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脊廣硏究

みなさん初めまして、私は趣味で昔の洋服の実物や型紙を集めているものです。

この分野の研究はすでに少なからず行われているものですが、「屋上屋を架するにあらざるを信じ」図々しくも私の寡聞を晒そうという試みで書き始めるものです。

さて、従来行われつつある洋服史については、
あるものは読み物としてのストーリーを重んじ、
あるものは印象論に終始し、
果たして史学・考古学的にどれほどの根拠があろうかと疑念を抱いておりました。

端的に言ってしまえば、それらを読んだからといって、
具体的に過去実際に当時の人間が着ていたものを再現し得ないという行き詰まりでありました。

しかるに昨今は当時の実物を用いた展覧会なども行われ、
ようやく技術そのものにスポットがあたりつつあり、
多分に世間の興味と智識の向上していることを感じます。
一方で日本における技術史については開拓の余地があるように思います。

本来であれば私のような素人の趣味人が云々すべき分野でもありませんが、
学生時分に恐れも知らず戦前の背広に関する同人誌を頒布し、
当時の浅知恵で徒に趣味人たちに錯綜をもたらした責任から
なお手を引くことも道義に悖ることと思い、
この際批難の海に身を投じる意を決した次第であります。

しかしながら生来の飽き性のためどこまで持久し得るかわかりません。
せいぜい息切れを起こすまでお付き合いいただければ幸いです。

令和6年 春

灰田かつれつ生
(冒頭図面は「洋装読本」昭和12年、木村慶市より「片前二釦背広」)


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