ダイアログ・イン・ザ・ダークを体験して

目以外のなにかでものを見たことが ありますか?
ダイアログ・イン・ザ・ダークは、視覚障害者の案内により、完全に光を遮断した”純度100%の暗闇”の中で、視覚以外の様々な感覚やコミュニケーションを楽しむソーシャル・エンターテイメントです。
これまで世界47カ国以上で開催され、900万人を超える人々が体験。 日本でも各地でオリジナルイベントが開催されています。

ダイアログ・イン・ザ・ダーク公式HP(2023.07.22 09:41時点 https://did.dialogue.or.jp)

ダイアログ・イン・ザ・ダークってご存知ですか?
公式ページとそこに書いてあることを引用させていただきましたが、ダイアログ・イン・ザ・ダークでは完全な暗闇の中を視覚障害者の方に案内していただいて人生の一部を味わう体験ができます
竹芝の『対話の森』に行ってきたので、感想をメモしておこうと思います
僕は映画を観るときになるべく情報を入れずに行きたい人間なので、もしも貴方が同じようなタイプの方で、すでにご興味を持たれているならこの先は読まない方が良いと思われます
あと、書いてるうちに楽しくなって3000文字を超えてしまったので、気をつけて読んでください
短くまとめられず、申し訳ないです


会場に着くと全ての荷物をロッカーにしまう旨の案内を受けました
暗闇の中では触覚をフルに使う必要があるので、カバンを持っている場合ではないからみたいです
スマホも光るのでしまいましたし、財布も落としても暗闇の中では拾うのが大変なのでしまいました
個人的にスマホを一時的に手放すことって、とても好きなんですよね
映画館で機内モードにした時の、目の前のことしか楽しまないというスイッチの入れ方ってワクワクしませんか?
だから、僕はロッカーにスマホをしまって誰とも連絡を取れなくなった辺りから、もうかなり楽しみになっていました

視覚障害者の方から説明を受けて、1人1本白杖を持ちます
白杖とは、視覚障害者の方がよくお持ちになられている白と赤の杖で、地面を軽く叩くことで自分の進行方向に何があるのかを確認する杖です
時々、駅で白杖を持っている方を見ると、あの杖だけでこの世界に放り出されることに大して自分ならとてつもない不安を持つだろうなと思っていたのですが、実際に白杖を手にしてみると嘘みたいに心強かったです
軽くて丈夫な存在感で、目の前にある物を教えてくれるってすごいことです
小学生の時の下校途中、良い感じの棒を見つけたみたいな嬉しさが手の中にありました

白杖は利き手で鉛筆を持つような持ち方で持ちました
本当は利き手をなんとなく空けていたかったんですけど、意外と地面を小刻みに叩くって難しくて、慣れてないと利き手ではない手でうまく操作できないのと白杖から感覚を拾うのも利き手の方が信頼できたから利き手で持つことしました
これも新しい発見で、利き手の方が上手く使えるのは当たり前なんですけど、触覚としても利き手の方が優れている気がしたのは、自分が思っている以上に利き手は発達しているのか、自分の身体の部位対して信用度が違うのかのどちらかなんだと思います
不思議ですね
じゃあ、利き手ではない方は何をしているかというと手の甲を外に向けてソッと顔の少し前に置いておく役割を担ってました
これで顔にいきなり何かぶつかることを避けられるようになります
白杖は地面を叩いているので、木や人が高い位置からぶつかってきたらどうしようもないからですね
ボディがガラ空きだと思う方はいるでしょうけど、ボディはガラ空きでした
何かを守るためには何かを捨てないといけないということです

白杖の使い方を練習した後は、光の世界から離れていきます
いきなり真っ暗にするのではなくて、少しずつ光を落としていくのですが、ほんの少しでも光源がある時は意外と目って見えてるんですね
隣に人がいるのがずっと分かっていました
でも、完全に光を落とすと本当に何も見えなくなります
50cm離れているだけの人も本当にそこにいるか分からなくなってしまいました
人生って意外と完全な闇を経験することってないんだなと気がつきます
夜って暗いですけど、街には人工の光がありますし、月や星の光もあるから自分の手も見えないような黒を目にする機会ってほとんどありません
見えないって怖いですね
鋭利な刃物に囲まれているような感覚さえありました

ダイアログ・イン・ザ・ダークは暗闇を体験すると書いたのですが、実はこれって僕が体験前に思っていた概要なんですよね
重要なのはダイアログ、対話というワードでした
というか、それしか書いてないですし、行ったところも対話の森だったのに、ダイアログのことはすっかり忘れていました
ダークって響きが魅力的すぎるのが良くないかもしれません

暗闇の中で進むには対話が必要です
体験した時、同じ会場には8人の人がいました
子供から大人まで様々なカタチの人間です
意識は共有されていないので、ぶつからずに進むためには人と話す必要があります
人と話すって怖いですよね
特に知らない人と話すのはなるべく避けたいと思います
でも、ダイアログ・イン・ザ・ダークなのでどうしても話す必要があります
むしろ、肩を掴んで縦一列になって歩いたり、存在を確かめるために手を繋いだりする必要さえありました
これも対話なんでしょうね
僕は知らない人と身体が触れるのはあまり好きではないんですけど、この体験の中で触れるのはほとんど抵抗がなかったです
怖かったからだと思います
人に触れるというのは根源的な安心みたいなものがありました
そこにいるということを確かに確認できる
そして、触れている指から得られる情報量というものは凄まじいものでもありました
歩くスピードやその方向の安全性、部分的にはその人の感情も伝わってくるような気さえしました
アナログってすごいことかもしれません
こう書くとすごく人に触れ合わないといけないみたいな印象があるかもしれませんが、基本的には白杖を持って顔を守り、自分がどこにいるか何をしているかをなるべく大きめの声で周りに意思表示し続けるのがメインでした
自分の存在を口頭で示し続けるってすごくないですか?
黙っていては、自分はそこにいることを誰からも認識されない、見えない存在になるんです
インターネットみたいだなと思いました
インターネットが暗闇に似ているのかもしれませんけれど

具体的に中で何をしたかを全然書いてないのに、すごく長くなってしまいました
でも、それは体験していただく方自身で感じてもらった方がいいかもしれません
完全な暗闇の中で何をするかは実はかなり自由度が高くて、自分でほとんど選択できるような気がしました
人生の一部だから、そういうものなのかもしれません

まとめると、とても良い体験でした
なんて浅い感想なんでしょうね
ダイアログ・イン・ザ・ダークの後に歩く世界はやけに光って見えたので、正直それだけでも行く価値はあるなと思います
安全管理がわりとしっかりされているので、怪我するということはほとんどなかったですけど、あの暗闇が外に持ち出されたらどれほど歩くのが大変なのだろうかと考えるようになりました
この世界からとんがっているものがなくなれば良いのにとも思います
つまらなくはなるでしょうけど

人気コンテンツなので、夏休みで結構予約は取りにくくなるかもしれません
もしも行きたいと思われた方は事前予約必須なので、しっかり予約して行ってくださいね
あと、身分証明書を提示する必要があるので、インターネットネームで通すのは無理だと思いますから気をつけてください

では、また

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