黄道12星座ネプリ #こうどう を読みまくる(Team1)

タイトルの企画に参加させてもらいました拝田啓佑です。4チーム読みまくります。僕のいた、御殿山みなみさん率いるTeam1から順に。

眠れない子の枕辺を照らすため羊のまなこに三日月はある/志稲祐子

羊の黒目はほんとに三日月みたいに細い。その黒さが夜になると月となって光を放つ。眠れないのに消灯の時間が過ぎてしまって真っ暗。暗いとよけい眠れないのに。羊の目が照らすあかるさで本を読んでるうちに夢の中へ。

流星にお願いをする人口が減ってるらしい 星が見えない/石勇斎朱吉

「星」って生活における希望のことかな。それともそんな陳腐な行いをするかわいい人が少なくなって、流れ星さんが怒って出てこなくなっちゃったのかな。どっちもか。負のスパイラル。

会議室じゅうにうごめく「確蟹」がちょんぎってゆく企画の未来/御殿山みなみ

「確蟹(タシカニ)」のルビ有。作者らしいカロリー控えめのレトリック(「言葉のあや」)がある。この蟹はたぶん、猫が壁をガリガリする、くらいのノリでチョキチョキしている。そんなたしかにたしかに、というやわらかい同調によって、企画がつまらないものになってしまう。画期的な企画の裏には争いやドラマがあったり。

ペルセウス 流星が僕に落ちてきて君が好きだと言いそうになる/湊屋

東直子の「来て」の歌を思い出した。どうしたらいいかわからないものがあふれて「好きだ」と言いそうになってしまう。一種のトランス状態を感じさせる。

小惑星B612を訪ねたい小麦畑で見上げてる夜/雨虎俊寬

B612は自撮りアプリ…ではなくて「星の王子さま」の王子の故郷。たぶん肉眼では見えない。一種の幻想郷のようなものかな。夜空を見上げて、王子の星を想う。ごめんなさい星の王子さま読んでないので読んできます。

星空よこの浩大のなかにまたコンビニをもつ星もあろうよ/西村曜

作者の歌心が一首の中でたのしく踊っている……。コンビニか……。具体としてはコンビニでじゅうぶん足りていて、コンビニという単語から、文明の進み具合や、訪れる人の生活、24時間営業というブラックな形態への批評性も見出せてしまう。

(過たずここを撃つべし)仰ぎ見る蠍座の心臓より哄笑が降る/山川創

「蠍座の心臓(アンタレス)」のルビ有。スケールの大きい詩情がある。さそり座のちょうど胸の位置を示して、巨星アンタレスは赤く光る。馬鹿にしてる、待ち構えているかのように哄笑が「降る」。ちなみに色の赤い星は星としてはそろそろ寿命で、じきに爆発する。(遠い未来の話)

オリオンが好きだ さみしいこの夜も独りじゃないと教えてくれる/臘月ちる

冬のオリオン座ってすごいよね。見上げたらいるよね。オリオン座といえば、三つ星、暗くて見えにくいけどその下にも小三つ星、があって、オリオン座自体に星がわいわいしてて楽しそう。

めえと啼く山に住んでいる者の本当の名を誰か教えて/知己 凛

本当の名……?ヤギではない…?手紙を読まずに食べちゃう、メェェエと啼く…おじさん…?「住んでいる」と書かれると、ヤギ一匹一匹の生活を考えてしまうので不思議。今日、カフェでおばさんみたいなおじさんを見ました。

ゆらゆらり氷湖に浮かぶ冬銀河見つる僕らも星座となりぬ/宮本背水

季節ごとに夜に見られる星は変わる。冬は明るい星が多い。実際には遠い星が、湖面に映れば僕らと同列。同じところにいる。

元始、人は魚であった うまれくる海の気泡を見つめつつ、ふと/小泉夜雨

これもある種のトランス状態を感じさせる一首。海にぽこぽこ浮かんでくる泡を見ている。そのまま海に引き込まれてしまいそう。そういう不思議な力を感じると、もともと僕らは海の生き物だったんじゃないか?と考えてしまう。

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