黄道12星座ネプリ #こうどう を読みまくる(Team2)

拝田啓佑です。読みまくります。かざなぎりん(杉谷麻衣)さん率いるTeam2。

鉄壁の鎧の隙間からのぞくウールマークが強そうである/ともえ夕夏

鉄壁の鎧を纏っていながら、中にはウールマークが付いているほどの質の良い服を着ている。真の強さは、外側の鎧よりもそういうところなのかもしれない。勝てなさそう。

牛乳にうっすら膜が張っていてダーリンずっと一緒にいよう/海老茶ちよ子

下の句が強烈。温めた牛乳に膜が張っていると嬉しい。すぐに破れてしまう膜だけど、そんなちいさいあたたかいまっしろいハッピーのある日々を、これからもあなたと過ごしたい。

一束の葱の葉辿れば二股の白き双子の兄へ落とす刃/安西大樹

結合双生児の話を思い出した。葱だから良いものの、むごさがある。慣れているだけで、こういった景色は日常にたくさん潜んでいる。

思い出はベテルギウスの灯りまだ光ってるから、光ってるから/満島せしん

さそり座のアンタレスもそうであるように、オリオン座のベテルギウスも赤く大きい星で、そろそろ寿命を迎えている。それを踏まえると、「まだ光ってるから」という言葉はとても切ない。ベテルギウスの爆発で、放射線の束が発されそれが地球に直撃して、文明に多大な影響をもたらす話もある。そういう側面をはらんでいるという点でも、星と思い出は重なるかもしれない。

この地球に土星のような環があれば消えない虹を眺めて暮らす/といじま

「地球(ほし)」「環(わ)」のルビ有。景色を想像して、わりと恐ろしい歌だと思った。どんな風に環が日常に入ってくるんだろう。消えない虹、こわい。仏壇の扉が開けっ放しで神様にずっと見られてるような。惑星の環は赤道上に出来るので、なるべく見えづらい南極か北極に移住したい。
P.S. 珈琲日和8の評まだ書いてなくてごめんなさい。

銀河風 押さえ続けた感情でひとつ宇宙を壊す日がくる/真咲ルナク

「壊す日がくる」と言い切っているのが怖い。(「怖い評モード」に入ってしまったかもしれない)
「銀河風」「宇宙」はそれぞれ何の喩なのだろう。いずれにせよ日常に隠れた心象世界の壮大なスケールを感じる。

心臓が片方にしかないんです天秤ばかりの右に置く花/多田なの

心臓が片方にしかない、という当然のことをそんな申し訳なさそうに…。みんな片側にしかないけど、みんな失敗作なのかもしれない。心臓の重さに対して、供えるように花を置く。花も一輪でひとつの生命ととらえれば、ひとの心臓とも釣り合うかもしれない。重さで言ったら、一輪じゃ足りないから、植木鉢ごとか、花束がほしいです。

毒薬であればと願う瞬間ののちに白さを放つフリスク/かざなぎりん

フリスクといえば人にあげるイメージがある。それとも自分で食べるのだろうか。なんにしろこれを食べる人に殺意を抱いている(殺意まではいかなくともそれなりの苦しみを与える毒、下剤とか)。そう思って取り出したフリスクの粒が、白い。いつもより白い。いつも通りだけど白く見える。ダークな心情とフリスクの対比がおもしろい。

繋いだ手そっと開けば生まれたての銀河は小さく産声上げる/かしくらゆう

繋いだ手を開くという言い方は僕にはさりげなく目新しかった。星ひとつではなく、その集合である銀河が産まれる。その各々の星に、途方もない時間の流れがあると考えると、ぼーっとしてしまう。

この冬は罪の季節となるでしょう身代わりがいるもしかして:山羊 /中村ユキ

結句のGoogleのサジェスト機能みたいな言い回しがおもしろい。やらかして捕まったとき、狐が化けてたように「じつはヤギでした〜!」なんてやるのかな。なんだヤギか。ならしょうがない。沖縄だと山羊肉はポピュラーだそうなので犯行は沖縄以北がいいでしょう。

月の君夜空の吾と気づくとき光強める闇濃くありたし/豊増美晴

君が夜空に輝く月で、わたしはその夜空。きみの光を強めさせるよりも、わたしがさらに濃い闇になれば良い。ネガティヴな感じにも思えるが、君にがんばらせずに、わたしが君を引き立てるよ、というような、大きな気持ちを感じる。

サバ界のメグ・ライアンがいま釣られオスの魚がみな泣いている/あひるだんさー

「サバ界」の「メグ・ライアン」(笑)釣る側にとってはただのサバ一匹だけど、魚にとってはメグ・ライアンだった。人間でいうと、たまたま知り合った人がその人のいる世界ではすごい人だったり。自分の知らない、いろいろな世界の存在は、このネプリの大きいテーマである星やら宇宙と重なる。

Team3へ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?