マガジンのカバー画像

句集を読む

28
句集を読み、収録句の中から印象に残った句を何句かpick upさせて頂いています。
運営しているクリエイター

2023年1月の記事一覧

句集を読む:『北落師門』

『北落師門 Fomalhaut』 黛まどか 2022文學の森 著者の第5句集。全400句。タイトルの「北落師門」は南の魚座の首星フォーマルハウトのこと。秋の夜空に輝くただ一つの一等星で、孤高の星である。 [章立て] 知命2012年 巡礼2013年 サハラ2014年 白夜momoyo2015年 折々に2016年 四国遍路2017年 京師2018年 Paris2019年 ちちははに2020年 現し世2021年 還暦2022年 [好きな句10句] 空よりも水面にぎはふ揚花火 酒

句集を読む:『泥天使』

『泥天使』 照井翠(てるいみどり) 2021コールサック社 著者は昭和37年花巻市生まれ。 「暖響」「草笛」同人。 本書は著者の第6句集。全408句。 [章立て] Ⅰ 泥天使 Ⅱ 龍の髭 Ⅲ 雪沙漠 Ⅳ 巴里祭 Ⅴ 群青列車 Ⅵ 縄文ヴィーナス Ⅶ 蟬氷 Ⅷ 滅びの春 前作『龍宮』から8年、「震災詠」、「常の句」、さらに最終章にはコロナ禍を読んだ句を収録したとのこと。 戦災も震災も人ひとりにす この無季の句は普遍的な衝撃句。「戦災」は(句集の出版年から考えれば)ロシアに

句集を読む:『三日月湖』

『三日月湖』 永瀬十悟(ながせとおご) 2018コールサック社 著者は1953年須賀川市生まれ、本書は『橋朧―ふくしま記』に続く第2句集、全394句。 [章立て] 第一章 ひもろぎの村 第二章 三日月湖 第三章 更地の過去 第四章 ふくしまの四季 Ⅰ春告鳥 Ⅱ夏霞 Ⅲ秋珊瑚 Ⅳ冬青空 第五章 シャドウボクシング 第六章 沈む神殿 第七章 かなしみの星  まるで物語を読んでいるかのような句集。年代順ではない章立てで、各章ごとの小さい物語がさらに関連し合って大きい物語が作られ

句集を読む:『龍宮』

『龍宮』 照井翠(てるいみどり) 2021コールサック社(文庫新装版) 著者は昭和37年花巻市生まれ。 「暖響」「草笛」同人。 本書は2012年に角川書店から出版された著者の第5句集の文庫新装版。全202句。 [章立て] 泥の花 迷宮 流離 雪錆 真夜の雛 月虹 句集のあとがきによれば、震災当時、著者は転勤で釜石市内、釜石港から数分のところに住んでおり、「死は免れたが地獄を見た」とのこと。その状況下にあってその状況をこれだけ多くの十七音に残してくださったことにまず感服する