黄道12星座ネプリ #こうどう を読みまくる(Team3)

こんばんは、拝田啓佑です。読みまくります。千原こはぎさん率いるTeam3。

二十二時君とベットでひつじ色のシャドウを互いの瞼にのせる/尾崎七遊

「二十二時」「ベット」「ひつじ色のシャドウ」の具体物が自然に混じり合う。互いの瞼にのせる、とあるから女性二人がいるのかな。それも含めて一首通してやわらかい印象がある。アイシャドウになにか凝縮されていて、おまじないの儀式のように感じる。

回すほどせつない中華のテーブルと天球儀、きみの冬の力点/たえなかすず

回すほどせつない。たしかに。何度回しても同じものがぐるぐる巡る。回る以外の点では似つかない「中華のテーブル」と「天球儀(星空)」が並べられて、言葉がカテゴリの壁を超えている。「きみ」はこれからも中華テーブルをぐるぐる回して、夜空のめぐる月日を重ねてゆく。

一卵をふたごに分かつ愛映りナレーションのみ聞こえる教室/小川窓子

受精卵の細胞分裂のシーンかなあ…。細胞分裂(成長)の原動力はDNAの記録とかじゃなくて愛。小中学生のときの性教育とか、理科のこういう場面って、普段はうるさいのに不思議と静まり返っていた記憶がある。恥ずかしさよりも高次の神秘的な気持ちで。休み時間になっても特に話題にはせず。あの静けさには詩情があるかもしれない。

ほしくずの海に右手をさし入れてあなたの熱を探していたい/渡良瀬モモ

心象風景の広がる歌。例えば光なら、色や強さ、瞬き方でいろんなキャラがあるけど、熱には温度という基準しかない。しかし作者は「あなたの熱」の個性を知っている。それをほしくずの海から探し出すのは途方もない作業で、でも主体にとっては、それを探しているのもひとつの幸せ。結局見つからなくても、ハッピーエンドかもしれない。

いまだけは猫として膝に横たわるあなたの深いたてがみを梳く/千原こはぎ

あ、僕この感覚なんていうか知ってます。

"""バブみが高い"""

おそらくは幾つかの星に住む吾が同時に揺らす小鍋の小豆/矢野和葉

Team1にも、地球の他にコンビニがある星があるだろう、という歌があった。この歌ではさらに視点がズームしていく。それぞれ違う星に住む何人もの"わたし"が、同じタイミングであずきを茹でる鍋を揺らす。全宇宙だと、確かめようがないから、こんなことは無い、とも言えない。宇宙からあずき一粒に向かう視点の流れの勢いがたのしい。

オリオンを見あげる君の口許に昇る吐息が星雲になる/久保 直輝

みんなオリオン座好きだなぁ。企画の時期が冬というのもある。これは冬の星座と、白い吐息が重なり、季節感のあるふしぎなポエジーが立ち上がる一首。オリオン座の小三つ星の位置には、大きい星雲があって、田舎の方にいけば肉眼でも見える。

夢を追いやがて遠くへゆく人と異国の星座を語りあう夜/大西ひとみ

外国だと、月の模様はうさぎじゃなくてカニだったり、虹の色の分け方は七色じゃくてもっと少なかったりする。同様に、土地と文化によって星座の見え方も違う。外国に行ってしまうけど、あなたはこんな夜空を見てるんだ、と知っておけば、夜は寂しくないかもしれない。

星という星をつなげて描いてみる空いっぱいの君の右手座/泳二

君の右手座、でかすぎる。星という星つなげちゃうから、星座の形も、右手には似つかない破茶滅茶なものになっている。でも右手座って言えば、それは強引に右手座になる。「どう見てもそれには見えないだろ」って星座はたくさんあるし。空を覆うほどの右手……天球の向こうにさらに大きい君本体がいる。

くろやぎは食べた事にしたお手紙を栞のように日記へはさむ/髙木一由

「くろやぎさんたらよまずにたべた」に新展開。くろやぎさん………。しろやぎさんからの手紙を食べるのもそもそも、感情の極まりからだったのかもしれない。

宇宙飛行士カレー食む夜の冬星座なつかしさばかり街に降りくる/辻聡之

見上げている夜空のどこかに、国際宇宙ステーションでカレーを食んでいる宇宙飛行士がいる。宇宙食って、飛び散ったりして船内が汚れないように、大抵のものはチューブに入っているらしいので、カレーは"はむ"もの。下の句もかっこいい。星座のすがたは一生同じ。昔から変わらない星座のすがたをみて、何かを思い出しているのかもしれない。

明日の夜アルデバランのラジオから君によく似た曲が届くよ/ナイス害

「明日の夜」?「アルデバランのラジオから」??「君によく似た」!!!「曲が届くよ」!!!!!
ファンタジーな世界が確立されていて、一句一句に引き込まれる歌。こんな風に口説かれたら落ちちゃうな。

Team4へ。

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