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出羽三山に関するお話

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出羽三山に関する話をまとめました。常設展・企画展の研究内容や様々な談話を掲載します。不定期掲載。
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2022年9月の記事一覧

芭蕉の弟子・図司呂丸についてのお話【後編】

 前回は図司呂丸(ずしろがん)の生涯についてを投稿しました。図司呂丸は羽黒山で染物屋を営み、『おくのほそ道』の旅で立ち寄った芭蕉に弟子入りし、若くしてその生涯を終え、惜しまれました。  それでは、彼の生い立ちや正体はどうだったのでしょうか。前回よりも呂丸についてより探究していきたいと思います。  この記事は、戸川安章『羽黒の俳人・圖司呂丸』,國語国文, 1952, 21(9), p24-36を参考にしています。 呂丸は山伏ではない  羽黒山伏は、山伏そのものの宗教的役割

芭蕉の弟子・図司呂丸についてのお話【前編】

 今回は「図司呂丸」(ずしろがん)という人物とその生涯についてのお話です。 松尾芭蕉の弟子といえば?  松尾芭蕉の弟子と聞けば、おそらく有名なのは『奥の細道』に随行した曾良(そら)のことを思い浮かべる方が多いかもしれません。松尾芭蕉は、俳諧師として俳聖と呼ばれるほどのカリスマだったこともあり、弟子はたくさんいます。  例えば、「蕉門十哲」(しょうもんじってつ)。古代中国に成立した儒教の祖とも言われる孔子の10人の弟子を「孔門十哲」と呼ぶことになぞらえて、芭蕉の特に優れた1