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ご覧のスポンサーの提供で【ワンフレーズレコメンド 1月29日分】

※この記事は企画「ワンフレーズレコメンド」の1月29日分のものです。

企画の詳細はこちらから↓

ともろさんによる前回の記事はこちらから↓

早いもので、ワンフレーズレコメンドも最終回です。どの記事も素晴らしく、とても楽しく読んでいました。
と、このままでは主題に入らずにまとめをして終了しかねないので、兎にも角にも筆を執ります。最後ということでプレッシャーパラダイスですがなんとか乗り切りたい。あわよくば綺麗に着地してくれと願いながら……。

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※この記事はあくまで妄想解釈であり、事実ではありませんゆえ鵜呑みにしないでください。また、断定したような文章が目立ちますが、そのつもりはないことをご理解願います。そういった表現の苦手な方はブラウザバックをおすすめします。

UNISON SQUARE GARDENというバンドは、聴く者をおしなべてエゴイズムの境地に連れて行ってくれる。彼らの音楽に向き合っている間、その世界に居るのは自分と彼らだけだ。

ところで、彼らの特徴であるこういったスタンスを、他でもない彼ら自身が逆手にとったフレーズがある。

今回レコメンドするのはUNISON SQUARE GARDEN「Micro Paradiso!」のユーモラスな一節。

この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りすると見せかけもう一度
Paradiso!!!

これは、テレビの常套句をもじっただけでは収まらない、彼らの確固たるスタイルが伺えるキラーフレーズなのだ。

Micro Paradiso!について

とりあえず、Micro Paradiso!という曲全体の雰囲気について軽く考えてみよう。

私はこの曲を「ユニゾンのライブそのもの」だと解釈している。

「yeahはいらない」や「hoもいらない」などといった歌詞は、煽りをしないスタンスを表しているだろうし、「雨宿って芽生えちゃう恋」は「雨宿り」=「屋内」=「ライブハウス」よって「ライブハウスで聴いた音楽が好きになっちゃう」と捉えることが出来るかもしれない。

とにかく楽しい、そんなライブの魅力を田淵流に詞に起こした産物こそがMicro Paradiso!。

ちなみにParadisoはパラダイスの意味。ちっちゃなパラダイス。まさにライブハウスでの公演である。

周りに人などおりませんので

繰り返しになるが、ユニゾンの音楽に触れているとき、世界人口は80億から一気に4人にまで減少する。メンバー3人と聴き手の自分だけで地球が回せるようになる。
この感覚は、音源を聴くときだけはなく、ライブでも如何なくまろび出てくれる。どれだけ周囲に人がいようが、目はその認識を許さない。

斯く言う私も、初めてライブというものに行くまでは半信半疑だった。音源ならともかくライブなんて人間だらけじゃん、と。基本的に社交性の無い私にとって、それはライブに行く際の懸念点の一つだった。まあ結局は、ユニゾンの音楽を浴びたいという思いが圧倒的勝利を遂げたため、覚悟を決めて行ったのだが。(ちなみに初生ライブはLIVE on the SEATでした)

で、実際行ってみるとどうだろう。それはもうしっかりと、聞いていた通りの感覚に襲われた。周りの人間なんて気にしている余裕もなかった。壇上で繰り広げられる事件を目の当たりにして。自分がそれを目撃する当事者になって。ずっと見ていたいと思わされて。「周囲」なんて概念は心の辞書から俄かに引っこ抜かれ、気づけば最高峰の主観空間が爆誕していた。

と、こんな風にユニゾンのライブには、周りを意識させない最強の魔力があるわけだ。

これを踏まえれば、今回のワンフレーズがいかにタブーで、いかに彼ららしいかが分かるようになってくる。

"ご覧の"スポンサー

では改めてフレーズを貼り付ける。

この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りすると見せかけもう一度
Paradiso!!!

既記を鑑みるに「この番組」はそのまま「このライブ」、あるいはもうちょっと広げて「この空間」と変換してみて良さそうだ。
では、「ご覧のスポンサー」とは誰か?

「スポンサー」という言葉自体の意味は、「事業などに出資する人」である。今回の状況に当てはめるなら、事業とはすなわちライブである。
また、「出資する」というのをもっと広義に捉えれば、「支える」に代替可能だ。

ライブを支える人。その解は少なくとも、ひとつに留まるものではない。

例えば、ライブハウスのスタッフ。この人がいなければそもそも公演は開催されない。
例えば、ユニゾンのスタッフ。ファンクラブのスタッフブログなんかを見るとよく分かるが、絶対にライブを成功させようという強い熱意で挑んでいるのが伺える。

そういった方たちが裏からライブを支え、成功を導く一員となっている。だが、「裏から」である。とても大切な人達であることは絶対不変の理なのだが、こちら側が彼らを見る──「ご覧」になることは出来ない。

つまりここで言うスポンサーというのは、私たちの目に見えている存在であると考えるべきである。

ライブの際、いつも視界に入っていて、ライブを支えている存在。

他でもない、私たち観客ではないだろうか。

チケット代を払って経済を循環させているという有形的サポートもそうだが、何より我々が巧まずして行っている「熱気の生成」は、ライブにおいて非常に重要な事項である。ユニゾンの曲を浴びる聴き手がいて、そこで迸る熱が、会場全体に幸せを充満させる。このことは、ライブの成功に一役も二役も買っているはずだ。

これで「ご覧のスポンサー」が示すものが「視界に映っているオーディエンス」だと解釈出来たわけだが、それではどこか不自然ではないだろうか?どことなく矛盾があるように思えないだろうか?

「ユニゾンと自分だけしかいない」はずの空間で、他の聴衆を示唆することを言うなんて、奇妙ではないだろうか?

Finish the live?

この矛盾に整合性を付与する鍵は、Micro Paradiso!がこれまでのライブでどう使われてきたかを見れば手に入る。

この曲が演奏されたのは2回。ひとつはBee side Sea sideツアー、もう一つはUNICITY LIVE ONLINEだ。

前者はバンド結成15周年の際に敢行されたツアーで、カップリング曲だけをやるという物好き特化なイベント。後者はファンクラブ会員限定の配信ライブで、こちらも物好きである。
では、それぞれのMicro Paradiso!の位置を見てみると……前者は18曲目、つまり(アンコールを除き)最後の曲で、後者もまたラストに配置されている。

そう、この曲は今まで、ライブの終わりでしか使われていないのだ。

こう考えれば、Micro Paradiso!という楽曲は、ライブの終わりを導く記号、という見方をしても問題ないはずだ。すなわり、ライブを終わらせる曲。

ライブ中、聴き手は他の聴き手なんて意識しないし、しようもない。ただただ、自分とバンドだけの世界にのめり込む。
しかしながら当然、その時間は永遠ではない。ライブは、終わる。ライブが終わることで、聴き手は現実の世界に帰っていく。大勢の人で溢れかえる現実へと。

つまり、「ご覧のスポンサー」というフレーズは、他者の存在をちらつかせることで「自分とバンドだけの世界」から元の世界に引き戻し、楽しいライブを終わらせるためのトリガーだったのだ。

See you next live!

「この番組はご覧のスポンサーの提供で」と言われた瞬間、それまで脳が排除していた「周囲」がカムバック。目の前には沢山の観客。ライブが終わったのだな、と直感的に理解する。

理解するはずだった。

お送りすると見せかけもう一度!

そう続いた言葉に驚きを隠せないまま、再び「周囲」が朧げになっていく。そして極めつけの咆哮!

Paradiso!!!

そのまま多幸感に満ちたラスサビに突入し、一段落をつけようとしていた心は再び引っ張り上げられる。4人の世界の最後を最高潮に盛り上げる。

数十秒後。「じゃあ各自適当に解散とします」という詞に再び他者の存在をほのめかされ、けどそれすら愛せるような気持ちのまま、音楽はかくして終わる。

この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りしました。

誠心誠意のユーモアで、我々を現実に戻しながら。

まとまらないまとめ

今回紹介したフレーズは、「ひとりの聴き手とバンドだけ」というユニゾン自身のスタンスを逆手に取り、他者を認識させることでライブの終わりを表現するという、なんとも巧妙な一節だった。
多彩なレトリックにそれを織り込んだMicro Paradiso!は、寂しさと心地よさを包摂した最強のナンバーであると言えよう。

今日もまた次のライブに向けて、期待感を募らせる。

あとがき

改めまして……この記事を持ちまして、文章リレー企画「ワンフレーズレコメンド」、無事終了いたしました!めちゃくちゃ良かったよ……開催して良かった……ヨカッタ……。

よくTwitterでフォロワーの方々がイラストリレー企画を行っているのを拝見し、素敵だな~自分もやってみたいな~といいねを押しながら思っていたのですが、悲しきかな、僕に画力はありません。いや本当に下手なんです。それも笑ってくれない感じの、「あっ……」っていう下手さなんです。絶妙な魑魅魍魎を生産してしまうんです。中学時代、美術の成績は死んでいました。

まあそんなこんなで、自分が参加するとしたら絵より文章の方が合ってるな、という思考に行き着きます。「じゃあワンフレーズだけっての面白くない?」という発想も連鎖的に生まれました。「いっそ自分で開催してしまえ!」に至るには諸問題有りで逡巡しておりましたが、結果的にやってみて良かったと心から思っております。

それでは、企画記事に参加してくださった10名の方々、そしてそれを読んでくださった方々、本当にありがとうございました!

一か月遅れではありますが、2022年も良ければよろしくお願いします。

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(企画終了に伴いまして、これまで参加者のブログのトップページのリンクを掲載していた記事を、バックナンバーとして一新致しました。良ければご覧ください……!)↓


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