【完】黄道12星座ネプリ #こうどう を読みまくる(Team4)

こんばんは、拝田啓佑です。読みまくります。月丘ナイルさん率いるTeam4。(遅くなりました)

あかねさす七夕の空数光年離れた君へLINEを送る/若林芳樹

七夕の夜に、織姫-彦星間の距離を自分達に重ねている。心理的な距離か、それとも遠距離恋愛の喩でしょうか。ほんとに数光年離れてると、届くのも数光年後になっちゃいます。そんなこと考えてると、ただのLINEが宇宙との交信みたいに壮大なものにも思えてきます。

牛たちは今日も今日とて草を食む 変わらぬ日々を静かに生きる/悠佳里

僕なんて、人間の生活すら退屈で仕方ないのに、牛ときたら草食べてるだけですもんね。それを退屈と感じないのは、知能の違いによるものでしょうけど、そういう生物からみたら、世界ってどれだけ無機質に見えてるんだろう。

ふたご座で双子なんだと笑う時君より先に死にたいと思う/桜望子

下句の相聞的なフレーズが兄妹にかかると、不思議なうねりを感じます。双子は生まれた日が同じで、年の取り方も同じ。その均衡が破れるなら、せめて自分からであってほしい。相手への想いの深さがわかる優しい歌だと僕は思います。

白銀の雲どうどうと東よりマグに雪崩れて零時の湯気は/中村成志

「どうどうと」のオノマトペが効いていて、雲の壮大さが伝わります。一首の色味が白に統一してあり、深夜の不気味なまでの静けさを感じました。

夏の野に兵求め先駆けて散りてもなびけ我ら唐獅子/小早川

兵(つわもの)のルビ有。とっても威勢のいい歌ですね。動詞が多く、場面がパッパと変わります。それも歌に感じる躍動感に繋がっているようです。

スカートも伸ばした髪もみんな羽おとめは空をもって生まれる/月丘ナイル

羽じゃなくて、空を持って生まれるという発想に驚きます。各々の空を持ってそれぞれを好きに羽ばたく。可憐で爽やかな印象の歌です。

天秤棒ゆらゆら揺れる だらしなく君を許して帰る雪道/ユミ

「だらしなく君を許して帰る雪道」が好きです。雪道の、時間がゆっくり流れるふわふわした雰囲気も、心情にマッチしていると思います。

冬の夜の星の林に散りしきる星は白梅汝がゆめしらず/松城ゆき

「星は白梅」の言い切りがポエジー。「汝がゆめしらず」という結句にも痺れます。「林」という言葉に、星空がきらきらざわざわしている質感があります。たとえば「森」だと静かになりすぎてしまいますね。ところで筆名がかっこよくて好きです。

句点うつごとく柝の音の鳴りわたりいまひととせをつつむ天球儀/櫻井真理子

なんていうか一瞬、宇宙人が飛来して誘拐されるような感覚をおぼえました。柝の音っていうのがある種の呪文みたいだと思ったのですが、比喩ではないなこれは。
冬場の、「火の用心」(乾燥してますから)と町内を回る柝の音には、生活感と少しの懐かしさを感じますね。それを聞いて「あぁ、もうこんな季節か」とハッとする。結句でパノラマの夜空が広がります。

カシミヤを兎の毛だと言う友を山羊がはむはむ食んでいました/藍笹キミコ

ふわふわだったのでしょうか。ふわふわ=兎の発想が無邪気。友の気持ちもわかる。下句はカシミヤの衣類の擬人化かな…。毛皮とかファーとか動物由来の服は禍々しい雰囲気がしますね。お守りにもなりそうだけど。

冬空にあまた寒星「真理は人を自由にする」という語の響く/生沼義朗

冬の夜の、透き通った神聖な空気を感じました。三句に七音を導入したのも、台詞が「響いてる」感じがしてよいと思います。

回遊魚の宿命としてしなやかにあなたの前を通り過ぎたい/嶋田さくらこ

「回遊魚」というと、マグロとか、止まると死んでしまう魚を思い浮かべます。そうでないものが大多数らしいのですが、「宿命」とまであるので、そういう魚のことなのかなぁ。いずれにせよ、ずっと移動していなければいけない魚は、「あなた」の前で立ち止まることができない。だからせめて"しなやかに"通り過ぎたい。観客があなた一人のゲリラファッションショーみたいな。映画の一目惚れのシーンとかでよくありますよね、しなやかな通過。



勝手に始めた【黄道12星座ネプリ『こうどう』を読みまくる】は以上になります。お読みくださった皆さん、『こうどう』の皆さん、ありがとうございました。

拝田

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