しつれん

CD

皆様はシチュエーションCDというものをご存知だろうか。

ちなみに私は今年のお友達へのお誕生日プレゼントはそれになりました。

私もそこまで詳しいわけではないが、その名の通りさまざまなシチュエーションをテーマにして、声優さんがこちらへ向けてドキドキなセリフを言ってくれちゃうオリジナルドラマCDである。(設定はモノによって違い、幼馴染だとか執事だとか三角関係だとか後輩とか上司とか様々)

そして今年の夏、誕生日を迎える友人とランチを楽しんだあと、共に気まぐれで入店したアニメイトのDVD・CDフロアでうっかりそのコーナーを見つけてしまったのである。最初から誕生日プレゼントをそれにするつもりもなく完全な偶然だったのだが、そのシチュエーションの多様さに友人と一緒に「ファーーーwww」と興奮気味に物色してしまった。橋の下で捨てられたエロ本の山を見つけた男子小学生のようなテンションだった。鬼畜彼氏、オフィスラブ、ご主人様とメイドなどストレートなものから変化球まであるタイトルのなか、私は友人にぴったりなものを見つけてしまったのである。

その名も「オジサマ専科vol13 Fierce Getaway~熾烈なる逃走~」。

CDジャケットは迷彩服をきた渋いおじ様たちが戦車に乗っているイラストだった。内容は、戦地の前線に放り出されテロ組織に狙われたジャーナリストである貴女を救出しにきてくれる兵士(オジサマ)たちとの戦地からの逃走劇…という、ミリタリー映画っぽい雰囲気のものであった。
友人は洋画好きであり(本人もなんか刑務所で囚人たちのリーダーとかやってそうな雰囲気がある。あくまで私の偏見です。ひどい風評被害である。)、CDに出演している声優さんたちも洋画の吹き替えでおなじみの方々であった。需要と供給が合致しているやないか。特攻野郎Aチーム夢小説である。

そして私はまだ理性を残していた友人の制止を振り切り、そのCDをつかんでレジへとカチコミ、ドヤ顔で誕生日プレゼントとして渡したのであった。

実は私自身、シチュエーションCDに出会ったのは今回が初めてではなかった。1枚だけ持っていたことがある。

その当時、私は某スタイリッシュ戦国アクションゲームのあるキャラにドハマリしていた。20数年生きてきた中で一番燃えた&萌えた。なんかあれだわ。女性ホルモンとかめちゃめちゃ出てたと思うもの、絶対肌ツヤよくなってたわあの時期。なんかもう単純な好きとかそういうの超えて自己投影とかいろいろあっての推しキャラだった。気持ち悪くてごめんね。
で、どハマリした結果、ゲームはそのキャラクターでリアルに何十週とプレイしたし、収録されているであろうセリフはほぼ聞き尽くしたと思う。

なんとかしておかわりが欲しい。

そう考えた私は、噂に聞いたことのあるシチュエーションCDのことを思い出したのだ。そのキャラを担当していたのは有名な声優さんだったので、なにかしらあるだろうとAmazonクルージングに旅立ったわけである。声優さんの名前で検索し、他の作品のドラマCDなどをかきわけかきわけたどり着いたのが…。

「愛あるオネエのお説教CD」である。

…?

どうしてこうなった。探し方が悪かったのか。当時見つかったその声優さんが参加しているシチュエーションCDはこれのみだった。

いや…オネエ…?しかもなにゆえ叱られねばならぬ?
内容は各声優さんのパートごとにそれぞれの「貴女=自分」がおり、ダメ男と別れられないだとか、ファッションに自信を持てないことだとかを男性声優さんの演じるオネエさまに厳しくも優しくお説教されるというものだった。

これは…萌えられるのか…?

未知な領域すぎてよくわからなかったが、とりあえずポチった。密林(Amazon)の奥地で見つけた貴重な食糧である。それぐらい飢えていた。

そして後日。私は届いたCDをコソコソと自室へ持ち込んだ。ノリは完全に初めてAVを買った男子高校生である。ときめきなのか緊張なのかよくわからないドキドキ感のなか、慎重にPCへCDをセットし、ヘッドホンをそっと耳につけた。速攻でお目当ての声優さんのパートを再生する。

「あらぁ~いらっしゃあい♪」

ホァアアアアアーーーーッ!!!
いやそこまで叫んではいないが心の中はそんなんだった。実際には「フッヘwwww」と一人で変な声を発していた。予想以上の全力の爽やかオネエとよくわからない恥ずかしさに思わずヘッドホンをベッドにぶん投げていた。

声優さん単位で好きだとかそういうのが今までなかったので、私の脳内にある情報は推しのキャラクター像だけなのである。脳内で推しがオネエ言葉でしゃべっちまってる。待て落ち着け。一度そのイメージを払え。Pixivで無防備に検索かけたときに推しが受けのBLががっつり表示されちゃったときのダメージよりキてるから。
ヘッドホンを外したまま呼吸を整えた。あくまであの声でこちらに語り掛けてくれることを全力で拾うんだ。改めてそう心構えをつくり、私はヘッドホンを装着しなおした。(いまこれ文章に起こすと本当にアホだな)

主人公が通うバーのバーテンダーのオネエさま…という設定らしい。主人公の声はないが、どうやら彼氏が相当なダメ男らしく、その男に対してオネエさまは怒ってくれて、でも貴女もそんなんじゃだめよ、と優しくアドバイスしてくれる。

ええやん。こんなんリアルに食らったら泣いちゃうわ…と話の内容に没頭しそうになる。なるのだが、ふとした一瞬一瞬に推しの喋り方に似たトーンが混じるタイミングがあり、いまいち集中できない。しかし推しではないのだ。次の瞬間にはオネエなのだ。なんかもう萌えてんだか萌えてないんだかよくわからず、体勢で表現するなら片膝立ち状態で聞いている気分だった。立ち上がりそうで立ち上がらないこの感じ…!

ただ、そのあとの二次元オネエキャラ定番の「ふと男口調でかっこいい一言いってくれちゃうシーン」には推しとか関係なしにうっかりときめいた。ズルイやんけ!そんなんズルイやんけ!と言いながらヘッドホンを再び放り投げていた。おかわりとは結局なんだったのか。

そんなわけで、私のシチュエーションCD体験は大変中途半端な状態で終わってしまっているのである。例の特攻野郎Aチーム的なCDは、物色しはじめてわりと早めに発見された&ほぼ即決でレジに走ったため、実はあの棚にあったほかのシチュエーションCDはあまりがっつりとは見ていないのだ。今度行く機会があったら、腰を据えて自分の好みドストライクのシチュエーションCDを探してみたいなあと思うグレーさんでした。なんの報告だこれ。