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エレクトロニックミュージックのライブの構築についての考察 -①-

——もしもあなたがDJとして演奏するのでなければ、完璧な「製品の音源」をライブに持っていって、その場に集まった観客に大音量で聴かせることはおすすめしない。——

来る2022年1月29日と2月11日。神奈川県横須賀は猿島で1月22日より開催される芸術祭「Sense Island」でのライブパフォーマンスのオファーをいただいた。世情を考えて思うところはあるが、猿島は無人島であり、またパフォーマンスも野外、海辺の砂浜で行うとのことで、ありがたくこの機会をいただくことにした。

前回のライブは2019年4月に浜離宮庭園で開催されたRedBull Music Fes.。それから約三年ぶりのライブということになる。これを良い機会として、エレクトロニックミュージックにおけるライブの構築について現時点で私なりに考えていることを、次回のライブへの準備作業と並行して、思い出しがてら記しておこうと思う。

超合理的に考えれば「PCを持って行ってスタートボタンを押すだけ」で出来るエレクトロニックミュージックのライブではあるが、「会場にいる観客に確実に感動を与える」という仕事を全うするためには、様々な技術、経験、感性を駆使し現場で行わなければいけばないことがある。やはり“演奏”は必要なのだ。

先日リリースした4年ぶりのアルバム"Aru"の楽曲を組み込んだ最初のライブにもなるので、当日会場に足を運んでいただける方々には良い音楽体験をしていただけるように全力を尽くしたい。

-第1段階- ライブ音源の構築について(準備)

製品としての音源まで自分で作ることができてしまうエレクトニックミュージック。しかし、もしもあなたがDJとして演奏するのでなければ、完璧な「製品の音源」をライブに持っていって、その場に集まった観客に大音量で聴かせることはおすすめしない。

具体的には
・ほぼ全ての空間系(リバーブ、コーラズなど)のエフェクトを無くした音を用意する。
・ドラムとベースは キック・スネア・ハット・ベース と分け、独立した音源を用意する。

ライブ音源を用意するときに気をつけるべきはこの2点。
もちろん曲の表現によってはこの限りではないが、曲の中で音色作りの目的ではなく、音と音を馴染ませるためにかけているエフェクターは大体外しておいた方が良い。

エレクトロニックミュージック、またDTMによる音楽制作は、CDとしての音源として成立させる"ミックス作業"も自分で出来てしまう。
このミックス作業は 演奏→録音→ミックス と演奏の2段階先にある作業であり、リスニングとしての完成形を目指した作業になる。

ここがネックだ。考えて欲しい。ロックバンドのライブは"演奏"の段階。つまり録音とミックスは現場のPAによってその会場に向けて最適な音響に調整されて観客に届けられている。

つまりライブ会場という大音量と、瞬間の音の響きが感情に多いに作用する場では、CD用に作った音源は大抵の場合音が多すぎる。
現場の環境に合わせて最適なバランスを作れるようにしておくことが重要だ。ライブにおいてCD音源は正解ではない。

第一にドラムとベースが聞こえること、これを実現できないと観客に感動を与えるのは難しい。
そのためには現場の環境に合わせてドラムとベースのバランスを整えられる状況を作っておき、他の音数も少し減らしたりすることをお勧めする。

スピーカーの力を目一杯使い、より効率的に音の波を生み出すためには細かい、大音量では聴こえない、または意識しない音は無くて良い。

空間系エフェクトもこれに当たる。はっきりとした音をツイーターから出すために、高音の長い響きなどは必要ないのだ。なぜなら、ライブ会場が響くのだから。そこにリバーブがある。響く空間にリバーブがかかった音を出すと、余計に響いて結局ぼやけることになってしまう。

先ずはこの部分を意識しながらCDとは違うライブ音源を用意すること。

来る2022年1月29日と2月22日のライブは3年ぶりであるし、わざわざ足を運んでくださる皆様、そして素晴らしい芸術に囲まれ感性を刺激される場所で最高の体験が届けられるよう、全力を尽くしたい。

1月29日、2月11日
Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島
@猿島 (横須賀,日本)

公式ホームページ:https://senseisland.com

ライブパフォーマンス鑑賞用のチケットの購入が必要です。
詳しくはホームページをご覧ください。

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