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出羽三山に関するお話

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出羽三山に関する話をまとめました。常設展・企画展の研究内容や様々な談話を掲載します。不定期掲載。
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#出羽三山

羽黒山から月山への道にはいくつもの掛け小屋が建っていたという話①~野口-海道坂~

 現在、いでは文化記念館の2階では出羽三山の古写真の展示を行っています。羽黒山の登山口から月山へ続く道にはいくつもの掛け小屋(月山登山者への食事や休憩・宿泊のための臨時の小屋)が建っていました。そのような風景をおさめた、昭和初期の出羽三山の写真が展示されています。 羽黒山から月山への道  地元では「木立三里」「草原三里」「石原三里」と呼ばれた月山への道。羽黒山の登山口から月山へ続く道には、各所に呼び名があります。場所によっては末社もあり、昔の絵図には末社の名称が描かれてい

於竹大日堂にあったガラ紡は珍しい紡績機であるというお話

 いでは文化記念館に展示のガラ紡。2017年以来展示しているもので、来館された方は目にしたことのある人も多いでしょう。さて、この「ガラ紡」とは一体何でしょうか。今回はそのガラ紡について、天野武弘氏(注1)の調査と考察を参考に紹介します。 ガラ紡発見の経緯  天野武弘(あまのたけひろ)氏は2015年12月に荘内日報の記者から発見の一報があり、2016年2月に正善院の於竹大日堂(おたけだいにちどう)で発見のガラ紡績機を調査したとのことです。  調査の結果、これまで知られている

【2月13日は日本遺産の日】自然と信仰が息づく『生まれかわりの旅』

はじめに  羽黒山・月山・湯殿山の3山で構成される出羽三山。この出羽三山における山の自然、そして信仰が、2016年に日本遺産『生まれかわりの旅』としてに登録されました。また、昨年2022年には日本遺産の他のモデルとして重点支援地域にも選定されました。この日本遺産は山形県・鶴岡市・西川町・庄内町で構成されています。  2月13日は2(にほん)・13(いさん)で日本遺産の日です。日本遺産『自然と信仰が息づく「生まれかわりの旅」~樹齢300年を超える杉並木につつまれた2,446

芭蕉の弟子・図司呂丸についてのお話【後編】

 前回は図司呂丸(ずしろがん)の生涯についてを投稿しました。図司呂丸は羽黒山で染物屋を営み、『おくのほそ道』の旅で立ち寄った芭蕉に弟子入りし、若くしてその生涯を終え、惜しまれました。  それでは、彼の生い立ちや正体はどうだったのでしょうか。前回よりも呂丸についてより探究していきたいと思います。  この記事は、戸川安章『羽黒の俳人・圖司呂丸』,國語国文, 1952, 21(9), p24-36を参考にしています。 呂丸は山伏ではない  羽黒山伏は、山伏そのものの宗教的役割

芭蕉の弟子・図司呂丸についてのお話【前編】

 今回は「図司呂丸」(ずしろがん)という人物とその生涯についてのお話です。 松尾芭蕉の弟子といえば?  松尾芭蕉の弟子と聞けば、おそらく有名なのは『奥の細道』に随行した曾良(そら)のことを思い浮かべる方が多いかもしれません。松尾芭蕉は、俳諧師として俳聖と呼ばれるほどのカリスマだったこともあり、弟子はたくさんいます。  例えば、「蕉門十哲」(しょうもんじってつ)。古代中国に成立した儒教の祖とも言われる孔子の10人の弟子を「孔門十哲」と呼ぶことになぞらえて、芭蕉の特に優れた1