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Research method①定性的研究について 【エジンバラ 大学留学:後期】

今(2/26)はWeek6なのですが、課題で使うので復習も兼ねて今更Week1の授業でやった定性研究の手法をまとめようと思います(Week1では授業のアウトプットの方向性がいまいち定まっていなかったので、Noteにしていませんでした)


このレクチャーで扱うことは、以下の通りです。

・なぜ定性的研究をするのか?どのようなデータにアクセスできるのか?
・定性的研究の中心的な特徴は何か?
・どのようにしてこの種の研究を行うのか?方法論と方法論
・定性的研究の基礎分析
・定性的プロジェクトの評価
・定性的アプローチの強みと限界

この講義では、存在論的・認識論的な仮定が研究のあらゆる段階でどのように導き、形づくられているかも見ていきます。

・ なぜ定性的研究をするのか?どのようなデータにアクセスできるのか?

(1) どんなデータにアクセスできるのか?
数字ではなく、テキストや画像データを使う
→定性的研究は、参加者の意見や経験、視点を重視する傾向があります。

(2)どのような質問に答えられるか?
意味の形成と理解のプロセスに焦点を当てた質問に答えることができます。
研究の質問は、収集したデータに基づいて変化したり、変化したりすることがあります。

(3) この種の研究が定量研究と異なる点は何か?

実証主義者は人間の主観を尊重しないため、古典的な量的研究には、この種のデータは典型的には存在しません。(主観性と客観性の観点からの区別)

・定性的研究の中心的な特徴は何か?

‘The focus of qualitative research is on the participants’ perceptions and experiences and the way they make sense of their lives (Fraenkel & Wallen 1990, Locke et al. 1987, Merriam, 1988). The attempt is therefore to understand not one, but multiple realities (Lincoln and Guba 1985).’
(翻訳)
質的研究の焦点は、参加者の知覚や経験、そして彼らが自分の人生をどのように意味づけているかにある(Fraenkel & Wallen 1990, Locke et al. 1987, Merriam 1988)。したがって、一つの現実ではなく、複数の現実を理解しようとする試みである(Lincoln and Guba 1985)。

・定性的研究とは何か、なぜそれが重要なのか?

(1) 質的手法から知識を生み出すには?
・言葉をデータとして収集し、あらゆる方法で分析する
・結果ではなく、意味作りのプロセスに焦点を当てる
・予測や一般化するのではなく、全体的な文脈の理解を深めることを目的としている。

(2) なぜこれらの方法が教育研究に適しているのか?
・質的に焦点を当てたアプローチは、さまざまな種類の知識や学習方法についての考え方を教えてくれ、国際的な舞台での教育や学習についての議論の仕方を改善することができる。
・これにより、教育的言説の中で使われているカテゴリーに疑問を持ち、教え、学び、知ることには異なるアプローチがあることを理解することができます。
・主流の理解や視点では表現できないような人々の経験を探求することができます。
・深く文脈に焦点を当てているので、私たちは非常に深く研究の質問を探求することができます。(深い理解)

・定性的研究の核となる特徴とは?

(1) 人為的な要素のない環境(Natural Setting)
・研究は人工的なものでなく、、実験室ではなく、観察されたり研究されたりしているものは何であれ、通常通りに展開されることが許されている。
・研究者は、フィールドや参加者が問題や問題を体験した現場でデータを収集する傾向がある(Cresswell 2014)。
・研究者はいかなる変数も「コントロール」しない。
・対面でのやりとり、時間をかけて行うことが多い

(2) 参加者の意味
・質的研究者は、人々が構築してきた意味を理解することに興味を持っています。
・重要なのは、参加者の視点から興味のある現象を理解することである。
・参加者が作って理解するという意味(研究者ではない

(3) 全体的な責任(Holistic Account)
・研究者は、研究対象となっている問題や問題の複雑な図を作成する。
・これには、複数の視点を報告し、状況に関与する多くの要因を特定し、一般的には浮上してくる大局的な絵をスケッチすることが含まれる(Cresswell 2014)。

(4) 研究者の役割
・ 観察者を世界に位置づける(Denizen and Lincoln 2013)
・ 研究者はデータ収集と分析のための主な道具
・ 研究者は文書を調べ、行動を観察し、参加者にインタビューする。
・ 研究者の主観性は、研究者が収集したデータに個人的な資質を組み合わせたユニークな構成から生じる、独特の貢献をする研究者の基礎となるからである(Peshkin 1988:18)。

(5) 再帰性(Reflexivity) 
・学問の領域では「研究者自身と研究対象の再帰的な関係のこと」をいいます。
・人間の道具にはバイアスがあるため、これがあなたの研究にどのような影響を与えるかを理解しておく必要があります。
・質的研究では、質問者は研究における自分の役割や個人的な背景、文化、経験がどのように自分の解釈を形成する可能性を秘めているのかについて考えている(Cresswell 2014)。

(6) 創発的デザイン(Emergent Design)
→柔軟、臨機応変な研究デザインという理解。
・変化と柔軟性-初期の研究計画は厳密に規定されていません。
・収集したデータは、調査の実施方法を形作ることができます。
・例えば、質問の内容が変わったり、データ収集の形式が変わったり、調査対象の個人や訪問先が変更されたりすることがある(Cresswell 2014)。

(7) 複数のデータソース
・インタビュー、観察、文書、視聴覚情報
・豊富な記述データ

(8) 帰納的推論(Inductive reasoning)
・'研究者は、実証主義研究のように仮説を演繹的に検証するのではなく、概念や仮説、理論を構築するためにデータを収集する(Merriam and Tisdell 2016:17)'.
・質的研究者は、データをより抽象的な情報単位に整理することで、ボトムアップからパターン、カテゴリー、テーマを構築していく(Cresswell 2014)

・定性研究の方法論(Methodology):重要

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ここはこの授業の肝ですね。方法論と方法の違い、方法論の種類とその内容をきちんと説明できるようになることが目的です。

そもそもMethodologyとMethodの違いって曖昧ですよね。
こちらのブログによると、以下の通りです。

Methodology is the study of methods and deals with
the philosophical assumptions underlying the research
process, while a method is a specific technique for
data collection under those philosophical assumptions.

Methodologyは、Methodを研究することであり、研究の
プロセスの基礎をなす哲学的な仮定を扱う。
一方、Methodは、こうした哲学的仮定のもとにデータ収集を
行う特定の手法である。

日本語で調べると、以下の通りです。


方法論は、目的達成の妥当な方法を生み出す考え方や手順です。
方法は、ある固有の目的を成し遂げるために用いる手段です。

日本語の方が少しわかりやすいですよね。方法を生み出す方法が方法論ですね。なので、思考の順番としては、Pragium→Methodology→Methodとなるわけです。とはいえ、よくわからないので、具体的なMethodologyを見ていきましょう。ここでもまとめてくださっていたので、リンクを残します

代表的な方法論は、以下の5つです。

(1) Phenomenology(現象学)
体験そのものに焦点を当て、何かを体験することがどのように意識に変換されていくのかを考える。
現象学者の仕事は、経験の本質や基本的な構造を描写することであり、その本質を理解するために現象を分離する。
誰かがそれを経験することがどのようなものであるかを理解しています。
→これとナラティブの違いがよくわかりませんでした。ここに解説があるので気になる方は。要するに、いろいろな角度から見ることによって、AともなるしBとなる場合があることに注目する方法という理解です。例えば、川を挟んで向こう側が右方向であっても、逆側から見れば左になりますよね。

(2) Ethnography(エスノグラフィー)
社会学・人類学に根ざした歴史
人間社会と文化に焦点を当てる-特定のグループの人々の行動パターンを構成する信念、価値観、態度。

(3) ナラティブ
物語は、私たちの経験を理解する方法です。
自伝、ライフヒストリー、インタビュー、ジャーナル、手紙、その他の資料、およびテキストは、それが著者のためにそれが持っている意味のために分析されています。
→例えば、日本食が美味しいと感じた場合、なぜそれを美味しいと感じたのか。安い?好きな人と言ったから?子供の時の好物だから?親が作ってくれたから?など。

(4) ケーススタディ
ある特定のケースの詳細な記述と分析
ケースは境界線を持っている必要があります-例えば:いくつかの現象、プログラム、グループ、団体、機関、コミュニティや特定の政策のケース例である一人の人。
研究アプローチではなく、分析の単位で決まる

(1)PhenomenologyとCase studyの違いは何かということを友達を少し議論したのですが、僕の理解ではケーススタディは、あくまでも特定のケースを分析する目的の手法という理解です。(友達は、ある調査の時に”手段”として特定のケースを分析しているのだから、ケーススタディでは?と言っていましたが、あくまでも研究の目的で手段は決まってくると理解しています)

(5) Grounded theory
研究データを利用し、研究のはじめに理論(仮説)を描くのではなく、研究を通して収集したデータから理論を引き出します。帰納的アプローチという理解をしています。


・Methodsについて

(1) Observation
・何を観察すればいいのか?理論的枠組み、研究課題、研究質問に導かれて
・物理的な設定、参加者、活動と相互作用、会話、微妙な要因、自分自身の行動
・完全な参加者、観察者としての参加者、観察者としての参加者、完全な観察者

(2) インタビュー※
・高度に構造化されたもの、半構造化されたもの、非構造化されたものの3種類に分けられる

(3) Documents, Audio and visual materials

・書かれたもの、視覚的なもの、デジタル、物理的なもの

(4)Artefacts(人工的なもの)
・環境の中にある3次元の物理的な物や物で、参加者や環境にとって意味のあるコミュニケーションの形を表しているもの。
・物質文化-日常生活の道具、道具、道具、器具

※インタビューの種類

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・定性的研究におけるサンプルの考え方

・サンプルを小さくする
・便利なサンプル
・質的研究の背後にある考え方は、研究者が問題と研究質問を理解するのに最も役立つ参加者やサイト(または文書や視覚資料)を意図的に選択することである(Cresswell 2014)。

・データ収集、カテゴライズと分析(解釈)

(1) プロセス
様々なタイプのデータをすべて収集した後、'...研究者は、その後、すべてのデータを見直し、それに意味を持たせ、すべてのデータソースを横断するカテゴリーやテーマに整理する(Cresswell 2014)'。

データ分析とは、データの意味を理解するプロセスである。そして、データから意味を見いだすということは、人々が言ったこと、研究が見たこと、読んだことを統合し、縮小し、解釈することを含む-それは意味を生み出すプロセスである(Merriam and Tisdell 2016)。

(2) カテゴライズのStep

Step by step process:
・Category construction
・Sorting categories and data
・Naming categories
・How many categories?
・Getting more theoretical
(翻訳)
・カテゴリ構築
・カテゴリとデータのソート
・ネーミングカテゴリ
・カテゴリーの数は?
・より理論的になる

テーマ別分析

1. 収集したデータに精通する
2. コードを生成してデータを整理する
3. データをより大きなテーマにまとめる
4. テーマの見直しと精緻化
すべての関連データがコード化されていることを確認する
すべてのテーマが首尾一貫しており、明確であることを確認する
5. 研究成果の実証
引用符、説明文を使う

・定性研究の良い点

・人工的ではない、現実の世界で行われる
・参加者の視点を反映する
 ※それは「正しい」ということではなく、参加者の視点や理解を適切に表現すること。
・参加者の意味や意味形成のプロセスの理解の深さ、豊かさ
・ホリスティック、変数を受け入れる、文脈に焦点を当てる
・実務者に直接関連する

・定性研究の限界

・時間がかかり、手間がかかる
・リソース集約型
・非常に具体的で一般化が難しい
・多くのデータは、焦点を合わせるのが難しい場合があります。
・主観的(強みか限界か?)
・データは「正確に」解釈するのが難しい場合がある

・定性研究の評価方法(CTDCA)

Gabaの以下のクライテリア(評価基準)で評価をしていきます。
個人的に、「質的研究の評価基準に関する一考察 パ ラダイム 論からみた研究評価の視点」という文献がすごくわかりやすかったです。

Credibility-データの真実-参加者の見解を正しく理解しているか、研究者が提示した表現は正当であるか、適切であるか。要するに、自分が見つけたことが真実ということでなく、調査の結果を正しく(主観は入るけれどそれをなるべく取り除いて)理解して、記載しているかということですよね。
(方法)
・三角測量
・メンバーのチェック
・現場での長時間の作業
・ピアデブリーフィング

Transferability-結論を別の環境で、あるいは似たような文脈・状況・特性を持つ別のグループに適用できるか。(他の事象でも使えるか)
(方法)
分厚厚い記述
・文脈をしっかり書く
・読み手が、判断

Dependability-類似した条件でのデータの恒常性を意味する。同じような参加者と同じような条件で研究を再現した場合、研究の結果は同じようなものになるのでしょうか?
(方法)
・手順のすべてのステップを文書化する

Confirmability-結果は参加者が共有したものを反映しているか?それとも、研究者の信念が研究の妨げになっていないか?
(方法)
・研究者のバイアスを明確にする

Authenticity-研究者は、参加者の経験の感情や感情を忠実に表現しているか?


・レクチャーで参照した文献

・Merriam , S. B. and Tisdell, E. 2016. (4th Edition) Qualitative Research: A guide to design and implementation. San Francisco: Joey-Bass (available online through the library)
・Crotty, M. 1998. The Foundations of Social Science Research. London: SAGE Publications Ltd, 1998. (available online through the university library)
・Creswell, J. W., 2014. (4th ed.) Research Design: Qualitative, Quantitative and Mixed Methods Approaches. Thousand Oaks, CA: Sage.
Braun, V. and Clarke, V., 2006. Using thematic analysis in psychology. Qualitative Research in Psychology, 3 (2). pp. 77-101. ISSN 1478-0887

(補足)個人的にわかりやすかった文献

・本田勝久, 髙木亜希子. (2008). 研究デザインの方法:量的アプローチと質的アプローチ研究デザインの方法。
・久保田 賢一. (1997). 質的研究の評価基準に関する一考察 : パラダイム論からみた研究評価の視点.。









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