売ることを誰が教えたのか?-夢二
「東京災難画信」四、都新聞 大正12年9月17日掲載
夢二によるルポ:煙草を売る娘
やつと命が助かつて見れば、人間の欲には限りがない。どさくさの最中に、焼残つた煙草を売ってゐる商人の中には定価より安く売つたものもあれば、火事場をつけこんで、定価より二三割高く売つた商人もあつたと聞く。高く売る者は、この際少しでも多く現金を持たうとするのだし、安く売る者は、たゞの十銭でも現金に換て、食べるものを得なくてはならないのだ。三日の朝、私は不忍の池の端で、おそらく廿と入つてゐない「朝日