と言った感じでしょうか。
ぶっちゃけ楽曲に関してはそこまでハマってません。
なんでかって言うと、特にインダストリアル感が増してきた中期以降、アルバム『Blood』までは攻撃性が増した新機軸を楽しめるのですが、次作の『Black Widow』の頃になるとリフの単調さ、90~00'sヘヴィロックの焼き増しみたいで、飽き飽きしてきます。(勿論個人の感想)
とは言うものの2作目の『The Dream』はオススメですね。分かりやすくてキャッチー。
最近のMariaの食いちぎるような渋い歌い回しも良いですが、この頃の伸びやかでエモーショナルな歌唱はたまらなく美味しいです。
(まぁバンド自身『(The Dreamは)その当時音楽産業の中でやってくために作った』的なニュアンスを次作収録のボーナス・インタビューで答えていますが・・・)
Forever
(このPVも、セクシー悪女キャラ&演出を全面に出してる近年と違い、素朴な感じが逆にgood)
ちなみに『The Dream』の次作、よりダークさやアグレッシヴさを全面に出してきた3作目『A Star-Crossed Wasteland』も良盤です。
彼らはアルバムによって作風が違うので、ぜひ好みを探してみて下さい。
最後に、彼らの作詞・世界観について。
PVなど見ると官能的&挑発的なイメージが強い彼らですが、実は詞を読むとそれらは「罪」や「穢れ」、「偶像」「救済」といった非常に信仰的なテーマを逆説的に表現していることが分かります。
それではクリスチャン・バンドなのか?と言えば、彼ら自身からインタビューで否定してます。
しかし一方、
『でも俺らはHigher Powerを信じてるよ。ライブ前は毎回お祈りする』
とも言っており、
またVo.のMariaも
『私、超スピリチュアルだよ! お祈りもするし、瞑想もたくさんする。愛、神様、宇宙とエナジーを信じてる。完全なヒッピーだね。特定の宗教じゃないけれども。』
と別インタビューで答えてます。
その辺の思想や世界観を読み解きながら聴くと、より楽しみが広がりそうなバンドですね。
その④ The Hellsfreaks
2009年結成、ハンガリー・ブダペスト出身のサイコビリー/パンク・バンド。
ちなみにサイコビリー/ロカビリー界隈では、女性ボーカルってのはそんなに珍しくない。
歌も上手く、さらに男性Vo.に勝るとも劣らない渋く重い歌い回しが出来る歌手も少なくないですね。
とは言え、その中でもこのバンドのヴォーカル、Shakey Sueのチリチリした声は耳に引っ掛かります。
Boogie Man
”初期の”バンドのサウンドも、サーフビリーを基調としながらハードコアばりの勢いとスピード、ダークホラーなエッセンスが上手く融合してShakeyの声・雰囲気とバッチリ合ってます。かなりカッコイイ。
(まぁとは言え、こういった組み合わせはサイコビリーじゃ定番っちゃ定番.......というかサイコビリーってどれも大体そんな感じゲフンゲフン…...)
先に”初期の”という言い方をしたのは、実はこのバンド、2014年に一旦解散してるんです。Vo.のShakeyだけを残してメンバー総入れ替え。
翌年再結成してからは、これまでのサイコビリーの要素がほとんど消えてストレートなパンク・ロック・バンドとして生まれ変わってます。
まぁバンドとして生き残るため(もっと売れるため)って事情もあったんだろうと察しますが、しかしスタイルが変わった後もカッコイイ。
サイコビリー時代のスピード感・ダークなエッセンスはそのままに、よりエッジの効いたパンクサウンドはShakeyの表現の幅も広げて彼女の魅力をさらに上げています。
I'm Away
とは言え、サイコビリー時代の最後のアルバム『Circus of Shame』と比べると、音階や表現力がそこまで劇的に変化していない、
あと一辺倒なヴォーカルエフェクトが彼女の良さを半減させてるなぁとも感じます。
個人的にShakeyさんには、僕が女性パンク・シンガーの中で一番好きなBrody姉様に匹敵する逸材になるのではと期待しているので、
Brodyが率いてたThe Distillersのようにサウンドの幅を広げてって欲しいです。
(ちなみにThe Distillersの今のところ最後のアルバム『Coral Fang』はまごうことなき傑作。オススメ曲は"The Hunger"。)
なんて勝手言ってるところどうやら4枚目のアルバムが今年既に制作最終段階に入ってるらしいので、近いうち新譜が出るかもしれませんね。
次回作でさらに進化してること期待です。
以上、4バンド。おすすめおしまい。
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