MASARU
グレーは ねんがんの シチュエーションCD をてにいれた !
すみません嘘です。細かく言うと入手はしてません。ツタヤで借りました。シチュエーションCDも置いてるんだねツタヤ…。
ツタヤ自体も大体2年ぶりだった。以前はDVDでの映画観賞も趣味だったはずなのだが、絵を描いてばかりになり、テレビの前でじっと画面を見ていることがなくなってしまったため、すっかり足が遠のいていた。
しかし、ここのところあまりにもアウトプットばかりでインプットをまるでしていなかった。脳みその中が枯渇しているのをひしひし感じ、久しぶりに映画でも見ようとツタヤを訪れたわけである。
ずっと見たかったデッドプールでも…、と思っていたところで、ふと出来心でふら~っとCDコーナーへ行ってみた。いや、正直なところ以前のシチュエーションCDの記事を書いたときに「意外とレンタルでもありますよ」とは聞いていたのでちょっとは期待していたが、言ってもど田舎の小さめツタヤである。そんなにあるわけが…。
山ほどあった。
ジャンルの表示カード「声優」の棚の、声優さんの歌のCD達の先にめちゃくちゃあった。マジでか。さすがにここまでは期待してなかったぞ。予想外の品ぞろえに、まさかと思いタイトルを確認していくと、あった。
『いっしょにお風呂 のんびり屋な彼MASARU(CV:三木眞一郎)』。
「あったーーー!!」という気持ちと「あっちゃったかぁ…!」という気持ち半々だった。声優さんに詳しくない人もいると思うが、あれだよポケモンのコジロウの声のひとだよ。
以前のシチュエーションCDの話ではぼかしていたが、例のスタイリッシュ戦国アクションゲームにおいて私の激推しのキャラを演じていた声優さんがこの方である。で、なんとか推しのボイスのおかわりを求めてシチュエーションCDを探してみたら、何故かオネェのやつしか見つからず、一応聴いてみたもののオネェ言葉に狼狽えてしまい萌えてるのか萌えてないのか訳がわからなくなりバグりかけた。という事件を以前のシチュエーションCDの記事で書いたと思う。で、あれを書いてから再び三木さんのシチュエーションCDを探してみたところ、新たに検索にヒットしたのがこの『いっしょにお風呂』シリーズであった。人気男性声優さんが演じる彼氏(キャラ設定もさまざま)と一緒にお風呂にはいりましょーという内容である。三木さんの出演している作品でVol.6とのことだったので、なかなか人気シリーズのようだ。
前回はオネェ様だった。だからちょっとバグりかけてしまったが、ちゃんと男口調のやつなら萌えるんじゃないか?とそわそわしていたのだが、なかなか購入にいたるまでのふんぎりがつかなかった。薄々「自分が萌えているのはキャラ単位なので、声優さんのボイスとはまた違うのでは」と感づいてもいたのである。それが決着してしまうのもまた寂しい気がして、安易にポチることができなかったのである。服の広告でモデルさんが着ていた服を買って着てみたら思ってたのと全然違うとか。手に入れてしまうことで失われる憧れはある。手に入れなければずっと憧れと希望を持てていることもあるのだ。それが幸せかどうかはわからないが。ヴィーナス像の両腕はないからこそ、真実の姿が完成されず、見る者それぞれのなかで理想の姿となりいつまでも美しい的なそういうあれである。(?)ごめん例えが下手だね。
しかし今、目の前にすぐさまレンタルして確かめられる術があるのならば、もうそこは好奇心に負けてしまう。逆にめちゃくちゃ癒されるかもしれないやん?私はそのCDを借りることを決意した。(ちなみにこのあと本来の目的であったデッドプールのDVDが見つからずシチュエーションCD持ったまま店内を30分近くうろうろする奴になっていた。なんという羞恥プレイ。あと一応女子向けスローセックスDVDも18禁アダルトコーナーのほうに置くべきだと思う。しれっとヨガとかストレッチのコーナーにあったけど)
そしてレンタルしたその日の夜。一緒にお風呂、という設定もあるので、臨場感をだすためにとにかくリラックスできる体制を整えた。部屋は暗くし、なんか風呂的な要素として蒸気でホッとアイマスクも装備。ついでにお布団にもはいる。そしてついにCDをPCにセットし、イヤフォンを装着した私は再生ボタンを押した。
ガチャッ
「ただいまぁー」
ホッフッWWWWWWW
鼓膜に直撃する爽やかなボイスに変な声がでた。オネェCDで訓練されたぶん初手の一撃は以前より恥ずかしくないがやっぱなんか照れる。しかし、前回より効果音含めて距離感や立体感がなんかすごい。CDケースの裏面にヘッドフォン推奨と書いてあったが、こういうことか…。
シチュエーションCDなので一方的に三木さんのボイスと効果音のみで話が進行されていく。どうやら三木さん演じるのんびり屋彼氏のMASARUくんが仕事を終えて帰宅すると、先に来ていた彼女(視聴者側=自分)が料理に失敗しちゃったところだったらしく、じゃあ一緒に夕飯を作ろうか、というところからスタートだった。
そこからか!!帰宅とメシからか!!もう俺の目は蒸気でホッカホカだよ!!いやでもそうだよね!いきなり風呂からは始まらないよね!!と一人でつっこむ。ごめんなさいねはりきっちゃって。
で、ごはんを作りながら「子供の頃はニンジンが苦手で、よく母親がこうやってみじん切りにしてハンバーグに…」だとか「一緒に料理するなんて久しぶりだね」とかそんな他愛のない会話が、三木さんの優しいボイスで展開していくわけである。彼女側のセリフはないが、どうやら料理を失敗しちゃったことを謝り、お詫びになにかしてあげるよ的なことを言ったと思われる。そこから、「それじゃあ一緒にお風呂にはいろう」…と続くわけである。
メインタイトルであるお風呂で二人で湯船につかっているシーンでも、立体音響が響いてあらやだ後ろから囁かれてるみたい!照れる!と臨場感はすごかったし、お互いの頭を洗いっこなど微笑ましかったのだが…。内容がすすみ、セリフや声色からキャラクターに厚みが増していく半面、どんどん萌えという感情が抜け落ちていくのを感じていた。
決してキャラに魅力がないのではない。三木さんの優しいボイスも大変癒される。
「会社でもお前いつもがんばってるんだからさ…もうちょっと甘えてもいいんだよ」
「この前の誕生日のサプライズ、あれ嬉しくて先輩に話してくれてたんだろ?聞いたんだー!俺もうれしかったよ、またがんばらないとだな!」
「明日はどこ行こうか?久しぶりにドライブでもって思ったんだけど…先週もそう言ってぐだぐだしちゃったじゃん…。近すぎず遠すぎずがいいんだけど…お、いいねー、アウトレット。俺もカバンみたかったしー」
同じ会社で出会い、お付き合いをして一年くらいのカップルの、ラッブラブってわけでもなく落ち着きすぎてもいない幸せそうな会話だった。だからこそ、リアルすぎて途中からついていけなくなった。
ああ、もうこんな幸せな会話、リアルではもう手が届かないんだろうなあ…と…白目をむいて痙攣していた。
いや実際にはさすがにそんな挙動はしていないが、顔は完全にチベットスナギツネみたいな虚無になり、なんだったらちょっと泣きそうだった。なにしてんだアラサー。(なお午前0時である)
ド甘いわけでもなく、とても等身大なカップルの会話がすごく心をえぐってきた。日常的すぎるがゆえに彼女側に憑依できていなかった。MASARUと同じ会社に勤めている、人に甘えるのが苦手な不器用だけどがんばり屋なOLになれていなかった。私はたった一人で暗い部屋でノートPCを前にして寝巻で白目むいてる独身(持病持ち)でしかないんだもの…!
いや何を言ってるんだ、まだがんばったら全然いけるでしょ、とか、もっと上の年齢で恋人いる人だっているとか言われそうだが違うのだ。努力すればとかそういうのじゃないのだ。5000兆円欲しいって言ってる奴は笑えるけど、50万円欲しいって言ってる奴にはなんか切実なもの感じるでしょ。あれだよ。(?)ごめんやっぱ例え下手だね。
まあともかく、シチュエーションCDに酔えなかった時点で私の負けだった。とりあえず最後までちゃんと聞きはしたが、完全に無関係なカップルの会話をめちゃくちゃ近くで聞いてる地縛霊みたいなノリになっていた。すべてが終わったあとに胸に去来したのは満足感より切なさのほうだった。
いや本当に脚本はいいのだ。特に印象に残っているセリフがある。もっと甘えていいんだよという話に続くものなのだが。
「せっかく二人でいるんだから、嬉しいこととか楽しいことを分かちあって…苦しいことや辛いことは支えあって…。そうじゃないと、二人でいる意味が欠けちゃう気がしてさ…。一緒にお風呂に入るのだってさ、子供じゃないんだから一人でもできるけど、せっかく二人でいるんだから、一緒にやってみればまた新しいものが見えてくるんじゃないかってね…」
細かな部分は違うがこんな感じの内容である。うん。すごくいいね。リアルで恋人に言われたらすごい嬉しいよね。うん。二人でいる意味。いいよね…。
でもな…MASARU…俺いま一人やねん…。
真っ暗な部屋で静かにPCを落とし、私は一人布団のなかでうずくまって寝た。どうしてこうなった。いやすべては酔えなかった自分が悪い。こんなん書いてますが、ド甘過ぎない日常の幸せを切り取ったようなシチュエーションがむしろ好きな方にはオススメです。イエス。イェアー。
助けてデッドプール。